爽やか不倫 風をきって(八話)

 娘らに見せられない下着が増えていた。洗濯にも困ってしまう。
 ひらひらのスカートも、そこあっても不思議はないけど普段はちょ
っと着にくいもの。見ているだけでも嬉しくなるもの。
 明子は、それらを明日着られると思うだけで高揚する心を抑えられ
なくなっていた。夫の単身赴任が正式に決まった。大阪支社。短くて
も向こう一年、長いと二年は家を空ける。
 夫に申し訳なく思うより、指折り待つ気持ちの方が強かった。

 一月二月と過ぎていく。春風が北風を追いやって、夏のウエアで自
転車に乗る。彼の前を走っていく。蠢く尻を見られることさえ明子に
とっては喜びだった。諦めかけた女の日々が、いま確かに戻って来て
いる。そんな想いが、たとえば街で真っ赤な下着を見つけても、素通
りせずに手に取って見てみようと思わせる。

 その水曜、明子は夕食の支度を済ませて家を出た。茶房・風の色は、
普段なら八時まで。けれども今日は六時で閉めて後片付け。明日の
定休日から二日間、改装工事で店は休み。そのために今夜は手伝う
ことになっていた。浜島はクルマで来ていて、食器なんかを一旦自宅
に持ち帰る。子供らにもそのことは伝えてあった。お友だちのお引越し。
今夜は遅くなるかも知れないよと。
 夫は近頃妙にやさしい。それも明子は、単身赴任で家を空けること
への罪滅ぼしだと思っていた。寂しくなったら戻って来る。これまで
冷たくしたことを謝ってくれるなら、彼の次に抱かれてあげると思っ
ている。我ながら自分の変化が可笑しくなるほど、明子は女の自信に
満ちていた。

「あら、もうほとんど終わってるみたいね」
「六時に閉めるはずが五時で終わった。どうせ暇だし。ウチのコーヒ
ーって、まずいのかもな。ふっふっふ」
 相変わらずののんびりした笑顔を見ているとほっとする。明子はい
つものカウンターに、今夜は浜島と並んで座った。シャッターは降り
ていた。改装工事で休業しますと貼り紙がつけられて。
 コーヒーはサイフォンが片付けられて作れなく、冷蔵庫のオレンジ
ジュースを飲んでいた。
「アッコと出会った店がなくなるようで・・」
「そんなに変わるの?」
「そうでもなけど、このカウンターはそっくり変わる。ミニを穿いて
そこに座るアッコのことを、こっちから覗けるようにするんだよ」
「ばーか!」
「ウソだけど・・うははは」

 ジュースを口の中に含んでおいて、明子は自分の唇を指差した。浜
島の唇が重なった。口の中からジュースを追い出し、男にそれを飲ま
せてやった。浜島の喉がごくごく動く。
「美味しい?」
「馬鹿もん」
「うふふ、よちよち、いい子でちゅねー、うふふ!」
 唇がふたたび重なった。カウンターの椅子に座り、体をそっくり浜
島にあずけておいて、舌の絡まる深いキス。背筋に震えの伝わる口
づけだった。

「おいで」
「なに?」

 店の奥。といってもすぐそこで、明子はボックス席のテーブルに両
手をつかされ、後ろから尻をキツく抱かれていた。今夜は長めのフレ
アスカート。男の手がふわりとそれをまくり上げ、白い尻をかろうじ
てくるんでいるピンクのショーツを、無造作に腿まで降ろしていく。
「ああダメよ、こんなところで・・ねえダメだって・・」
 恥ずかしがって尻をすぼめる女の後ろに男がしゃがみ込み、真っ
白なふたつの桃にキスをして、桃を左右に割りひろげ、舌先が尻の
谷の奥底へと這ってゆく。

 感じる・・感じる・・おかしくなりそう。

「ひッ」
 男の尖らせた舌先が、蜜の花をめがけるときに一瞬アナルに触れ
たとき、明子は全身をわなわなと震わせた。そしてそんな女の快楽
反射を楽しむように舌先がすぼまった菊の花を愛撫する。
「ぁぁん、そんなとこ汚いから・・ぁぁん!」
 逃げようと尻を振り立てても白い桃を左右から挟みつける男の力に
抗えない。
「ねえ嫌ぁ・・ヤん・・ぁあーん!」
 ショーツが腿にとどまって開かない太腿をそれでも開き、尻を突き
上げ、舌先を濡れそぼる蜜の花へと、明子は誘った。
 男の舌が淫裂をぬるりと這って、ぴちゃぴちゃ音をさせながら花び
らを掻き分けて女の中に没していった。

「はッはッ・・んッんッ! いい! 気持ちいい!」
「あきこ」
「いいの・・あぅうう、感じるぅーっ!」
 あきこと名を呼ぶ声とともに熱い吐息が花園に。
 そして、ベルトのバックルを外す金属音が・・。
「来て、早く来て」

 熱を持って勃ち上がる亀頭の先が蜜花と触れ合って、明子はさらに
尻を上げた。腰が反り、背が反り返り、髪を乱して首が反る。
「ぁうッ! んむむーっ!」
「あきこ」
「く、くにさん、いいの、いいの・・ぁぁん、いいのーっ!」
 両手でテーブルの天板をつかむ明子の体が、ぶるるぶるるっと震え
だし、テーブルががたがた揺れた。
「いくいくいく・・イクぅーっ!」
「むっほ、むっほ、むっほっほッ」

 むっほっほ・・て、あなたは猿か・・。
 かすかな微笑を浮かべながら、明子は、若くはない女体を欲しがり
楽しんでくれている男のことを可愛いと感じていた。
 明子は体を起こし、男の茎を抜いておいて、足元に膝をついた。硬
い男の尻を抱き支え、ぬらぬらとぬらめく熱いペニスをほおばって、
舌を絡めて愛撫して、喉の奥へと飲み込んだ。
「あきこ・・あきこ・・愛してる」
「くごわん」 クニさんと言ったのだけど言葉にならない。
「いっぐいいぐの」 イッていいのよと言ったのだけど言葉にならな
い。

 男が腰を打ちつけて、女の明子に吸い上げられて、白い飛沫が噴
き上げた。ドクドクと脈打つ射精。わずかに痙攣する男の尻。悦びの
笑みを浮かべて男のアクメを受け入れて、明子はそれでもむしゃぶり
ついて放さなかった。

「ただいま」
「あ、ママだぁー!」
 下の娘が駆け寄ってくる。まだまだ幼いいい子だわ・・明子は母の
顔に戻っていた。時刻は十時。浜島との熱い余韻がショーツの底を
濡らしている。
「パパは?」
「まだなのぉ」
「あらそう。お姉ちゃんと二人でちゃんとご飯食べた?」
「うん! お片付けもしてあるよっ!」
「あら、いい子いい子、うふふ」
 頭を撫でて抱いてやり、寝室に回ってバッグを置くと、子供らを安
心させるいつものイチゴ模様のパジャマに着替え、明子は浴室へ入
って扉を閉ざした。
 鏡の中の白い肌にキスマークなんてついてない。乳房にも尻にも、
ちょっとした傷もない。セックスの痕跡は持ち込めない。ショーツを
脱ぐとき、濡れのあるのに微笑んで、けれどもピンクの布を握り潰し
て手の中へ。下だけ洗ってしまえば今夜のことは完全犯罪・・。
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