快感小説

ロボコップ・ダーリン

 女はみんな、ロボコップが好きなのよ。
 強いでしょう。殴られても「ヘ」でもない。
 これこそ正義と信じたら、
 信じられない無茶もやらかす。
 女の私じゃ、とても勝てないヤツだもん。

 ロボコップに抱かれたら、
 きっと、私はヨレヨレだわよ。
 ロボットだからペニスが萎えない。
 あんたなんか、みこすりイッちゃう。
 燃えた私を、どうしてくれるん。

 女はね、ロボコップが好きだけど、
 強いから愛せるわけじゃない。
 タフな勃起だけじゃダメ。
 あれほど強い彼なのに壊れちゃう。
 バッテリー切れでも裸身停電。

 そんなとき女は彼がいとしくなるの。
 抱いてあげるね。直してあげるね。
 いま電源つないでやるからさって、
 弱くなったロボコップを愛してしまう。

 強いから好きになり、弱いから愛せるの。
 酒に強くて頭の弱いあんたじゃムリよ。

樹の妻

 あのとき 私 迷い込んでここにきた

 私が消えた 消息不明

 二月すぎて戻ったときに神かくしとさわがれた

 その森めがけて友だちつれて歩いてる

 玲子です 大学の天文クラブで出会った子

 ケキョケキョケキョ 小鳥たちのハミング重奏

 初夏の緑が萌えていて精液臭ほど青くさい

 空スコーン お陽様キラキラ 風そよぐ

 おとぎの国にいるような美しい森なのです

 けれどもね 私のなかに暗い心が揺らいでた




「わぁ凄い、綺麗ねー!」
「でしょでしょー! 穴場よねー、そう険しくもない山なのに、ほん
と人が少ないのー。会社の山好きアニキに聞いたんだー」
「サイコー! こんな山、はじめてよ」

 山といっても登山用具のいるような場所でない。なのに誰も近づか
ない。神隠しの山という別名があるぐらい、なぜか迷ってしまう山。
だけど私は二度目です。あれほど鮮烈な記憶があれば、忘れたくても
忘れられないコースです。
 私の場合、山は宇宙よ。あちこちの天文台を訪ね歩いて、ここだっ
て・・いえ、それは言いません、場所がわかってしまうから。


 シャラララ・・涼しげな沢流れ。

「少し休も、おなか空いた」
「うん! 綺麗なお水・・・ガラスが流れてるみたいよね」
「飲んでごらん、美味しいよ、山清水だから冷たいの」
  二人ともジーンズ、ジャケット、スニーカー。小さなザックを背
負ってる。でも装備はその程度。玲子は、水晶みたいな六角岩の間を
降りて沢石をまたぎ、お水をすくって飲んでいた。
「うめえー! ほんと冷たいー!」
「でしょー。ペットボトルの名水なんてメじゃないわ」
 それでお昼をパクついて、それからまた歩きだす。

 だけどあの子は不安がる・・。
「ねえ大丈夫? どんどん深くなってくよ?」
「まかしときって。前にも来てるからへっちゃらよっ」

 斜面を縫うアップダウンのある道は、鹿道と言われて、つまりは獣
たちの専用道路。この山には熊はいないはずだから女の子でも安心で
きる。
 けれど・・あるところを境に森の様相が変わってしまう。原生の健
康な森だったものが、空や風や取り巻くものをそのままに、人が手を
加えたように植生が切り替わってしまうのです。
「ねえ・・何かおかしくない? 見たこともない樹ばかりになっちゃ
った」

 それらの樹には生い茂る枝葉はなく、濃い緑色をした幹が生えてい
て、そこから、ちょうどイソギンチャクの触手のような何本かの枝に
分かれ・・その枝が綺麗なピンク色をして、まさにイソギンチャクそ
のままで、枝に葉がないのです。
 そして樹の幹が、蛇そっくりの細かなウロコにつつまれていて、緑、
青、金色、銀色・・光を跳ねて色を変え、煌めいてる。

「ねえマリ、ヤだよ、あたし怖い」
「大丈夫よー、この樹のせいでここには人がいないんだから。よく見
てごらん、綺麗でしょう」
「う、うん・・綺麗なのは綺麗だけど気味悪い」
「ほら、あそこにひときわ立派な樹があるでしょ」
「あるね。まるで主みたいな」
「そうそう、あの樹の前に立ってごらん、触れると幸せになれる樹な
のよね、やさしいんだから・・ふふふ」

 怖がる玲子の背を押して樹の前に立たせます。
 そして、あの子がおそるおそる幹に触れた、そのとたん・・。

「きゃぁぁーっ! 何よコレーっ! マリぃ! マリぃ! 助けてぇ
ーっ!」
「さよなら玲子。主様に約束したのよ、別な誰かを連れて来るって。
うふふ、楽しんで幸せにね」
「嫌ぁぁーっ! ウソよーっ! 嫌ぁぁーっ!」

 私は樹々を見渡します。
「私の主様、それからみんなもいずれまた。ふふふ・・あはははっ!」

 私はマリ。二十七つ。いまはまだ独身です。彼がいます。
 結婚するって思っていたし彼だってプロポーズしてくれた。抱かれ
ててスキンをなくせる日を望む。もちろん玲子にだって紹介したし、
仲間たちで遊んでいました。
 その彼に・・大切なあの人に玲子は近づきすぎたのです。
 もう一人、由美がいる。山に興味のないあの子をどうやって連れて
くるか・・流星群・・流れ星でも餌にしようか。


 あのとき私は・・半年ほど前のことでした。

 天文台からの帰り、表のルートがつまらなく、男の子と三人で手つ
かずの山の中を歩いてた。険しい山ではなかったけれど山を甘く見て
いたの。霧が出た。一寸先が見えなくなって私だけがはぐれてしまっ
た。トイレで離れただけのなのに霧は白い闇となる。彼らも探してく
れたけど、あらぬ方へと彷徨って迷ってしまった。

 樹々よりも猖獗する下草です。背丈ほどもある下草がはびこって、
泳ぐように歩いていると、ここに出た。
 山の中でそこだけが脱毛したよう草がない。林床がなめらかで、
なぜかちょっと温かかった。
 霧をしのいだ。そして霧が晴れたとき、見たこともない不思議な樹
が目の前にあったのよ。

「ヘンな樹ね」
 その頃はまだ主様を中心に何本かの小さな樹群れがあるだけだった。
 私は樹に近寄って、蛇のようにキラキラと色を変えて煌めくウロコ
の肌を撫でてみた。
 そうしたら・・。

 イソギンチャクの触手のようなピンクの枝が樹の手となって、一斉
に蠢きだして私を絡めとっていく。幾重にも巻きついて太い縄で抱か
れるみたいに身動きできない。そのうち触手の先が五本に分かれて、
手先のようにカタチを変えて・・樹はそれまでの歴史の中で人間を見
ていたからね、人のカタチを真似ることを覚えていたのよ。
 触手は子供の腕ぐらいでひとつかみできたけど。それがにょきにょ
き伸び出して無数の腕に絡みとられてしまったの。
 指のカタチに変化したいくつもの手に嬲られた。着ているものをむ
しり取られて素っ裸にされていく。

 断末魔・・あのときの悲劇的な自分の声を覚えてる。
 恐怖で失禁、泣き叫んでもがいていたわ。

 樹の手に私は蹂躙された。乳房を揉まれ、お尻をつかまれ、恐ろし
い力で体を開かれて前から後ろから性穴嬲り・・そしたら緑色の太い
幹から別の触手が伸び出して、先が二股に分かれていって・・女体の
デザインに合わせるように大小二本のペニスとなって、アソコとアナ
ルを一気に犯され、そうされながら乳房を揉まれ、乳首をコネられ、
体中もみくちゃで・・それはセックス束縛・・。
 ピンクの触手は粘液を分泌して・・催淫・・媚薬・・そんなものを
体中に塗りたくられて。

 地獄のようなアクメが続いた。イッてもイッてもイキ続けた。
 人の女が樹に抱かれた。樹にレイプされたのです。
 私は裸よ、すっぽん全裸。服が散乱していても、触手のひとつが首
輪となって私をつないで放してくれない。
 山の夜は冷えるでしょう。だけどそれも、寒さに丸まってると主様
の抱擁が幾重にも絡みつき、それがとっても温かく、私をぐっすり寝
かせてくれたわ。

 食べなければおなかが空くわね。それだって主様が、幹からペニス
を生やしてくださり、別の手に髪をつかまれて、しゃぶれとおっしゃ
る。
 それでご奉仕すると・・トロロ・・ピュピュピューッ。
 甘い射精をくださるの。ハチミツそっくりなドロリとした液体です。
美味しい! それがとっても甘くて美味しくおなかがいっぱい。体の
調子もすこぶるよくて・・豊かな栄養だったのですね。

 そして私は・・三日に一度、大きなドングリみたいな種を産んだ。
樹に犯され孕んだ女が、樹の赤ちゃんを産んだのです。子宮がもぞも
ぞしはじめて、種はするりと膣を抜けて産まれ出た。
 主様のお手が伸びて地面を指差し、埋めろとおっしゃる。
 土に埋めてほんのしばらく、ベイビーピンクの触手が伸び出し、新
しい樹に育ってく。

 三日にひとつ。私が神隠しにあっていたのは二月だから二十かそこ
ら・・次々産んでは植えていき、そこからまた樹が育つ。
 私が迷い込んだとき、ほんの数本だった不思議な樹は、いまはもう
三十本ほどに増えている。主様との子供たち。
 主様は私を殺す気なんてありません。生殖のための妻なのですから。

 おやさしく、美味しい精液をたくさんくださる主様でしたが、私は
泣いてお願いしました。結婚したい人がいた。別な女をかならず連れ
て来ますからって。
 主様は樹なのですが、その知性は素晴らしく、わずか数日で私の言
葉を理解され、さらに数日でお体に声をお持ちになったのです。

 悪魔の響き・・ドス低いお声です。

「人間・・連れてくる・・約束するか」
「はい、お誓いいたします、ご主人様」
「おまえの中には私の精が植えてある・・約束を違えればおまえの中
で暴れだし、おまえを樹に変えるだろう」
「お誓いします、かならず連れて来ますから。主様のことも誓って誰
にも話しません。どうか私を許してください、たくさんの子供を産ん
だ妻なのですよ、どうか信じてくださいませ」

 そのときでした・・裸で立ってる私の膣から、にょろりとピンク色
した触手が・・それはまるで背伸びしすぎたクリトリスのように膣か
ら伸び出し、蠢いてる。

「樹にされるのは嫌。きっとお誓いいたします。あぁん主様、私の旦
那様・・生涯おそばにお仕えします」
「ふふふ・・可愛い女よ・・ならば行け。おまえの中に私がいること、
忘れてはいけない。多くの女・・男でもよいが・・人間を連れて来い。
ふっふっふ・・やがて我らはこの星を・・だが、おまえだけは殺さな
い・・妻だから」
「はい、お慕いします、ご主人様」
 素っ裸で樹にすがり、何本もの触手に抱きくるまれて・・そして私
は山を降りてきたのです。

 もう一人、とにかく由美を連れて行く。子供の頃から知ってる子。
親友でしたが、口惜しいけれど由美はとても美人です。鼻にかけてる。
見下してるわ。許せないのよ、なんとなく。
 そうです、ただなんとなく目障りなんです。


「おい見てみろ・・女みたいな樹があるぜ」
「わおっ、セクシー! あははは!」
「ヤだ・・でも、ほんとに女から枝が生えてる感じよね。彫刻の森み
たい」
 男の子が二人、私と由美。グループで向かいます。男の子には気の
毒ですがしかたがなかった。由美は私を警戒していて一人ではついて
こない。

 そこにはウロコを着せたヌードアート。樹にされた玲子がいたので
す。玲子もたくさん産んだようね。私が産んだ子供らと一緒になって、
大きな森をつくりはじめていたんです。

「うわぁぁーっ! バケモノーっ!」

「何だ、これはーっ!」

「きゃぁぁーっ! 助けてマリぃーっ!」

 ふんっ・・悲鳴に背を向けて真っ青な空を見ていた。
 さよなら由美。樹にされても美人でしょうけど、その前にたくさん
種を産んであげてね。くくく・・あはははっ!

 男二人は私にとってどうでもいい存在でした。主様ではなく子供た
ちの触手に絡めとられた男たち。裸にされて触手に縛りつけられるよ
う樹に抱かれ、やがては樹に取り込まれて樹を育てる肥料にされてい
くのです。育ち盛りはよく食べるから困っちゃう。

 しなやかな裸身のままウロコを着て、樹にされた玲子のアソコをま
さぐってやりました。そしたら樹が、せつなげにしなしなと悶え揺れ、
細かなウロコに覆われたその顔が・・目が・・パッチリ目が開くので
す。

「あら、まだ生きてるの? ごめんね玲子、こうされて感じるかしら?
ほうら・・ほうら気持ちいい・・」
 クチュクチュまさぐってやるんです。樹になっても穴ヌレしてた。
「ほうら樹が悶えてる。気持ちいいんだ・・ふふふ、もっとシテ欲し
いわね・・きゃはははっ!」
 もう声は出せないよう・・その目からツーッて涙がこぼれたわ。


「あ、ほらぁ、流れ星! 綺麗ねー! お願いしなくちゃ、幸せにな
れますようにっと! あははは!」
「ふっふっふ、子供か、おまえ」
「だって綺麗なんだもーン! うふふっ!」
 新婚旅行はハワイです。海を見渡すバルコニー。ビーチベッドに主
人と二人、裸で寝そべっていたんです。流れ星がすーっと尾を引いて
消えていきます。

 いつの頃なのか、そのひとつがあの山に落ちてきて、主様が芽を出
されたということですね・・。

「ぁ・・ぁぁ・・」
「マリ、愛してる」
「うふふ、うん。早く赤ちゃん欲しいねー!」

 私の中の生命体の遺伝子が人の精子を得たときに、どんな姿になる
のでしょう。

「ねえ・・」
「うむ?」
「・・ううん、いいの」
 いい男だわ。惚れ惚れしちゃう硬さと角度・・ん?

 でも・・そのうち飽きたら、あなただって樹の餌よ・・。

枝折れの桜(下)

指定した道具が翌日には手元にあった。宅配便のシステムは世界に
誇るとつまらないことを考えてみたりもした。結城家に泊まり込んだ
私は、荷物を受け取るとすぐに、机の裏側の目立たないところを彫刻
刀で削ぎ取って顕微鏡にかけてみて、我が目を疑った。
「これは・・」
 主が傍らにいて興味津々覗き込んでくる。
「なにか?」
「まさかそんなことが・・ますます信じられませんね。机の黒く錆び
て見える木肌は表層のほんの皮一枚で、その下の細胞は元気に生きて
います。常識外だ。まったく考えられないことです。机から伸びる枝
も正真正銘この机の桜そのものですし」
 このとき私も主も、そうやって大の男が二人で夢中になっている姿
を、物陰から孝子に凝視されていようとは思わなかった。

 私としてはなにがなんでも机を持ち帰り、徹底的に調べた上で論文
にまとめたいところだったが、どうしても承諾してくれない。主は、
机の存在が公になることよりも、万が一それが災いの種になったらと
危惧したのだ。しかたなく私は仙台を後にした。一度大学に戻り、ス
ケジュールをやり繰りして次には少し長期に観察したいと考えていた。
なにしろ植物学にとどまらずこの地球上に存在する全生物学上考えら
れない大発見なのである。

 大学に戻った私は、イライラしながら毎日を過ごしていた。ちょう
ど期末の試験に重なって抜けようにも抜けられない。そんな日々が続
いたある日、昼過ぎになって私のデスクの電話が鳴った。

「徳永ですが?」
「私、結城家で家政婦をいたしております小松と申しますが」
「ああ孝子さんですね」
「はい」
 受話器から聞こえる若い声が震えるような緊張を孕んでいた。
「どうかなさいましたか?」
「それが・・」

 私は慄然とした。
 あの文机から根のようなものが生えてきて、それとタイミングを
合わせるように結城家の長女で東京に出ている加世子という娘が、
昨日の夜、新宿の街中で突然狂ったように暴れ出し、そのまま倒れ
て心臓発作で死んだというのである。
 そしてそのショックで家の主までが倒れてしまったらしい。
 しかし私が恐れたのは、その事実よりも孝子の電話の背後という
のか、電話の向こうで孝子をつつみこんでいる空気感のようなもの
の中に、このときはじめて、ただならぬ霊気を感じたからだ。
 こんなとき霊能に長けた妻がいてくれたら、あるいは対処法があ
ったかも知れない。妻はつい昨日から家を空け、友人たちとヨーロ
ッパを廻る旅に出ていた。


 そのさらに二日後、大学を開放された私が駆けつけたときには、
主は入院してしまって家にはいなかった。東京から大介という息子
も戻って来ていた。
 主は、娘の死の衝撃で起き上がることもできなくなってしまった
らしい。先だって訪ねたときに私にもし強い霊能力が備わっていた
らと考えると、遅きに失したと後悔される。
 あの文机のありさまは短い間にそう変わるものではなかったが、
枝の伸びる机の角のところから長さ一~二センチのヒゲ根が二本生
えかかっていて、すさまじいまでの妖気を発していた。まるで陽炎
が立ち昇るような光の揺らぎが机を取り巻いていたのである。
 する術もなく呆然と見ていると、傍らにいた大介と孝子が言うの
だった。

 孝子が先に口を開いた。
「先生の霊界散歩、私も楽しみにしてるんですよ。よく霊のことを
ご存じだなと思いましてね・・ふふふ」
 大介が言った。
「そうだね、僕も孝ちゃんから聞かされたとき、びっくりしたよ。
年月は人にとっては長くても霊にとっては一瞬でしかない・・って
ところが特に」
 私は孝子の変貌ぶりを呆気にとられて傍観していた。明らかに人
格が重なっている。多重露出の画像を見るように二人の孝子が折り
重なっているようだ。
「君たちは・・」
 孝子が応じた。
「どうぞ机のことは心配なさらないでくださいね。あの桜は、どこ
かに植えてもらいたがってるだけですから。あれはもちろん桜の板
ですが、お孝さんそのものなんですよ。あの机が私と大介さんを東
京で巡り合わせ、そしてこの家へと導いたんですもの」
 大介が言った。
「ふふふ、驚かれましたか先生。僕たちはもう二度と離れたくない
んです。二度と誰にも邪魔されたくはありません。父もまもなく死
ぬでしょう。机に宿って生き続けたお孝さんの怨霊が殺すのです。
これ以上は言っても信じないでしょうけれど、僕の前世は当時の結
城の息子、隆太郎。そして孝ちゃんの前世は伊能の娘、お孝なんで
す」
 孝子が大介をやわらかく見つめて微笑んだ。
「お父様や加世子さんには気の毒でしたが、私たちにはどうするこ
ともできません。すべては枝折れの桜が邪魔者を排除しようとして
いるだけですから」

 二百余年を経て、それでも添い遂げようとするお孝の情念に、私
は打ちのめされていた。今回の妻の旅行も、妻は私と行きたいとず
っと言っていたのである。それを私は仕事にかこつけて拒んできた。
ただ面倒だったというだけで・・。
 女の情念には報いなければと、つくづく思う。
「そうですか。孝子さん・・いいや、お孝さん、そして隆太郎さん、
おめでとう、よかったですね」
 大介が言った。
「本当にそう思ってくれますか。だったらいいが・・」
 孝子が言った。
「先生が先日おみえになったとき、もしも机を持ち出そうとなされ
たら、いまごろ先生は殺されておいででしたわ。そしてもう一つ、
このことは先生の胸にだけ留めておくと約束していただけると嬉し
いのですが?」
 私はうなずいた。無関係な私の身を案じて私を呼び寄せた二人だ
った。

 孝子の声が、鈴の音のような響きに変化して、お孝となって現れ
た。
「ほらあれを・・ご覧になって」
 文机を振り向くと、立ち昇っていたすさまじい妖気が失せていた。
 私は女心のように二百数十年を経て、なお枯れず、机に芽吹いた
桜の若木に手を合わせた・・。

枝折れの桜(上)

 電話でおおよそのことは聞かされていた。
 徳永は、仙台駅に着くと駅構内にある待ち合わせの場所へと急いだ。
 伊達公の像の前に午後三時。それが約束だったのだが、仙台のすぐ
間際まで来ているのにドアの故障であの新幹線が遅れてしまった。
 徳永はJRの対応に不満を持った。遅れるなら遅れるで、どの程度
かかるのかアナウンスしてくれればこちらもスムーズに対応できたも
のを、五分や十分の遅れでいちいち電話をするのもどうかと思い待っ
ていたら、結局三十分以上もかかってしまった。もちろん途中電話を
してはおいたが、連絡を取ったときにはすでに迎えの車が出た後だっ
たのだ。


 私は久しぶりの仙台を楽しもうと思っていた。日頃大学で忙しい日
々を送っていただけに、たまにはこういうこともあっていいと、つい
での牛タンを楽しみに列車に乗った。仙台は妻の郷里に近く、仕事で
も幾度か訪れたことはあった。私にとって今回の話は、学術的にもそ
して趣味の部分でも大いに興味はあったのだが、ガセであることも多
く、騒ぐほどのことでもないだろうとタカをくくっていたのである。

 伊達公の前に、濃紺の制服に帽子を合わせた初老の運転手が立って
いた。一目でそれとわかるので歩み寄ると、その男がにこやかに微笑
んだ。
「徳永教授でいらっしゃいますね?」
「ええ徳永です。教授ではなく助教授ですが」
「そうでございますか、これはどうも。結城様のご依頼でお迎えにあ
がりました」
 このときはまだ結城家がどういう家柄か詳しくは知らなかったが、
結城の家は伊達公の時代よりこの地にあって、領地開拓に尽くした豪
族の末裔であると話好きの運転手に車中で聞かされた。

 ハイヤーは小一時間ほども走って、目前に山の迫る美しい景観の中
に建つ旧家の敷地に乗り入れた。しかし私は少し落胆した。旧家と聞
いていたので、さぞ由緒ある建物に違いないと期待していたのだが、
御影石の苔むす塀とは裏腹に、屋敷そのものは建て直して間のない現
代的な家屋であったからだ。屋根にはソーラー発電システムまでがの
っていた。
 ハイヤーが滑り込むと、その音を聞きつけて、ほとんど同時にお手
伝いさんらしきエプロンをした若い娘が迎えに出てきて、その後を追
うように、痩せて背の高い、この家の主が松葉杖をついて現れた。白
髪が混じっていたものの、歳は五十代のようである。

 車を降りると、主が不自由そうに歩み寄ってきて微笑んだ。
「これはこれは教授、お待ち申し上げておりました。本来なら私がお
迎えにあがるところ、失礼とは存じますがこのような有様ですので車
をお願いしたんですよ」
「いえいえ、どうぞお気遣いなく」
「新幹線では災難でしたな、あははは。それにしてもお若く拝見する。
失礼ですがそのお歳で教授とは立派なものです」
 待ってましたとばかりに早口でよく喋る。助教授ですと言い返すつ
もりもなかった。
 この主、自転車に乗っていてドブにはまり、足を折ったそうなのだ。
旧家の主という重々しい雰囲気はなく、逆に私をほっとさせた。

 家にあがると、広い庭を臨む二十畳はあろうかという和室に通され
た。結城は早くに妻を亡くし、二人いる子供らは東京に出てしまって、
この家に住み込みの家政婦と二人で暮らしていると言った。
 お手伝いさんは、座卓についた我々にお茶の世話だけをすると、主
の目配せでさがって行った。早速本題に入るつもりでいるらしい。
 それと言うのも、外の明かりが入る部屋の片隅に、すでにそれが置
かれてあって、私がそっちに釘付けになっていたものだから前置きは
いらないと思ったのだろう。
「お話の文机とは、それですか?」
「そうです。先生、こんなこと説明がつくものでしょうか?」
「ちょっと拝見いたします」
 私は座を外し、問題の文机に歩み寄った。
 武士の頃からあるという黒く錆びた木肌が美しい、小振りの文机で
あった。食い入るように見回す私の様子をしばらくうかがい、主が言
った。

「いかがでしょう、先生?」
「ううむ・・これは・・確かにそんなに古いものなんですね?」
「それはもう。当家が代々受け継いできたもので、二百年以上は経っ
ていると聞いています」
「江戸末期ということですか?」
「そうです、それに間違いありません。その古い机から、なんで今に
なって枝が伸び、葉をつけるのか、まったく恐ろしいとしか言いよう
がないのですよ」
「恐ろしい?」
「いや、それについてはこれからじっくりお話しますが・・」
 よほどのいわれがあると思った。それでわざわざ京都から私を呼び
寄せたのだ。私は大学で植物学を教える傍ら、ほんの趣味で「霊界散
歩」というエッセイを雑誌に発表していた。私に多少の霊感があるこ
とよりも妻にそれが顕著だったことが、私をその研究に走らせたのだ。

 およそ二百年前の文机。桜の木で作られている。
 その枯れきった、もはや古代の木材に、今年になって枝が芽吹き、
瞬く間にするすると伸びて葉をつけたというのである。私は枝の伸び
る机の角を凝視したが、トリックで挿し木をしたようには思えなかっ
た。枝の根本が完全に机の木肌と一体となっている。枝は鉛筆ほどの
太さにまでに育っていて、長さは五十センチほどだっただろうか。机
の下から根が出ているというようなことはなかった。
 しかしいずれにしろ植物学的には考えられない。詳しいことは調べ
てみないとわからないが、もしもこれが事実なら学会をひっくり返す
事件となる。

 現実的な野心はともかく、私には机から枝が伸びるそのありさまが
滑稽に思え、含み笑いをしながら座に戻ったのだった。ところが主は
真顔を崩さない。
「まあお笑いになるのも無理はない。ではお話しましょうかね、その
文机の由来を」
「ええ、ぜひ」
 主はお茶を少し含んで口を湿すと重い口を開くのだった。
「じつは、その机が作られるさらに前のことですので、いまから二百
数十年も昔のことなんですが」
「はい?」
「その頃、この村には当家の他にもう一軒名のある豪族がおりまして
ね。いまでは没落してしまっておりますが当時は当家と張り合ってい
たようなんですわ。伊能家と言いますが」
「伊能家?」
「さようです。で、その伊能の家には、お孝というじつに美しい娘が
おったのですが、その当時のことですので家の犠牲になりましてね。
それはつまり当家と張り合うための策としてと言う意味ですが、仙台
藩の重鎮のご子息との間に縁談がまとめられてしまったわけですよ」
「政略結婚ということですね?」
「いかにも」

 主はまた湯飲みを傾けた。さっきまでとは打って変わった神妙な面
持ちだ。
「さて。それでですね、その伊能の家の庭先にはそれは見事な桜があ
って、花の季節にはまさしく桜吹雪を降らせていた。そしてその木の
枝で、可哀想にお孝は首を吊ろうとしたわけですな。ところが縄を掛
けた枝が折れてしまって死にきれなかった。それからその桜をこの辺
では『枝折れの桜』と呼びましてね。村人たちは桜がお孝を救ったの
だと言ってお孝をしのんだそうですよ。お孝は首吊りでは死ねず、結
局嫁いでいって、それでも先様での暮らしに耐えられず自刃してしま
ったそうなんです」
「なるほど」
「お孝がどれほど伊能の家を呪ったか、想像してやってくださいな。
お孝の死後、伊能の家は災難続きで、あっという間に没落してしまっ
たそうなんです。主もまた狂ったようになり、家に火を放って死んで
しまった。そのときに枝折れの桜も燃えたということです。当時のこ
とですから、お孝の祟りだともっぱらの噂になったそうですが」
「それで燃え残った幹を使ってこの机を作ったというわけですか?」
「おっしゃる通りです。このような机がいくつか作られ、何軒かに配
られたわけですが、現存するのはこれしかない。桜の木をお孝が愛し
ていたことは村人の多くが知っていましたし、お孝が書に秀でていた
ことも衆知のこと。それで机になったわけですが、つまりはお孝の名
残のようなものなんですね」

 それから、どうしたことか主が身を乗り出してきて小声になった。
よもや聞かれるようなことがあると困ると言ったそぶりである。
「それですね先生。お話はこれからでして、じつは机が芽吹いたのは、
あの子がウチに来てからなんですよ。半年ほど前だったか・・」
「あの子とおっしゃいますと?」
「さっきの家政婦です」
「ああ彼女が?」
「ええ。あの子ね、くしくも孝子と言いましてね、実家は青森なんで
すが、もしやお孝の末裔ではないかと思うんですよ」
「お孝に子供が?」
「女の子ばかり二人産んだと聞いております。それもあって嫁ぎ先で
うまくいかなかったわけですよ。女じゃ跡継ぎになりませんからね」
「ふうむ・・そうするとつまり、お孝の魂が入った桜の木の机が、そ
の血を受け継ぐ娘が来たことで生き返ったとおっしゃりたいわけです
か?」
「まさに、その通りです。私の方でも手を尽くして孝子の家系を探ら
せましたが、なにせ二百年も前の平民のことですので追いかけようが
ありません。ですがそう考えるしかないんですよ私としては」
「孝子さんはどうしてこの家に?」
「新聞の求人です。なんでも東京の大学は出たものの、この就職難で
戻って来たということらしい」
「なるほど、そうですか。お話はよくわかりましたが、それがもしそ
うだとしてもですよ、伊能の家ならともかくも、こちらの結城家にと
って差し障りとなるようなことが起こるいわれにはならない気がする
んですがね?」

 主は浅く溜息を漏らして言う。
「いや、それがまだちょっとあるんですわ。じつを言いますとお孝は
当時のこの結城家の息子、隆太郎とできておりましてね。それで首を
吊ろうとしたのですが、結城の家としては、もはやお孝を引き受ける
わけにはいかなくなった。伊能の家に逆らって、さらに藩の重鎮のご
子息を袖にして当家に来たとあっては、いくらなんでもうまくない」
「要するに、見放したわけですね?」
「そういうことになるでしょうな。見放したというよりも引き裂いた
と言うべきか。ともかくそういうことがあるものですから、孝子が来
て喜び勇んだように生き返ったその机におぞましいものを感じるので
すよ。よもや孝子がそれを承知で当家に来たとまでは思いませんが」
「それで何か直接的な災いでも?」
「ええ、じつはそうなんです。私の体調もここしばらくすぐれません
し、骨折もそうでしょうし、東京に出た当家の子供たちのうち、特に
妹の方にはここのところ不運が続いておるのですよ、病気やら怪我や
らと。いまはまだその程度なんですが、そのうち何か恐ろしい事が起
こるような気がしてならんのです。それで先生にお越しいただいたと
言うわけですわ。先生のお書きになられる霊界散歩を愛読しておりま
してね。年月は人にとっては長くても霊にとっては一瞬でしかないと
お書きだったでしょう」
「そんなようなことを書いた記憶はありますけれど・・それで私にこ
れからどうするべきかをお尋ねになりたいわけですね?」
「そうです。お礼はいかほどにもいたしますから、なんとか当家を守
っていただければと思いまして」

 と言って頭を下げられても困ってしまう。
 私にも少しは霊感があるつもりだが、こうして机を見ていても何も
感じないし、考え過ぎもいいところだとこのときは思っていた。
 私は、ともかく机を調べてみようと考えた。当初は大学の研究室で
じっくりと思っていたが、持ち出してもらっては困るとのこと。あく
まで内聞にということらしい。私はすぐさま大学に連絡を入れ、ちょ
っとした道具を送るよう手配した。

仲良し夫婦 カッコばっか 

「ふ…」
「なによ? どうせまたヘンなこと言うんでしょ?」
「ちっちぇー、パイオツ」
「えーえー、どうせAカップですわよ、フロントホックに
パット付き! それでもスカスカだって言いたいんでしょ!」
「平面パイにデカ乳首。くくくっ!」
「るっさいわ! ちびチンのくせして!」
「なんだとコラ!」
「なによ! 平均チン長、七センチ!」
「やかまし! 肩甲骨にブラしろや!」
「おい、てめえ!」
「んだ!」
「だいたいアンタはカッコばっかよ! そこらの男なんだ
から、カッコつけてどーするよ!」
「つけてねーだろ!」
「つけてんじゃん! ギターのチューニングもできない
くせに! カラオケだって耳腐るし!」
「なの関係ねえだろ!」
「ぁ痛ッ! このDV男! 音感ゼロ! 美観ゼロだし!」
「やかましいわ、てめえはなんだ、性感ゼロ女!」
「あーっ、言ったわねー! おまえが下手なんだよー!
粗末なくせに、みこすりピュッ! ダッサイ精液、飛ば
しやがって!」
「ダサイ精液とは何だ! うははは、なんだそらー!」
「笑いながら怒ってんじゃねえよ! あははは!」
「笑うな! うぷぷっ!」
「だからカッコつけんなって言ってるの! アタシが好き
ならカッコはいらん! 給料チョビだしエッチは下手だし、
音感ないし口臭いし」
「てめえ! いい加減にしねえとマゾ牝にしてやるぞ!」
「けーっダ! どっちがよ! 女王様って呼びなよね!
変態チックにアタシのケツ舐めてるじゃん!」

 おおぅ上等だ! わかった、もういい! 誰がカッコ
つけるか、このペチャパイ、デカ乳首! ケツだけヘビー!
 言ったわね! やるかコラ!
 やったろじゃん! なんだてめえ!
 なんだとはなんだ!
 なんだとはなんだとはなんだ!
 ひっかくな!
 噛むな!
 踏むな!
 蹴るな!
 泣くな!
 だっても!
 だってもじゃねえ! 可愛いなぁ!
 ンふ…
 感じてんじゃねえや、この男尊女卑!
 言ったな、この女尊男卑!
 それ好きなくせに!
 嫌いじゃねえけどよ! ンふっ!
 笑いながら怒るなって言ってるだろ!

 ちょい…。
 んだ!
 ちょっと待って。会話がグズグズになってきた。
 そりゃそうだろ。
 元に戻そ。読んでる人が気分悪いよ。

「だからカッコつけてんじゃねえか」
「だね」
「男女の間には適度の「カッコ」が必要なのさ」
「そうみたい。ねえ、でもさあ…」
「おぅ?」
「あなた、どうして泣いてるの? うぷぷぷ」
「虐めるもン。乳首噛むし、チン踏むし、タマ蹴るし」
「カワユイねー…ほらほら奴隷、アナル舐めて」
「はぁい!」

「あぁん、それ好きぃ! もっとお舐め! あぁン!」

 仲良し夫婦にかぎって、よくもめるということです。

寝化粧

 母が寝化粧をはじめました。娘の私が三十路にもなると、母に
はいよいよ秋の色が濃くなって・・。

「ヤだ母さん、寝化粧なんて縁起でもない。老け込む歳でもない
でしょう」
「違うわよ、失礼しちゃうわね、もう少し生きてますっ。ふふふ、
あのね、お父さんが夢に出てきて言うのよね、おまえひどいぞっ
て。ひどいぞよ、それこそひどいと思わない? だから私言って
やるの、私だってまだまだよ、恋でもするから見てらっしゃいっ
て」
「女は気持ち?」
「そうよそう! ふふふ、朝起きて鏡の中で枯れてたら嫌だもん。
それでお父さん、消えていくとき言うのよね、置き去りにしてご
めんなって」

 シュルっとティッシュの気配がして横目をやると、母が目頭を
おさえています。夫婦はだいたい女が残されるようになっている。
だけど父さんは早過ぎました。


 娘を連れた里帰りで、あの子を母にあずけてしまい、どれぐら
いぶりだろう・・独りひっそりお湯に浸かり、そんなことを考え
ていたんです。母はまだまだ。来年には還暦ですが綺麗な人だと
私は思う。

 地獄谷という言葉があるけれど、ここはまさにそんなところ。
山々の緑は遠くにあって、額縁のように、ゴツゴツとした岩絵を
囲んでいる景色・・。
 硫黄の匂いが漂って、湯気が霧に立ちこめて、ところどころで
湯気とお湯が一緒になって噴いている。

 鳥たちも地獄は嫌いなんでしょう。囀りさえない静かな静かな
湯気谷なのです。

「ご一緒させていただきますよ」
「あ・・ええ、はい」

 まるで気配に気づかなかった。季節はずれのこんな日に辺鄙な
ところへ人が来るとは思っていない。
 五十年輩の男性でした。岩囲みの丸い湯で、私は微妙に体を流
して乳房の隠れる深さに身を沈め、斜め肩背を向けている。
 羞恥と警戒・・このときは期待なんて少しもなかった。

「すごいところですね、怖いほどだ」
「ご旅行ですか?」
「二度目です。以前に一度来てまして、ここが気に入り、そう遠
くないところに離れを持った」
「離れ?」
「物書きなんです。もっとも・・これがまあ書けなくて書けなく
てアタマ掻いてる凡人でして。ははは」
「まあ・・うふふ」
「月のうち十日ほど、そこらの山にこもってる。離れといっても
遠すぎますがね。庭を歩ける離れじゃなくて新幹線越しなんです
もん」
「そうですの」
「東京です。最初のときは妻と一緒。あの頃となーんも変わって
いませんよ」
「では、離れに奥様も?」
「いえ・・逝きました。あっけなかった、ガンでした」

「すみません」

「いえいえ、どうぞお気になさらず・・」

 ザバと顔を洗うお湯の音・・。

「あなたはご旅行で?」
「実家がそばです、娘と里帰りで久びさに」
「なるほど。それにしてもすごいところだ・・美しい」
 彼も斜め肩背を向けている。それははっきりエチケット。私
は羞恥はあっても警戒心は薄らいで、知らず知らずお湯から乳
房の谷がのぞいていました。リキミを抜くと浮いてしまう、お
湯の浅いお風呂です。

「草の一本、生えないところ。昔からずっとそう。岩ばかりで
生命がない・・枯れている」
「え? いやいや、それはちょっと・・」
「違うかしら?」
「ええ、きっと。僕はちょっと違うことを思うんですよ。ここ
は女の情念そのもので、寄せつけない硬さの奥に恐ろしいほど
熱を持ち、隠しきれずに熱くて白い息を吐き、愛液のようなお
湯も噴く。そんなふうに思ってますが」

 それを聞いて、乳房の谷がまた少しお湯に沈み・・斜め肩背
だったものが、微妙に背中がひろくなる。それは彼の言葉でな
くて私自身の渇きを想うものでした。
 恥ずかしく・・でもこのとき、ほんの少しの期待が湧いて、
だからお湯に沈んでしまった。

 肩越しの彼の姿がこちらに向く気配があって、私ははっきり
背を向けてしまいます。そしたらね、チャプチャプとお湯を引
っ掻く気配がする。
 私はまた少しだけ斜めに構えて横目で見たわ。
 お湯の上で彼の手がおいでおいでをするように水を掻いてい
るんです。

「あ、いや・・あははは、ちょっとね子供の頃を思い出しまし
てね。川に落ちたボールをこうやって引き寄せようとしたなと
思い・・あははは!」
「なんですのそれ?」
「手が届きそうで届かない。こうやって水を掻けばボールが寄
せてくるんです。だけどうまくいくとは限らない。流れにさら
われ、いくつボールをなくしたことか。はははっ!」

 そして彼は、ザバっとお湯を乱して背を向けてしまうんです。
バシャバシャと顔を洗っている。
 もしかして・・涙?
「あーあ、ヤだヤだ、男ってほんと、しょうがない生き物です
よ。お湯を掻けばあなたが流れてくると思ってる。男心は子供
です」

「ま!」

「あははは、冗談ですよ冗談! あはははっ!」


 そのとき私は困ったことになっている。お湯が熱くてのぼせ
そう。
「あのう・・」
「はい?」
「もう出たいのですが・・のぼせちゃうから」
「おお! それは嬉しい回れ右ってね! あははっ、あっはっ
はっ!」
「嫌ですわ、もう・・うふふ!」
 いえいえ、そんなことをされる方ではない。きっぱり背を向
け、送り出してくれました。

「ありがとう、楽しかったな。僕は少し妻を想って泣いて出ま
す。そのうちまた会いたいな・・」

 その、冗談とも本気ともとれる言葉が、なぜかすごくあたた
かく、チャプチャプと水を掻いてくれたとき、流れてみればよ
かったなって思ってみたりしてるんです。


「へえ・・あらそう、素敵な方ねー、さすが作家よ」
「そうなのよ。なんというか、言葉にいちいち世界があるって
言うのかしら・・ねえ母さん」
「はいはい?」
「再婚したら?」
「ええー! 誰と? その方と? あっはっは! こりゃ可笑
しい! あっはっはっ!」
「そんなに笑うことかしら?」
「だってあなた、見ず知らずの男性と・・あっはっはっ! そ
れはね、香澄が若いからであって、あたしなんかじゃ、ペペペ
ってお水をかけられ、あっち向いてホイよ。あはははっ!」
「そうかなぁ・・母さん綺麗だと思うけど」
「はいはい、どうもありがとう。 そう言うあなたこそ、どう
なのよー? よさそうな人じゃない。旦那ともうダメなんでし
ょ?」
「だって、おじさまなのよ、頭の白い・・」
「ほらね、あなただって言うじゃない。あっちからすれば、あ
たしなんてババアよババア、六十なのよもう。あっはっはっ、
このあたしがいまさら再婚? お父さん化けて出てくる、あっ
はっはっ!」


 それから十日ほどして、娘の旦那がやってきて、ともあれ一
度戻って行きます。孫娘のいたにぎやかな家がしーんと静まり、
私はふと、あのお湯のことを考えた。このへんの者ならもちろ
ん知っていましたし、私だって若い頃、お父さんと恥ずかしい
ことをした・・。

 どれくらい行ってないのかな・・二十年? もっとかしら?
 独りになって気が抜けたのか、ふらりと私は出かけてみたの。
そのときは思い出に浸ろうとして・・ただ単に温泉が目当てで
あって、そんなことは忘れてしまっていたんです。

 ほんとね・・なんにも変わっていなかった。変わりようのな
いところ。風が少し冷えていて、もうすぐ温泉シーズンで。
 だからいまはひっそりしていて、風の冷えが湯気の霧を濃く
していたわ。

「ご一緒させてくださいね」
「え・・ああ、どうぞ」

 このときになって私は娘の言葉を思い出し、斜め肩背に見て
いたの。五十年輩のスリムな男性。頭が真っ白。

 え? それって、もしや・・。

 再婚したらと娘の声が聞こえたようで、私は老いて萎んだ乳
房の谷をお湯に沈めて、なんだか懐かしい恥ずかしさと、ほん
の少しの期待もあって動けなくなっていた。

「いつ頃からあるんでしょうね・・」
「温泉の形になったのは江戸時代だって言われてますわね」
「地元の方ですか?」
「ええ、すぐそこ」
「そうですか。ここはいいところです。私はまだ間もないです
が、おかげでペンが走ります」
「ペン?」
「物書きなんです、東京からときどき来ていて・・だけど、う
うむ、どうしようかなぁ・・」

「はい?」

「向こうをたたんで越して来ようかと思ってます。なんだかね、
ここにいると萎えてしまった気力をくれるような気がしてしま
って」
「萎えるなんてそんな・・早いですわよ、まだまだ」
「いいえ・・お恥ずかしい限りですが、ちょっと疲れた。ここ
にはきっと女神がいて、心を開く者にはやさしさをくれるんで
す。ゴツゴツした岩も、静かに佇む岩ですが、その内側には愛
があり、熱い吐息を吐いて裸の僕をあっためてくれるんです」
「そう言っていただけると地元の者としては嬉しいですわ。私
も娘も小さな頃からここに来て、思い出もあれば・・うふふ、
愛液のようなお湯を吐くって、どなたかに言われたとか」

「えっ! あーっ! あのときの!」

「覚えておいで?」
「もちろんです、あの方が・・そうですか娘さん・・」
「ええ娘です。お湯をチャプチャプしてくれて、流れてみれば
よかったなって言ってましたよ」

「ンむむ・・いやいやいや・・それはその・・ヤバ・・」

「あははは! 面白い方ね、おいくつかしら?」
「じきに五になります、五十五に」
「あの子は三十七ですわ、若くして産みましたから。二十二の
ときに」

 そのときはもう娘の話になっていて、老いた私には、警戒心
や、まして期待なんてありません。少しの羞恥をタオルで覆い、
斜め前に彼を見つめていたんです。娘のもしやを品定めしよう
としたのでしょうが。
 そしてまた彼の方も、あのときの女性の母だと知ったときか
らこちらを向いて・・ひと泳ぎの距離にいる。

 その人が・・まっすぐ私を見つめてくれる。

「ではあの、失礼ですが・・五十九? ウソだ?」
「ええ、来年還暦、お婆ちゃんです」
「そんな・・いえいえ、そんな、お綺麗です、お若くてお綺麗
です」
「あはははっ! ありがとう、嬉しいわ。だったら・・私にも
チャプチャプしてくれるのかしら・・ぅくく」

 なんで・・なんでそんなことを言ってしまったのでしょう。
 言ってから大笑い。なのに、もしもチャプチャプしてくれた
らと、いきなり羞恥に襲われて、なんとなくお湯に沈んでしま
った私です。

 チャプチャプ・・・
 チャプチャプ・・・

「子供の頃、野球のボールが川にはまって、こうやって取ろう
としたんです。手の中にあるときは粗末にしたものも、イザな
くすかと思うとたまらなくなってきて、大切にするから戻って
おいでと言うように・・」
「お気持ちはわかります」
「あの・・あ、申し遅れました、私は渡辺幸雄です。妻に先立
たれて独りです」
「それも娘から少し・・ふふふ、私は菊江と申します、はじめ
まして。私も主人をとっくになくした」
「菊江さん・・はい、菊江さんですね・・」

 ハッとしました・・私はなぜ名を言うの? 姓でいいのに?
 それに主人のことなんて・・独身をアピールしたい? 

 言ってからカーっと体が熱くなり・・。

「お、鬼がさらいに来るとも言われてまして、夜には一人じゃ
怖いんですよ」・・なんてね、どーでもいいことでごまかしな
がら、裸身をそむけて斜め肩背に視線を流す・・。

 チャプチャプ・・・
 チャプチャプ・・・

 まっすぐでウソのない視線です。

 チャプチャプ・・・
 チャプチャプ・・・

 ああ、どうしよう・・どうしよう・・流れて行きそう。


「い、嫌ですわ、ご冗談を・・うふふ」
「ボールであれば服を濡らすと叱られる。だけどいま私は泳ぐ
こともできそうです」

 チャプチャプ・・・
 チャプチャプ・・・

 両手でね、犬掻きをするように・・もちろん足はついていて
泳ぐフリだけ。私は乳房を掻き抱いて、まともに背中を向けて
しまった。羞恥より、触れ合いへの予感に翻弄された私です。

 流れ着いた彼の手が・・肩越しにそっと私をくるみます。
「あぁ・・ね、ねえ・・ねえ・・」
 振り向かされて抱かれるときに、懐かしい硬くなった男心が
私のお尻に触れたのです。

 プシュゥ・・・ 

 乾いていた岩肌に、愛液のような熱湯が噴いていました。

in blog・・③emi

 エッセイまでいかなくても、そんなようなものを書きたくてブログ
をはじめてみたんです。女子高から女子大へと進み、多感期を女ばか
りの中にいて女の素顔を知り過ぎてしまったから。文章は子供の頃か
らまあまあのレベル。読まれて恥ずかしいほど下手ではありません。

 彼がいます。でも私は、ほとんどの未婚女がそうであるように彼の
前でちょっと仮面をつけているんです。彼ってね、恋人が本性を曝け
出して、それでも心のバランスを保てるほど強くはありません。

 ブログで私は、性への秘めた想いを綴っています。言葉は選んでい
ますが言いたい放題。ほとんどがテキストのつまらないブログです。
アクセスも多くはなかった。
 そうです、いま振り返ると、多くはなかったと過去形で言うべきで
しょう。

 性画像を載せるようになり、いまではかなり多くの人に読まれてい
ますし、コメントもちょこちょこ入るようになりました。
 私にはちょっと変態的なところがあり、陵辱への願望というのか、
力づくで女体を征服されることへの憧れのようなものがあったのです。
それでいつしか強制される性についてエッセイを書くようになってい
た。
 はじめの頃は文章だけ。そうするうちに画像を処理するソフトを使
って、写真をデッサンみたいに線画処理したものを、記事と併せて載
せるようになったのです。
 チマタに氾濫している陵辱シーン・・修正されない露骨なものでも、
デッサンタッチの線画になってしまえば問題ない。

 はじめのうちは記事を書くたび画像を載せて、そのうち絵がうるさ
くなってきて、しばらくテキストだけに戻してみたり。いまでは月に
一度のペースで、実写ならモラル的にもとても公開できない種類の画
像を載せている。だいたいが線画のタッチなのですが、ときどき、線
よりもリアルな油絵タッチにすることも・・。

「ふーん、おまえの中にそんなに淫らなおまえがいたとはね」

 ブログのことは彼にももちろん知らせてあって、笑いながらもあの
人なりに考えているようですし、それからはエッチも私好みにちょっ
と怖くなってきた。押し倒されて、髪の毛をつかまれて、嫌がる私の
唇を奪い、毟るように裸にされて犯される。
 ていっても、ほんのお遊戯なのですが。

 ブログに画像を載せはじめた最初の頃は、ネットで探した写真を処
理して載せていた。いま、月の一度のペースでしか載せられなくなっ
たのは・・そうしなければ私の体がもたないことと、載せすぎるとモ
デルが私だってバレるのではと怖いからです。

 エッセイを書くうちに妄想が暴走しはじめ、あの頃はべちょべちょ
に濡らしながら書いていました。
 こんなように泣きながら犯されたい・・そしてついに、ブログの中
の本性が外の世界に出てきてしまった。

 そういうことをしそうな男たちの集まる場所へ、月に一度、出かけ
ていきます。写真を撮ってくれることを条件に私自身を捧げるのです。
 ですからね、私のいまのブログは、ハンドルネームemiって女の体験
談になってます。私として妄想をひろげ、emiとなって実践しているわ
けですね。

 線画タッチの画像が、しだいにリアルになってきている。
 体を開いて秘部だってもちろん曝して・・なのに画像が、デッサン
に色がつき、細部が描かれていくように・・そうです一枚の絵を描く
ように、しだいに私の像を結びはじめているのです。

 最後の妄想がひろがります。
 emiのことが彼にバレ、残酷なほどのお仕置きに泣きながら快楽の
泥沼に沈んでいく私・・。

 前回の画像掲載から、そろそろ一月経ちます。今日も私は犯して
と言わんばかりのスタイルで、バッグにデジカメを忍ばせて出かけ
るのです。
 今日のテーマは痴漢です。電車の中で私は・・立ったままお尻の
底に男の体液を注入されてきますので、次回更新をお楽しみに・・。

in blog・・②ran

 旦那に対して違和感を覚える時期がきっと来ます。それが女よ。
見方を変えればそれが旦那。それを危機だと思うから夫婦は終わる。
 危機でもなく倦怠でもなく、日々の中で中性化していくというの
が正しいのでしょうけど、私も旦那も、互いに女として男として、
そうなるわけではないんです。
 少なくとも私は女。でもね、少なくとも夫に男を感じない。そし
てそれは旦那の方でも同じことを思うのでしょう。

 でも、だからといって、不倫という言葉は重過ぎる気がするし、
セフレでは軽すぎて私自身が可哀相。
 ・・なんてね、そんなことを思っているうち、私は私を確かめた
くてブログをはじめた。セルフヌードのブログです。自分を撮って
載せていき、どんなコメントが来るのだろうと面白がった。
 ミニスカ穿いてのチラリズム。それがそのうち下着になって、ブ
ラを取りショーツも脱いで裸になった。

 海外からの配信ブログを知ってから、そっちへ引っ越し、隠さず
すべてを曝してみた。モニターに映る淫らな陰部がまるで私でない
ようで、実感がなかったの。
 実感はなかったけれど、私の想いを受けてくるコメントに・・励
まされたわけではないにしろ、普通の主婦の私でも多少の勇気が持
てたのね。

 そしてそんな気持ちの変化から、二つの言葉をもう一度考えてみ
たときに、よく言われる「もうひとりの私」の生き方が決まったん
だわ。
 「不倫」には「愛」という字がからみつき、「セフレ」には「男
都合の女の姿」が見えるでしょう。どっちもどっちで、そのうち辛
くなると思ったわけね。

 私の結婚は求められて一緒になった。強がりでも見栄でもなくて、
ウチの旦那は真剣でしたよ。目がマジって言うのかしら、とにかく
真剣。私ってそういう女だったから、もう一人の私ぐらいはもっと
自由でいいんじゃないかと思ったわけで・・もう、おわかりになり
ました? 答えは魔女です。私から男に仕掛け、そのとき限りの肉
棒をハントする。

 ブログを閉じてブログをはじめた。タイトルは「魔女の生贄」。

 え?
 いえいえ、ネットで男を漁るのではなく、男を漁ってモノにして、
モノにした男に、私に対するコメントを書かせるプレイ。
 そう、プレイなの。プレイってニュアンスがふさわしい。

 お互い相手の名を知らず、私はただ、セックスの代償にブログの
URLを告げるだけ。くだらないと思うでしょうけど、抱かれてい
るそのときよりも、コメントで語られる私の方が私自身を燃やして
くれる。
 ある男をハントして貪り合って、それから私はブログに毎回決ま
った親記事を書くんです。

「昼下がりのあなたへ。私って、どうかしら?」

 その親記事に相手の男が書いてくる。そんなスタイル。
 そうするとコメントにコメントが重なって、読んでいて可笑しく
なるのよ。
 たとえばね、ほら・・。


「昼下がりのあなたへ。私って、どうかしら?」

<コメント>
タイトルの「魔女の生贄」、まさに言い得て妙だと思います。
僕にとっては名も知らない熟女でしたが、一瞬ひらく淫花のようで、
開花の一瞬、上の口でも下の口でも、精液を搾りつくすように
吸われてしまった。あの後しばらくフラフラでした。(笑)
あなたはいくつぐらいで何をしている人だろうって考えました。
真昼の情事は主婦が相場・・まあ詮索はやめときましょうか。

しかしです、ブログに来て驚きましたね。初記事から追って
みて、僕でなんと五十四人目。淫らな人だと思います。
はっきり言って淫乱女。まさに魔女。最低です。(笑)
いいカラダしてますね。プロポーションそのものよりも反応
です。性の獣・・まさしく魔女の女体でしょうか。

いろいろ書きましたが、あなたは素敵です。
あそこへ行けば、また会えますかね。ちょっと怖い気もする
けど。惚れたらそれこそ生贄ですし・・^^)/

<コメント>
あそこって、どこよ?

<コメント>
通りすがりの者ですが、>あそこって、どこよ?

<コメント>
探してみれば。(笑)


 この最後の「探してみれば」という人も、また別の、私を
知る男だわ。私の体のスミまで知ってる五十四人の男たち。
 男たちは、それからもブログをずっと見てるはず。
 もしもですよ、私の淫花を思い出してオナニーなんてして
てくれたら、想像するだけで嬉しくなる。

 なんて考えながら、私だってオナニーするし、五十五人目
の彼ってどうだろうと想像する。

 さて女性の皆さまはどう思う?
 ブログは誰でもできるわよ。
 できるけれど、どう使うかは、あなたの器量と性欲です。

ミラー

 鏡を見ます。
 鏡の中の目を見ます。

「あなた、だあれ? 私に似てると思うけど・・」
 赤いリップの唇が鏡の中でそっくり同じことを言う。

 乳房を見ます。
「あら素敵。真っ白で、プルンてしてて、なかなかよ」
 私の両手が鏡の中で開かれて、白くてやさしい膨らみを
くるんでく。
 おっぱい揉むのはだあれ? ああ素敵、感じちゃう。

 乳輪をすぼめてツンと立つ乳首を見ます。
「まあエッチ・・ツンてすまして勃ってるよ」
 鏡の中の白い手の、意地悪な指先が、乳首をつまんで
こねたりします。
 ビクッてね・・不思議な波がそこから起きて、私の肌を
這ってひろがるの。
 ねえお願い、もうやめて・・震えてきちゃう。
 鏡の中の指先が止まります。
「ああんイヤぁ・・やめちゃイヤぁ・・」
 おねだりしている私がいます。

 もしもいま、鏡の中の女の背中に熱い男が抱きついて、
硬いピン君、お尻のところに押し付けて、乳首をそんな
にされたとしたら・・イク。

 おなかとそしてくびれを見ます。
「まあね、こんなものよね・・いいと思うよ」
 鏡の中で、爪を立てた白い手が、ツーッてお臍あたりを
逆撫でしてる。ゾクゾクします。
 はぁぁ・・息がちょっと真夏の吐息・・。

 くるり回ってお尻を見ます。
「牝よね、あなた・・そのお尻、いままでどれほど振って
きたの」
 こちら側の白い手が、鏡の中の女のヒップを揉みしだく。

 ふふふ、いいみたい。鏡の中のエッチな体がくねってる。

 そのままちょっと体を折って、お尻の谷を開いて見ます。
「色素の薄いアナルだわ・・そんなところも性器よね・・」
 鏡の中の指先が、谷底へ滑っていって、ツンて衝く。
 腿のお肉がぶるると震える。ヘンな感じ。でも感じる。

 くるって回ってふっさり生えた毛を見ます。
「エロチックなアクセント・・白い女体に淫らな草むら・・」
 鏡の中の白い手が、草の丘をまさぐります。
 こちら側の白い女が腰を退き、逃げる素振りをしています。
 ウソつきなんです、この女・・。
 期待して、とっくに濡らしているのにね・・。

 草むらを蹴散らす指を見ます。
「まあ・・なんてグロテスク・・男好きする肉花ね・・」
 鏡の中の白い手が、草むら越しに亀裂を裂いていくのです。
 谷底のその底の、肉厚のフラワーラビアが濡れてます。
 そうやっていやらしさを見せつけて、こちら側の私を誘う。

 谷への口でぽつんとしてる芽を見ます。
「綺麗なピンク・・ここがあなたの弱点でしょう」
 そうなんです。鏡の中の指先に弾かれて、こねられて・・。
 腰が揺れて辛そうだから私が動きをやめてあげると肉の
芽が・・芽からこちらに擦り寄ってきて指先をこするんです。
 あッあッ・・ぁはぁーン・・蜜声が甘い余韻を引いている。

 鏡の中の白い手が持つ赤い布を見ます。
「さあ、これを穿きなさい、大好きなエロパンティ」
 せっかく脱いで愛撫に濡れた花なのに、ローター付きの
パンティが隠してしまう。
 鏡の中の白い女が、腰を逃がしてイヤイヤしながら穿いて
いく・・。

 鏡の中の、手の中の、スイッチを見ます。
「欲しい? うふふ、まだあげない・・欲しいでしょ?」

 どちらがどちらか、鏡の中で白い女がおねだりしてる。
 早くシテって・・。
 鏡の中の指先が、焦らして焦らして、スイッチくれる。

 ビィィーン!
「アッアッ! はぁぁーん! ぁうぅーッ!」

 鏡の中の白い女のダンスを見ます。
「もっともっと! お尻振って、いい声お出し!」
 鏡の中の白い女が狂ってる。腰を回して、退いて衝いて。
 乳房を揉んで・・あんあん、にゃんにゃん、甘えてる。

「イヤぁあ! お願いよもうダメ・・もうーッ!」
「あら? 停める? 停めていいの?」
「あぁン、イヤぁん! 停めないで! もっとちょうだいーッ!」

 鏡の中で、どちらがどちらか・・鏡の中の目を見ます。
 鏡に映る私って・・だあれ?

血を分けた性

 同性愛への想いなんてありませんした。それどころか理解に
苦しむ変態行為でしかなかったのです。だけどいま私は女の体
を求め、夫では満たされない情欲の中に溶けるように生きてい
ます。
 発端は娘です。娘に初潮がおとずれて、ああこの子も女にな
っていくんだなと思ったとき、血肉を分け与え、なのに人格の
違う娘のことを性的に意識するようになっていた。
 いいえ、もちろん娘は娘。そのときはあの子に対する情愛が
そのまま同じ女体を持つ別の人に向いたのでした。
 
 娘に手がかからなくなってからはじめた生け花の先生なので
すが、三十四の私よりも六つも若い独身のお嬢様なんですね。
 お母様が生け花の師範、それで彼女も師範になったというこ
とで・・それが可愛い人なのです。
 私はどうもセンスに欠けるようでした。彼女に手取り足取り
教わって、お茶をしていただいたり、野草の花を見にドライブ
に行ったりしているうちに、彼女のやさしさ、女の情念・・そ
して若く甘い体臭に心を奪われていったのです。
 女二人のドライブでしたらどうしても温泉地。それも山間に
ある鄙びた宿ということになりますね。だって目的が野草の花
を愛でようということだから。当然温泉では女同士で全裸です。

 綺麗な体。若いわ。私は自分自身の思い出を見るようにあの
子の裸を見ていました。そうしたら、そんな普通ではない私の
視線に気づいたように、はにかむようにあの子が笑った。
「やだ・・エッチな雰囲気感じちゃう・・」
 ハッとしたそのときに、あの子の方から身を寄せられて、戸
惑ったのは私でした。
「あっダメよ・・そんなことしちゃダメ・・」
「じっとしてて。抱いてあげるね」
 六つも下の女の子に押し倒されていたのです。とろんと溶け
た欲情の眸をしてて、息が熱く、乳首が尖って・・あの子の膝
が私の腿に割り込んで、私は力を抜いてしまう。
 パンティなんて役に立たない。股間の布の脇から指が苦もな
く滑り込み、そのとき私はもう濡れだしていたんです。
 浴衣をはだけられパンティを奪われて、私は恋人がするよう
な愛撫の嵐に狂っていった。突っ込んで射精してハイお疲れさ
んみたいな男の性ではありません。尖ったピークのない、なだ
らかな快感がとめどなく続くのです。

「イッちゃうイッちゃう・・ねえダメよ、イッちゃうから・・」
「脚を開いて。逃げちゃダメでしょ」
「はぁい。ああん、そんな・・おかしくなっちゃう」
 性器に吸いつくように舐められて・・主人だったら絶対拒む
お尻の穴まで舐められて。そのときは舌と指のセックスでした
が、そのうちそれが腰につけるペニスに代わり、私は蹂躙され
ていったのです。嬉しい嬉しい陵辱でした。意識が抜けてしま
うほどのアクメ。そしてまたなだらかな愛撫に酔って、またア
クメ・・そんなことが続くのです。
 彼女の淫らな性器を可愛がってあげていて、娘もじきにこう
いう性花になるんだわって思ってしまった。

 狂いそう・・狂いそう。
 女性の慈愛の深さに、きっと私はおかしくなる。

 そして私は・・。

「やだママぁ・・変なことしないでよ」
「ううん、ちっとも変じゃないのよ。命をあげてもいいぐらい
愛しているから・・だからこうして可愛がってあげられる。母
と娘ならみんなやってることですからね」
「そうなの? ほんとに?」
「ほんとよ。ああ好きよ、愛してるわ・・あなたが好き・・」

 娘の可愛い喘ぎ声が聞きたくて、開かせた脚の間に顔をうず
める母親です・・。

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