快感小説

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着せたい男と脱ぎたい女(終話)

「ああ、それと」

 知明の面色から翳りのようなものが消えていた。
 いつものように、まったく普段どおりに穏やかに
笑う。家族の内情に引き込んでしまったことよりも、
正直にすべてを告げて、新しい関係に傷をつけたく
ないという気持ちが手に取るように見通せた。

「娘の部屋だが」
「あ、うん? 何か言ってた?」
「自由に使っていいですよって言っといてって。美
香はメロメロだよ君に。あんな清々しい人はいない
って背中を引っ叩かれたからね」
「そうなの? バシンて?」
「ああバシーンてね、クソ力で。はっはっはっ」
「来てトモ」
「お、おい?」

 亜紀は胸がいっぱいで、知明の手を取ると美香の
部屋へと引きずり込んだ。
 ぬいぐるみや人形がいくつも置かれた高一の娘ら
しい部屋。高一とは昨日まで中学生だったことであ
り、そのまま居抜けで寮に入ってしまったから中学
生の美香の思いが閉じ込められたような空間だ。

「私の彼女なのよ美香ちゃん。嬉しくて涙が出たわ」

 知明はしばらく語らず、ただ亜紀の二つの瞳を見
つめていた。

「あの子ってね、もちろんママが大好きで、ときど
き会ってるって言ってたし、だけどパパのことを想
うと許せなくなるみたいで、心がすごく揺れてるよ
うよ」
「うむ」
「それであの子ったら、私がハンパな女だったら叩
き出してやろうと思って来たんですけどって言って」
「うむ?」
「パパに愛される女のアソコを見ておきたいって」
 知明は絶句した。
「どうしても見たいって言うのよ。シャワーも一緒
にしたし、互いに素手で洗い合って、それから私、
ベッドで脚を開いて見せてあげたの。あの子の息づ
かいをアソコに感じた。きっと食い入るように見つ
めていたんだと思うわ。私だって女よ、私と同じ性
器よねって、キスしてくれた」
「そんなことを美香が?」

 亜紀は、知明を勉強机のピンクの椅子に座らせて
おき、静かに眸を見つめながら、ブラウスを脱ぎ、
スカートを脱ぎ、ストッキングも下着も取りはらっ
て全裸となった。
 知明は亜紀の心情を知ろうと懸命に眸を見つめた。

「よく見て、この体をあの子は抱いたの。レズだっ
た。私を愛し私に愛されてあの子も濡らした。それ
はね、あの子は、じつはママが好きで、そこを整理
しない限りパパの新しい妻と敵対するようになるっ
て思ったんでしょう。パパに愛されて、いつか歳の
違う妹か弟を産むことになる女の性器を見ておきた
いって」
「そんなことまで」
「そうよ、そんなことまでよ。でも大切なことだと
思うの。女同士で愛し合った。パパという同じ一人
の男性を愛する二人の女として仲良くしたいって。
私ね、トモ」
「うむ?」
「こんなことを私からは言えなかったし、いつもい
つも待ってるだけで受け身に、あっ」
 椅子を立った知明はキスで口を塞いでいた。

 触れ合うキス。そして、つつみくるむ抱擁。
 知明はそっと全裸の亜紀を抱き剥がし、亜紀は目
を丸くする。
「同じ男を愛する二人の女としてか」
「そう」
「尊敬できる人に育っていたんだな、美香の奴。ふ
ふふ、いつの間に」
 それからまた知明は全裸の亜紀をそっと抱き、耳
元で囁くように言う。

「一緒に生きよう。おまえが欲しい」

 知明は亜紀の背を押し、娘の部屋から連れ出そう
としたのだが、亜紀は首を振って抱きすがり、美香
が眠るシングルベッドへと知明を押し倒した。

「ここで抱いて。美香と私を一緒に抱いて。二人で
愛していこうと誓ったのよ。心から愛しています。
プロポーズも喜んで」

 涙を溜める亜紀。白い裸身が感動に震えていた。
 知明はちょっと笑ってうなずいて、白く美しい新
妻にキスを捧げていくのだった。

着せたい男と脱ぎたい女(十九話)

 翌日は日曜。休日でもくるみ茶房はやっていて、
美香は美香で、こっちへ来たついでに友だちと約束
があると言う。
 一夜を女二人で過ごし、朝には美香は家に戻る。
パパに朝ごはんを作ると言って張り切っていた。
 休日のくるみ茶房は平日より少し遅い十時半開店。
仕込みがあるから知明は九時半には入り、亜紀は開
店少し前に店に出る。亜紀は十五分前に入ったのだ
ったが、亜紀が覗いたとき店にはマスターしかいな
かった。いつもなら亜紀がするはずのテーブルセッ
トも整えられてできている。
「美香ちゃんは?」
「会わなかったか? ついいまだが」
「そう。会わなかったな」
「ホールはあいつが支度していったからコーヒーで
も飲んで休めばいい」

 それで亜紀は、いつものスカートスタイルにサロ
ンエプロンをしてカウンターの中に立つ。自分のコ
ーヒーで練習する。淹れるところをマスターが横目
にチェックする。
 と、知明は普段どおりの口調だったし物腰も変わ
らない。しかし亜紀はどことなく空気が違うと感じ
ていた。昨夜の濃密な愛を美香が言ったのではと亜
紀は思う。
「今夜ちょっといいかな?」
「あ、はい、かまいませんが」
「ウチでちょっと話したくてね」
 ドキドキした。
「もうちょっとだな」
「え?」
「コーヒーだよ。まだ落とし方にムラがある」
 なんだコーヒーのことか。胸が締め付けられる思
いがする。それでその日は上の空。時間が経つのが
遅く、しかし終わってみるとあっと言う間の一日だ
った。

 店を閉め、とにかく戻って遅い夕食。今朝方美香
がこしらえたというおむすびの作り置きがあった。
 今夜の亜紀は夕食など二の次だった。店を閉めて
からの知明の様子がやはり微妙に違ったからだ。
「聞いたよ。裸で抱いてくれたって言っていた」
「ごめんなさい」
「うむ? 何で謝る? 喜んでたぞー、美香の奴。
亜紀さん大好き。本気なんでしょうねパパって、睨
みつけて笑ってやがった。そのことじゃない」
 それにしても、どこまでを聞いているのか。亜紀
はやはり怖かった。あの後互いに求め合うレズラブ
に発展していったこと。抱き合って眠っただけでは
なかったからだ。
「話というのはね」
「ええ?」
「血液型のこと何か言ってなかったか?」
「血液型? いいえ、そんな話は一切ですけど」

 ふぅぅと浅い溜息をついて、知明は虚空を見上げ
るような素振りを見せた。
「じゃあ俺の考えすぎか」
「何なの? ちゃんと言って」
「うむ。いやな、見定めたような眸をしてたから、
もしやと思ったんだが。俺はO、母親はBなんだが、
美香は違う、Aだ」
 とっさに理解できなかったが、亜紀はハッとして
知明を見つめた。
「それってつまり?」
「そういうことだ。ごく稀に例外はあるようだが、
OとBからA型は生まれない。気づかぬふりでやって
きたんだが、五年前のことがあって、じつはそれで
許せなくなってしまった。このことは女房には言っ
てないよ。言ってないが、心の中のわだかまりを抑
えられなくなってしまった」

 それで事あるごとに衝突し、妻の側が不倫。その
頃はまだ中学生になったばかりだった美香は、母親
の不義が許せず父を選んだということだった。
 亜紀は言葉を探せない。ただ知明を思いやるだけ。
「美香は娘だ。縁あって一緒になった妻の子である
ことには違いない」
「それで奥様を問い詰めたりは?」
「ない。言えば家族を汚すことになる。娘はもちろ
ん妻だってそうだがね。ずっと胸にしまってきた。
妻はすでに過去の人だが、美香はやがて気づくだろ
うと怖いんだ。今朝アイツは言ったよ、私は亜紀さ
んの娘になりたいけれど、今度こそパパにとっての
妻を選んでちょうだいねって」

「今度こそって、そう言ったのね?」

 知明はうなずいた。それは実の母がパパの妻では
なかったと気づいたから言えること。
 と、そういうふうに、性的に開花した娘の変化を
父親は感じ取ったのかも知れなかった。

女は字間に

見分けようとする限りM女なんて得られない。
下心だったりするんだが、
あべこべに見分けられてしまうだろう。

行間に心があると言うだろう。女たちは字間にいる。
S字とM字のどっちつかずに、ほとんどの牝はいて、
男が良ければ女体はS字にしなるものだし、
行き着くところはM字開脚、セックスだろう。

お馬鹿さんは「お」をつけて口説くのさ。
おコラ、おてめえ、おケツ上げろ お突っ込むぞ。

女はね、嘘くさいお敬語なんてとっぱらい、
賢く見分けているんだよ。このシト、主の器かい?

器だったら、字間の女はM女になって従うだろうし、
器づくりにもがいているなら、それも女たちには
好ましく、S女になって厳しく教えてくれるだろう。

経験者は語るだよ。あの頃、俺は、
見分ける能書き、ページ食べ食べ覚えたものだし、
ホームセンター縄買って、枕縛った緊縛練習。
見分けるどころか見捨てられる愚行だよ。

お馬鹿だったと反省している。

着せたい男と脱ぎたい女(十八話)

 美香と亜紀は全裸のままで部屋へと戻った。一歩
先を亜紀に歩かせ、美香は亜紀のすべてを確かめよ
うと舐めるように体を見ている。

 ベッドには亜紀が先に腰を降ろし、その足下へ、
ちょっと残酷とも思える幼い瞳を煌めかせて美香が
膝を着き、脚を揃えて座っている亜紀の腿へと体を
あずけた。

「見せて。ごめんなさい。でも見たい」

 亜紀の尻に手を回して抱き撫でながら、美香は亜
紀を見上げて言った。
 亜紀は、そんな娘の頭を撫でて抱きくるむと、体
をそっとベッドへ倒し、片足ずつ引き上げてベッド
へ上げて、Mの字に性器を晒した。
 美香も興奮しているようだ。ハァハァと荒い息が
閉じたラビアをくすぐった。美香は目鼻の距離に顔
を寄せ、同じ女の性器の姿を見つめている。

 亜紀は両手で顔を覆っていた。

「恥ずかしいよね、ごめんなさい。でもいやらしい
わ。いやらしいけど女は素敵ね。ここをパパに愛し
てもらった?」
「うん」
「指で弄られて、そしたら濡れて、クリトリスもい
じられて、そしたらもっと濡れてきて、女の声を漏
らしたり?」
「そう。やさしくしてくれて、濡れて濡れて」
「そうなんだ。キスされたり舐められたりした?」
「した」
「指を入れられて、あぁんあぁんて?」
「うん、恥ずかしい声を上げてすがりついて震えて
た」

「大きくなったパパが入ってくるのね?」

「うん」
 亜紀は、そのときのことを考えて、美香に見られ
ている羞恥とが合わさって、濡れだす予感に震えて
いた。
「じゃあ、そのうちきっと、あたしとは十七、八も
違う弟か妹がここから出てくる?」
「そうなれたら幸せだわ」
「愛してるのねパパを? 心からよね?」
「愛してる。捧げたいほど愛してる」
「だから濡れるんだもんね? こうして触れられた
だけで」

「あ!」

 とっさに亜紀は腿を閉ざそうとしたのだが、美香
の舌が性器を分ける方が早かった。
「嫌だ、濡れてるみたい」
「み、美香、見るだけにして、お願いだから」
「ううん嫌。亜紀さん、あたしね」
「うん?」
「亜紀さんのこと好き。パパが好きになった人だか
ら半端な女じゃないだろうとは思って来たけど、気
に入らなければ叩き出してやろうと思った。亜紀さ
んならいい。いい女よ。パパに可愛がってもらえば
いい」

 美香のすぼめた唇が、すでに勃って飛び出したク
リトリスに吸い付いて、引き延ばそうと試みる。
「あぁぁ美香ダメ、感じて来ちゃう、ねえ美香ダメ
だって」
「可愛いわ。ほんとまっすぐな人なんだから。大好
きよママ。あたしのママ」
 ハッとして顔を上げたとき、陰毛の丘越しに美香
の涙を亜紀は見た。体の力が抜けてしまう。
「愛してますママ。あたしのためにおなかの中まで
見せてくれた。嬉しいの、ねえママ、嬉しいの。ず
っとずっと寂しかったの」
 体を起こし、泣きだした美香を抱きくるんでベッ
ドに上げて、そのまま抱き合い、深いキスを交わし
ていく。

 亜紀の愛が娘の肌を愛撫した。乳房も乳首も、成
熟した毛の丘を滑り降りた深部までも、亜紀のキス
は這いまわる。
 美香の愛は、いまはまだ閉じていた。しかし美香
は開花をせがむように亜紀の手を取り、静かに濡れ
る処女の花へと導いた。
「あたしにとってもママは愛よ。奪って。バージン
をママにあげる」
 亜紀は微笑み、そっと抱いて唇を重ねながら、娘
の蕾を静かに開いて花を咲かせた。

「ぁ、ぁン、ママ、ママ、あぅ!」

 真っ白な裸身を強ばらせ、かすかな痛みを感じな
がら、美香は亜紀とひとつに溶けた。

着せたい男と脱ぎたい女(十七話)

 触れ合うキスをそっとほどき、そのとき美香は何
を思ったのかパッと笑顔を見せて亜紀の手を引く。
 部屋から連れ出し、ダイニングに座ったままの父
親のもとへとずいずい亜紀を運んでく。
「ねえパパ、亜紀さん家へ行ってもいい? ちょっ
と二人になりたいんだ。そのまま泊まってくるかも
だけど」
「それはかまわんが?」

 どうしたと言うように知明は亜紀へと目を流し、
亜紀はちょっと首を傾げて曖昧に微笑んだ。
 知明だけを残して家を出る。そしたらそのとたん、
明るく笑っていた美香の面色が変化した。思い詰め
るような眼差しだったが攻撃色は感じられない。恋
人にすがるように腕を絡めて歩いている。
 何だろう? 亜紀は、まだ十六歳の美香が揺れて
いると感じ、しばらく思いのままにさせてやろうと
考えた。
 亜紀の部屋は1DKだが、DKなどますます狭い。
実質の1K。八畳ほどある一部屋がすべてを兼ねて、
それにKとバストイレがついているだけのもの。

 夜道は冷える。戻ってエアコンをスタートさせる
と空間が狭い分、ほどなく暖かくなってくる。
「紅茶? コーヒー?」
「紅茶にして」
「うん。すぐ暖かくなるからね」
 亜紀は部屋続きのキッチンに立って飲み物をこし
らえる。その間美香は、ブルーのカバーできっちり
メイクされたシングルベッドに腰を降ろして部屋の
中を見渡していた。
「ここへはパパは?」
「うん、二度ほどね」
「ふーん。そのときもエッチしたでしょ、ンふふ」
 応えにくいことを訊く。赤裸々な話をし過ぎたか
と、このとき亜紀は後悔した。

 ベッドサイドに折りたたみのローテーブルを出し
て、紅茶を二つ、差し向かいに置いたのだったが、
美香は亜紀のカップも自分の側に引き寄せて、ベッ
ドをぽんぽんと叩いてこっちに来てと仕草で言う。
 このとき亜紀は店から回ったそのままのスカート
スタイル。美香は家で着替えてホワイトジーンズを
穿いていた。
「お話って何かな?」
 隣りに亜紀が座るのを待ち構えていたように、美
香はすがりついてキスをせがみ、ずっと歳上の亜紀
を押し倒して上にかぶさり、キラキラした瞳で微笑
んで、きょとんとする亜紀を見つめる。
「どうしたの? 何するの?」
「抱いて」
「え」
「亜紀さん言ったじゃない、パパを好きな二人の女
だって。あたしね亜紀さん」
「うん?」
「パパが愛した人がどんな体か見てみたい。パパを
想って濡れたアソコを知っておきたい。あたしはま
だバージンよ。だけどきっとあたしと同じアソコで
しょ。ねえ抱いて」

 母親の温もりに飢えている? ちょっと違うと亜
紀は感じた。女として同じ一人の男性を愛するもう
一人の女を知っておきたい。生涯敵対しないと見定
めるための抱擁。それをこの子は裸同士で交わして
おきたいと思っている。
 亜紀は、上にかぶさり見下ろして笑う美香の瞳に
燃え立つような女の情念を見切っていた。
「その前にシャワーさせて」
 美香はうなずいて亜紀を降り、ベッドから抜け出
ていく亜紀を憧れるような面色で見守っていた。
 脱衣に立って脱ぐ。スカートはハンガーへ。白い
シャツは、そのほかまとめて洗濯機。
 亜紀は全裸。そしたらそのとき、部屋で脱いで裸
になった美香がすぐ後ろに立っていた。

 Cサイズほどの綺麗な胸。白く透き通る若い肌に
下腹の茂みが黒々とアクセントをつけている。悔し
いほどの女体。十四歳の差は決定的に現れる。
「一緒にいいでしょ?」
「いいわよ。綺麗よ美香ちゃん」
「ちゃんなんていらない、美香って言って」
「うん。じゃあ美香、入りましょ」
「はいっ」
 美香は羞恥に頬を赤くしながら亜紀の裸身にまつ
わりついた。吸い付くような若い肌。強い芯のある
娘の乳房は亜紀の熟れた乳房を追いやるように潰し
てしまう。

 シャワーの下。熱めにした湯があっという間に白
いタイルの浴室に霧を生む。霧の中で雨に打たれて
抱き合って、互いにタオルを使わず手の中でソープ
を泡立て互いの裸身を洗い合う。
 流すときにまた抱き合ってキスを交わす。歳は違
っても美香は大人。女としての愛に挑む凄みがあっ
た。

着せたい男と脱ぎたい女(十六話)

「そうなんだ。運命よね、それ」
 ピザをほおばりながら美香は言う。
 知明の家は古いタイプの2DKで、部屋が二つに
DKなのだがLDKと言えるほどリビングが広くな
い。三人でいると狭い。ダイニングテーブルに揃っ
て座る。
 中学の音楽教師だったことから話がはじまり、そ
もそもの出会いの場面になったとき、美香の方から
それを運命だと言う。中学生を相手にしていていま
の子たちの発想がわからないわけではない。しかし
美香の言う運命には、どうしようもない出会いに憧
れる少女の想いとは異質の響きがあった。
「あたしね、ママにもときどき会ってるの。元気よ
ママ。あたしにそっくり。てか、あたしがそっくり
なんだけど」

 亜紀は問う。
「ママのこと好き?」
 針のムシロとまでは思わなかったが、このとき亜
紀は、きっぱりとした美香の挑戦を感じていた。
「そりゃ好きよ、ママだもん。だけどあのときは同
じ女としてがっかりしちゃった。当たり散らしたパ
パも悪かったんだけど、苦しかったパパの気持ちは
よくわかる。そんなときこそ夫婦でしょ。なのにあ
の人、外に救いを求めてしまった。卑劣より何より
不潔に思えて」
「そう」
「だけどあたしだって大人になってく。ママにはマ
マの気持ちがあるし、パパにもパパの気持ちがある。
同じように、いまではあたしにはあたしの気持ちが
あるんです。パパにもママにも幸せになってほしい
けど、あたしにも幸せはあるでしょう?」
「そうね、そう思うわよ」
「それを訊きたかった。だから会いたいってパパに
言ったの」
「訊きたいって何を?」

 そこで亜紀は、手にしていたピザを置いて、テー
ブル越しの亜紀を鋭く見つめた。
「パパが幸せならいい。とやかく言う権利はないと
思うの。訊きたいのは亜紀さんの気持ちよ。パパと
そうして巡り合って、いまはお店も一緒にやってい
て、でもそのうちにはまたピアノの先生になるんで
しょ。亜紀さんにとってパパとの時間てどんなもの?」
 返答に困る。
「ううん、あのね亜紀さん」
「うん?」
「同じ女として訊きたいのよ。パパといてほんとに
幸せ? 迷いなく生きて行ける?」
「美香、そうはっきりと言うもんじゃ」
 美香はきりりと知明に視線をなげた。
「いいの、パパは黙ってて。女と女の真剣な話なん
だから。あのね亜紀さん」
「は、はい?」

 娘としての正直で懸命な問いかけだった。
「あたしのことなんて想ってくれなくていい。ママ
じゃないんだし永久にママにはなれない。上辺だけ
ママよと言われてもあたしはきっと逆らうわ。だか
らあたしのことなんて気にしないで。もしあたしな
ら、娘から引き裂くつもりでパパを奪うと思うのよ。
好きですとか尊敬してますなんて体裁のいいことは
聞きたくない。あたしを蹴散らしてでもパパを奪う
覚悟はある? 女が本気になったとき娘だってライ
バルよ。そうでしょう? そういうことなんじゃな
い、女を貫くって?」

 亜紀は吸い込まれるように聞いていた。
 知明は、いつの間に女になった我が子の姿に見と
れていた。そして亜紀がどう言うか。知明はただ黙
って女二人を見守った。

 しかし亜紀は嬉しい。本気で牙を剥いてくれてい
る。
「怖かったのよ」
「え?」
「だから怖かったの。知明さんと壊れてしまうこと
じゃなく、あなたに対して冷酷に、いえ残酷になっ
てしまう私自身が怖かったのよ。でもね美香ちゃん、
勘違いしないでね。あなたのパパとそうなれるなら、
あなたが何と言おうと私にとってもあなたは大切な
存在よ。ママではない。そうじゃない。大切にして
いきたい同じ女。愛した人の宝物は私にとっても大
切なものだから。じゃあ私も言うけどいい?」
「うん、いいよ、聞かせて」
「あなたは娘ではありません。私だって母じゃない。
知明さんを想う二人の女。知明さんが好きだから私
たちはうまくいく。それともう一つ、これもきっぱ
り言っておきます。男としての知明さんに必要なの
は娘じゃないの。嬉しくて震えながら抱かれていく
女なんです。嬉しくて嬉しくて、たまらない想いに
震えながら、体を開いてあげる女なんです」

 美香は声を失った。眸を潤ませて見つめてくれる
亜紀の姿に圧倒された。パパに対して女になれるの
は私じゃない。思い知って声をなくした。
「パパ、ちょっといい?」
「それはいいが、どうするつもりだ?」
「二人になりたい。私の部屋で話していい?」
 父親の返事を待たず、美香は亜紀の手を取った。

 ドアを開けると冷えていた。明かりをつける。十
六歳の娘の空間。ぬいぐるみや人形がいくつもあっ
て、小さな頃からの写真が何枚も貼られてあって、
その中に知明と見知らぬ美人、そして小さな美香と
の写真もあった。
 ぬいぐるみや人形のほとんどは、おそらくママが
買ってくれたもの。この部屋に美香は母との時間を
閉じ込めていたようだ。
 部屋を見渡し、「一度だけね」と亜紀は言った。
「え? どういうこと?」
「お部屋に入るのは一度だけ。ねえ美香ちゃん」
「はい?」
「ママとの時間は宝物よ、大切なものだからね」

「ごめん。ごめんなさい」
「美香ちゃん」

 閉ざした扉の内側で、それはつまり美香の心その
ものが詰まった部屋の中で、美香はすーっと流れて
亜紀の胸を求めていた。抱きすがって声もない。泣
いてはいない。辛くあたった自分が苦しいのだと亜
紀は思った。
 抱きすがる美香を二の腕を押して引き剥がし、円
な眸を必死に見つめた亜紀は、そっと唇の触れ合う
キスをした。
 美香は目を丸くする。
「これが私よ。裸にした私の心」
「はい。ごめんなさい、あたしちょっと言い過ぎま
した」
 亜紀は微笑んで抱いてやる。
「とんでもないわ。他人行儀じゃなく接してくれて
ありがとう。嬉しかった。本気だもん美香ちゃんて」

 抱き締めながら夢見るように亜紀は言う。
「怒らないで聞いてね」
「うん。なあに?」
「ホテルに泊まって抱かれたの。はじめて一晩一緒
にすごした」
「うん」
「そのとき私ね」
「うん?」
「恥ずかしいけど濡れて濡れてどうしようもなかっ
たの。何をされても言われても濡れて濡れて、おか
しくなりそうなほど感じてしまってイッてしまった」
「そ、そうなんだ?」
「そう。あのときの私は牝だった。狂うかと思うほ
どよかったわ。体じゃない。心が感じて体が濡れた。
熱い彼が入ってきてね」
「あ、うん?」
「溶けちゃった。何もかもが溶けちゃった。おまえ
は何も背負うな。亜紀らしく。そう言われて私、体
が濡れてべちょべちょだった。牝だったのよ、その
ときの私って。強い牡に巡り合い、クラクラしなが
ら抱かれてた。いやらしい女でしょ。だからね美香
ちゃん」
「はい?」
「私なんてそんなものだと思ってて。淫乱だわよ。
彼に対して四六時中濡らしているような女なんです」

「うん、わかった。パパをお願い」

 そのまま二人は抱き合って、触れ合うキスをかわ
していた。

着せたい男と脱ぎたい女(十五話)

 結婚を前提にしない。それは次の相手が誰であろ
うと、そこから引き返したときに決めていたことだ
った。夢ではない現実にある女のワンステップ。三
十歳まで遠くない亜紀にとって結婚がそういうもの
であっただけに、考えてしまうと打算につながらな
いとも限らない。遊びではない想いだけで充分だっ
たし、むしろその方が気が楽だった。
 数日が過ぎていく。店が楽しい。二人で創りあげ
る作品のような時間が嬉しい。マスターとのことは
もちろん、お客に囲まれて笑っていられる和やかな
雰囲気に身を置いたことがない。個人の喫茶店だか
ら余計なマニュアルに振り回されることもなかった。

 互いに独り暮らしなのだが、そこは一線引いてお
く。どちらかに泊まる癖がつくとなし崩し。外で会
い、互いに遊びに行くのだが、歩いても二十分ほど
の距離であり、泊まらず帰る。
 けじめ。大人のスタンス。いいや違う。亜紀にと
って踏み切れない気持ちがあった。娘の美香に会え
ていない。隠れてこそこそしているようで悲しくな
る。知明との関係を後ろめたいものにはしたくない。
 知明もそこは考えてくれている。高一は揺れる時
期だし、すり合わせを誤ると壊れかねないと、父と
しての責任にもとずいて考えている。
 ますます好ましかった。美香は十六。まさしく親
子ほども歳の離れた弟か妹ができるということは穏
やかではいられないし、実の母への想いがどうなの
かも考えてやらなければ可哀想。
「いまは言うな。それも含めて何も背負うな」と言
ってくれた強い言葉を信じていた。

 そして土曜日。休日は昼前ぐらいから混みだして、
日によっては夜までお客が切れないものだ。休日で
もランチメニューはあり、若いお客ばかりに囲まれ
て余計なことを考えている暇もない。
 亜紀は知明との夜からこちら、上はブラウスか襟
のあるシャツと決め、下を合わせた。ミニスカート
かパンツなのだが、教師だった頃と大差ない、どこ
へ出ても恥ずかしくないスタイルを通していた。
 エプロンをするから適当でいいよと言われていた
が、くだけ過ぎたスタイルにはなりたくない。
 胸を張って誇っていられる男性よ。尊敬の思いが
そうさせるの。もちろん口にはしなかったが、お客
に対してマスターの凄さを表現したいという気持ち
がある。ベッドタウンでも常連ばかりではない。私
を見て彼を知って。それは知明を愛した亜紀のプラ
イドのようなものだった。

 しかしその日、七時を過ぎたばかりの時刻なのに
マスターは店じまいの支度をはじめる。早過ぎる。
「娘を呼んだ。じきに来る」
「あ、はい。でもそれは?」
 聞かされていなかった。
「電話でちょっとね。会わせたい人がいると言った
ら行くと言って」
 怖かった。青ざめていく自分をはっきり感じる。
 チリン。ドアベルが鳴ったとき、亜紀はホールの
掃除にかかっていた。
「いらっしゃいませ」
 とっさに言って振り向いた。娘の美香がそこにい
た。全寮制の名のある私立の女子学園。色の浅い髪
染めを許さない厳しい校風。栗毛を濃くしたような
ほとんど黒髪。背丈も亜紀ほどと大人の体。ジーン
ズミニだがフードのあるグレーのダッフルコート。
 目鼻立ちの整った綺麗な子だが知明には似ていな
い。それもまた怖くなる。母に似てくる自分の姿を
思春期の娘がどう感じるのか。

 美香は、入るなりチラリと目をやって浅く頭を下
げ、カウンターの前に来て小さな手提げ袋を父に渡
した。お土産でもあるのだろうと亜紀は思う。
 そしてそのままカウンターに座り、亜紀がお冷の
グラスをそっと置く。手が震えた。美香は明らかに
よそよそしい。
「こちらが亜紀さんだ」
 美香は微笑んでうなずくと、そのときはじめて身
をずらして亜紀に向かった。
「はじめまして、娘の美香です、お話は少しだけ父
から」
 微笑んでくれてはいるが眸が笑っていなかった。
「亜紀です、はじめまして。マスターにはお世話に
なっています」
 膝が震える。射すくめるような静かな視線。
「さてと。じゃあ亜紀ちゃん、シャッターを。早く
閉めて出よう。今夜はピザでもとろう。美香の好物
でね、ウチに帰って一緒に食べよう」

 寒気がする。外で食べるのではない。父と娘の家
に呼ばれて一緒に過ごす。それは美香に対する正式
なメッセージということだ。
「あたしが言ったの、そうしようって。学校がうる
さいのよ。親の家に帰るんなら土日は自由にしてい
いんだけど、いちいち親のサインがいるのよね」
「あ、そうなの?」
 美香の視線はまっすぐだった。あなたのために呼
び出されたのよ。どういうこと? と、問い詰めら
れているような気がしてならない。

着せたい男と脱ぎたい女(十四話)

 ミルク色した霧が流れていくような朝だった。
 身動ぎしたとき自分とは違うぬくもりに触れ、亜
紀は、そういえば今朝は独りじゃないと昨夜の愛の
時を思い出す。知明はまだ眠っていた。けれどもそ
の寝姿に知明の背負った痛みがどれほどのものであ
ったのかを思い知る。
 子供が眠るように裸身を丸め、両手で拳を握って
胸に抱くようにする。それはかつて私自身がそうだ
ったと亜紀は記憶をたどっていた。怖い夢を見るこ
とがあって目が覚めると、こうして拳を握って胸に
抱いていたものだと。本能的に守ろうとする防御の
姿勢なのかも知れない。
 亜紀は丸くなる男の裸身に身を寄せて後ろからふ
わりと抱きくるむ。熱いほどのぬくもりが伝わって、
まるで我が子を抱くような気分になれる。女はそう
なのだ。女の愛とは男の中にとても勝てない脆さを
見つけていくことだと思っている。

 丸まっていた子供は亜紀の体のやさしさを感じる
と、すーっと体をのばして握り締めていた拳もほど
き、大人の寝姿へと変わっていった。
「起きた?」
「よく眠った。どれぐらいぶりだろう」
「私も。沈むように遠のいて、滲むような朝が来た」
 女は男の胸に頬をゆだねて小さな乳首にキスをす
ると、そのまま肌を滑り降り、濃い毛の中に埋もれ
るように萎えているやさしいペニスにキスをした。
 唇をちょっと湿してやわらかな先をくわえ、吸い
込むように口の中へと導いていく。
「愛してる」
 ふわふわとした雲のような羽毛の中でそんな男声
を聞いたとき、亜紀はハッとするように目を見開い
た。昨夜の情交は愛だった。愛していますと気持ち
を告げた。そのことへの応えをもらったような心持
ち。ゆうべのセックスは錯覚じゃなかった。果てて
しまい気を失った夢のようなセックスだった。

「あなたが好き」
「うむ?」
 亜紀は布団の中で囁いて、知明は亜紀が何かを言
ったと問い返した。
「もうっ、また大きくなってきた」
 反応をはじめた男性を吐き出して、ぽんと叩き、
体を這い上がって布団から顔を出したとき、すがす
がしいほど冷えた空気が頬を撫で、亜紀は満面の笑
みとなる。
「何が可笑しい?」
 微笑みながら二の腕をつかまれて、体をたやすく
浮かされたと思ったら、男女の上下が入れ替わって
抱かれている。夢中で抱きすがる。やさしいけれど
も強い抱擁。亜紀はまた身震いをはじめる体をどう
することもできなかった。
 男の手がデルタの草むらをこえていきなり性器に
蓋をする。蓋をするように熱い手が性器にかぶさっ
てくる。亜紀は腿を開き切って手を許し、男の体に
抱きすがる。

「亜紀」
「はい?」

 抱擁を解いて見つめ合い、しかし知明はちょっと
笑って言う。
「呼んでみただけだ」
「ふふふ、なんだよー、もうっ」
 体をちょっと浮かせた男に抱きすがると、女の体
がベッドから浮いてしまう。
「いつかまた行こう」
「どこへ?」
「あそこ」
「あそこ?」
「ここ」

 性器を塞ぐ指先が蠢いて、閉じた花を揉むように、
そして花を蹂躙し、熱く濡れだす体の中へ。亜紀は
甘く泣くような声を上げた。
「行きたいね、また」
「ああ行きたい。妙な宿だったがあの海は最高だ」
「うん。ねえねえ」
「お?」
「濡れるの。あたし濡れるの。どうしてかしら?」
 男の体が滑り降り、開き切った中心で咲き誇る濡
れ花に口づけしながら、二つの乳房を手にくるむ。

 亜紀は、乳房の柔肌を揉み上げる浅黒く強い手を
交互に見つめ、目を閉じて、甘いあえぎを口ずさむ。 

着せたい男と脱ぎたい女(十三話)

 軸のない女心に強い芯が刺さるように知明の勃起
が体の奥へと入ってくる。
 ベッド。鋼のような男の体は腿を開き切った亜紀
の上にかぶさって、亜紀はあまりの悦びにあえぎな
がら腕をまわして抱きすがる。意識が消えていく快
楽。二十九にもなってはじめて味わう絶頂だったが、
亜紀には浅くしか達しなかった理由はわかりきって
いた。
 子犬が震えるように小刻みに揺れた女体に引き攣
るような力がこもり、背を反らせて乳房を突き上げ、
強い男をリフトするようにアーチに反って、最後の
一瞬、悲鳴にも似たソプラノを一声奏でて亜紀はの
びた。

 のびた。ノックアウト。まさしくそんなピークだ
った。白くなっていく意識に七色の光が飛び交った
次の瞬間、漆黒の闇が来た。息もできない。あふあ
ふと口を開けるが息が吸えない。
 セックスではじめて失神した亜紀だったが、男が
萎えてヌルリと抜けていく感覚に、無我夢中で虚空
をひっかくようにして、亜紀は離れていく男の体を
追いかけた。一瞬の失神。目覚めたときには揺らぐ
視野の中に七色の星がチラチラ舞った。
 女を降りて仰向けに倒れて横たわった男の上に亜
紀は死に物狂いで這い上がり、自分を失神に追い込
んだ男の存在を全身の肌感覚で確かめようとした。

「知明さん」
 息が荒く声が長く続かない。酸欠。胸を開いてす
ぼめて呼吸する姿は、溺れて岸に這い上がったとき
のように恐怖さえも伴うもの。息ができない。
「はぁぁ、はぁぁ、んっ、ぁはぁぁ!」
 亜紀は笑った。自分がひどく滑稽でちょっと笑っ
た。笑いながら中途半端に長い男の髪を手ぐしで梳
いて、右の頬の傷を見つけ、声もなく見つめている。
 頬骨から頬、頬から顎の横まで、焼けただれた引
き攣れが残っていたが、醜くひどいというほどでも
ない。亜紀は傷をそっと撫でて、知明と目を合わせ、
微笑んでキスをせがんだ。

「気にしてるわけじゃない」
「うん」
「喫茶店だからね、知らない人が怖がるだろう」
「うん」
 傷を撫で、傷に沿ってキスを這わせた。
「素敵です。カッコいいと思います。あたしね、は
じめて逝ったわ。セックスではじめて逝くって感じ
がしたの」
 知明はちょっとうなずき、亜紀の頭を抱き寄せよ
うとしたのだったが、亜紀は頭を振って手を拒み、
胸板に這い上がって知明の二つの眸を見つめていた。

「ずっとそう。ずっと前からずっとそうなの。好き
な人ができてもね、ダメになったときのことが先に
立ってのめり込んでいけなかった。のめり込んで壊
れたらあたしはきっと崩れてしまう。そうやってガ
ードして、ガードしながら抱かれていても浅くしか
感じない。ずっとずっとそうだった」
「亜紀、もういい」
「ううん聞いて。聞いて欲しいの。彼と決定的に壊
れたのは半年ほど前ですけれど、最初から打算の混
じる愛だった。ここで壊れたらあたしはもう若くな
いって思ってしまい、だけどイザとなると、壊れる
ことは目に見えてる、届けを出す前のいまなら引き
返せるって思ったの」
「うむ」
 知明は亜紀の頭をそっとそっと撫でながらまっす
ぐ目を見て聞いていた。

「いまは違う。あなたが好き。壊れてもしあたしが
崩れたって、ベッドで失神した記憶だけで生きて行
ける。そう思うの。運命には逆らえない。あなたが
恐ろしい火に立ち向かったように、あたしようやく
その気になれた。愛してますあなたを」
 信じ難いほど強い言葉だと思いながら亜紀は言い、
強い言葉だと感じながら知明は聞いていた。
 抱き寄せようとする腕に今度こそ従って亜紀は男
の胸に頬をあずけた。くっきりと強い心音が鼓膜に
届く。

「うむ」

「え?」
 胸の奥から響く声に、亜紀は一瞬にしてうとうと
していたことに気づく。心の底に堆積していた汚物
がきれいさっぱり流されて、ただ安堵につつまれて
いる。
「寝ちゃったみたい」
「ふふふ、気が済むまで枕にしてろ。髪を切る」
 唐突と言う。亜紀は顔を上げて知明を覗き込む。
 知明は虚空を見つめ、しかしその双眸には強い意
思がみなぎっているようだった。

「いい女だ」
「いい男だ」

 二人は微笑み合って抱き合って、揃ってそのまま
沈むように眠っていった。

着せたい男と脱ぎたい女(十二話)

「なんで中央高速?」
「ううむ、しまったことをした」
 海へ行くはずだった。この時刻、府中あたりから
なら中央道が近かった。間が抜けていると亜紀は笑
う。
「あの夜を思い出してね。あれだけの海を見たんだ
し、そこで亜紀と出会えたんだ。都会の海など悲し
くなるだけ」
 意識して海をはずした。一度は笑った亜紀だった
が、知明の想いの深さを感じたような気がしていた。
 季節がよければ富士五湖あたりもよかっただろう
が、冬の雨では冷えすぎる。行き先なんてどこでも
よかった。クルマに長くいたくない。
 談合坂SA。食事のこともどうでもよかった。冷た
い雨の夜。パーキングにトラックばかりが目立って
いた。軽く食べてクルマに戻ると、あれだけ効いて
いたヒーターだったのに車中はすでに冷えている。

 エンジンをかけて温もる風を吹き出させ、しかし
すぐにはスタートせずに、知明はシートを倒し、亜
紀もまた見習った。
 そこら中のトラックがエンジンをかけたまま。デ
ィーゼル独特のメカノイズがガラスを透かして入っ
てくる。
「アイツの悲鳴が消えてくれん、どうしても消えて
くれんのだ」
「わかるわ」
「奥さんは臨月だった。その子がもう五歳になる。
アイツの悲鳴が消えてくれん」
「うん」
 亜紀は身を横寝にし、ヘッドレストに両手を組ん
で虚空を見つめる男の胸に手を置いた。どきりとす
るほど厚い胸板。鍛えられた強い体を亜紀は感じた。
 あふれる想いがあるのに声にすることができなか
った。何かを言えば泣きだしてしまいそう。私が泣
いてどうするの。苦悩を噛むような知明の横顔を見
つめていた。

 河口湖を一望するホテル。しかし降りしきる雨が
ガラスを濡らし、湖面に霧が立ちこめて白い闇をつ
くっていた。
 談合坂から走り出し、ここまでの間に話したこと
を亜紀は覚えていなかった。声を聞いた記憶はあっ
たが、亜紀は結婚を引き返した自分のことで頭がい
っぱい。整理できずにじつは散らかっていた感情を、
ホテルに着くまでに一掃したい。心を白くして抱か
れたいともがいていた。

「白い闇」

「うむ、綺麗だ」
 窓際に立つ亜紀の背に知明は身を寄せて、そっと
後ろから抱いていた。乳房の上下に腕を回され、薄
いブラウスが張り詰めてブラ越しの乳房を際立たせ
ている。
 髪の毛がそよぐように退けられて耳にそっと唇が
寄せられた。
 目を閉じた。甘い震えに襲われて、心から一切の
力みが消えていく。

 腕包みにもがくように身を回し、ガラス越しの光
の滲みを男の眸の中に見つめ、ふたたび亜紀は目を
閉じて口づけをせがんでいく。
 やわらかな抱擁だった。唇が触れ合って、互いに
ゆるみ、舌の絡まる性のキスに変化していく。
 抱かれてキスを受けている。それだけのことなの
に、亜紀はこれまで感じたことない酔うような心持
ちとなれていた。
「先に行って、お願い」
 微笑んで男は離れ、浴室へと去って行く。

 ブラウス、タイトなミニスカ、ストッキング。
 黒の上下が白い亜紀に映えていた。下着までを脱
ぎ去って亜紀は浴室へと歩んで行った。
 窓際でそっと抱かれてキスをかわした。それだけ
なのに亜紀の想いは激しく性器を濡らしていた。

 すりガラスのドアを開けた。シャワーの雨音が強
くなった。黒いタイルの浴室が湯気でもやり、その
中に浅黒い強い男が立っていた。
 背後の気配に気づきながら男は背を向けて振り向
かない。長身というほどではなかっただろう。けれ
ども体は鋼のよう。背から腰へと逆三角に筋肉が浮
き立って、硬く締まった尻へとつながる。
 亜紀は見とれた。戦う体。そうとしか思えなかっ
た。後ろからシャワーの雨にぐぐり込み、男の後ろ
姿に抱きすがる。

「あたしね、すごいの。キスされただけなのに、あ
たしすごいの。濡れてるの」

 男は振り向き、女を抱き寄せ、激しく抱いて唇を
奪っていた。背を撫でられ、やわらかな尻に手が這
って、女の手は男の欲情を喜ぶように勃つものを握
り締めて抱かれていた。

 唇を奪われながらシャワーの雨に女は涙を流され
て、男の手が草むらへと分け入って、女心のあふれ
るところへ差し込まれ、その一瞬、亜紀はブルルっ
と身震いし、目眩のような酔いに浸った。

 男の体を撫でていた。苦悩のすべてに手を這わせ
てあげたくなった。女の体が男を這って膝をつき、
目の前に屹立する欲情に、亜紀は舌を絡めていった。

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