category: 白き剣  1/5

白き剣(終話)

終話 女の貌 「して、その葛なる女の処遇はどのように?」 「落飾して仏門に。小石川にございます深宝寺、それに壷郷の屋敷の両方を用いて幸薄き娘らを見守るということで命ばかりはと」 「そうか、うむ、それでよかろう。江戸にそのような場があるならこれ幸いというもの。ご苦労であったな美神」  落飾とは、女人がその黒髪を切り、あるいは剃り、俗世を離れて色を断つということである。  江戸城からもそう遠くない番町の片...

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白き剣(二二話)

二二話 死の匂い 壷郷の屋敷は決して大きなものではなかったが、武士の住まいとしての格式だけは備えていた。造られてからのほどよい歳月が木を枯れさせ、落ち着きに満ちているのだが、これほどの惨劇の後。邸内には血の匂いが濃く漂う。  宗志郎も紅羽も黒羽も全身に返り血を浴びていて、さらに寺の側には十人の死骸。そちらは寺の側から放り込めばいいとして、壷郷の屋敷の側からは四人の死骸。家の中を引きずらないと地下へ...

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白き剣(二一話)

二一話 生ける妖怪  深宝寺の内廊下に隠された階段から地下へと降り、人一人が通れるほどの洞(ほら)のごとき穴ぐらを行くと、洞はひろがり、そこは四方を角石で組んだ地下の牢獄。その一方の石壁に×字(ばつじ)に組んだ白木の磔台が二脚据えられ、ふっくらふくらむ乳も美しい女が二人、両手両足を縛られて体を開かれ、磔にされている。  女たちは一糸まとわぬ素裸。その割り開かれた体の中心に、真下から丸い棒が突き立てら...

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白き剣(二十話)

二十話 修羅場なり 艶辰のある本所深川から永代橋を渡って、八丁堀、日本橋、内神田、小川町と、お栗はどんどん小石川に近づいていく。お栗は十五と若く、八王子の山の暮らしで脚がよく小走りで通せるのだが、さしもの宗志郎もこれほどの距離は厳しい。何かを嗅ぎつけて犬が駆け、人がそれを追うようなもの。お栗は時折脚を止め目を閉じて両手をひろげ闇を吸うような仕草をする。邪視を使うとき、それは業火のようなものであり、...

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白き剣(十九話)

十九話 お栗の眸  品川が冬の夜陰にくるまれる刻限。船問屋の船冨士に並はずれた耳を持つ鷺羽が潜み、天礼寺には戦いに長けた鷹羽と鶴羽が潜んでいた。  そしてちょうどその頃、艶辰の厨にはお光とお栗、そして今宵は紅羽が立って夕餉の支度が進んでいた。しかしお光はしきりにお栗を気にしている。どこか様子がおかしい。落ち込んでいるとかそういうことではなくて、時折ぼーっとすることがある。それはいまにはじまったことで...

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