陵辱官能 鬼祭(一話)

「ねえ、このあいだの話考えてみた?」
「え・・ええ、まあね。でも・・」
「煮え切らない女よね、あんたもさ」
「だって、いくらなんでも・・」
「いいじゃん、結婚前の一夜の夢だよ。海の男たちに囲まれて女王扱い
されるのよ。女の人生いっぺんぐらいそんなことがあってもいいと思う
けど」
「じゃあ、あなたが行けばいいじゃない、そう言うなら」
「あたしはダメよ、知ってるくせに」
「そっか・・レズだもんね、男は嫌いか」

 この子、オフィスの元同僚なのですが、発展家と言うのでしょうか、
あるときを境にキレちゃった言うのでしょうか。性に対してあけっぴろ
げなだけでなく、ふらりと独り旅で十日ほども消えてしまったり、そう
かと思えば突然すっきりした顔で現れては人を惑わすようなことを言う。
 そんな破天荒でこちらがたじたじしてしまうのです。
 この子の体・・背中やお尻・・もう全身に無数の細かな傷があり、以
前の彼がSM好きで、それで男が嫌になったと女にはしり。以来ずっと
レズを通して飼い猫をたくさん持っていて、じつは一度だけ私も押し倒
されたことがあったのですが。
 そんな女同士の深い仲だったので、私もあけっぴろげになれたのです。

 私には求めてくれる男性がいて、婚約もし、それなのにどうしても迷
いが振り切れなくて悩んでいた。そんなときです、どこから仕入れてき
たのか、あの子から「鬼祭」の話を聞かされた。
 南の海の地図にない島。そこで一人の女をめぐって男たちが争うとい
うのか、迫ってくるというのか、争奪戦を繰りひろげる、そんなような
奇祭があると言うのです。
 詳しいことはあの子も知らないようですが、無人島に女が一人放たれ
て、ほとんど裸の男たちが群がって押し寄せて、死に物狂いに求愛する。
そして気に入った相手がいれば一夜をともに、いなければソデにして帰
ってきていいと言う。
 でもね、それはつまりセックスのための儀式あり、つまり私にすれば、
それを目的に行くわけで・・好きこのんで陵辱されに。

 はじめのうちは話し半分だったのですけど、都会の中で刺激のない平
板な暮らしを重ね、それほどでもない男と結婚していく女にとって、野
生の男たちはどんなだろうと、そんな興味も捨てきれず・・気に入らな
ければ相手にしなくていいというあの子を信じて、行ってみようと考え
た。
 見知らぬ土地の出来事であり、あの子ではないけれど一夜の夢だと思
えばよかった。
 それがね、面白いのです、その島の青年会に申し込む。そうすると希
望者が多ければ抽選であり、なければ即決。なんだかね、お祭り気分の
お遊びなんだと思えてしまい、むしろ安心できたのです。

 即決でした。ハガキを出した五日後にハガキが来て、連絡先が書かれ
てあって、私の方から電話して。
 女性の参加は無料です。歓迎するとのお話で。
 だってそれはそうでしょう、きっと嫁のきてのない離れ小島で、願っ
てもない話のはず。それで私は空港まであの子に送られて旅立ったので
す。
 東京から飛行機で、あるところまで行くでしょう、そこからまたヘリ
コプターで海をまたぎ、さらに小舟で少し行く。ここが日本かと思える
ようなとんでもない場所に着いたのです。

 いいえ、ごめんなさい、その場所は言えません。あなたがもし女性な
ら、積極的にお奨めできない場所なので・・。


「ふふふ」
「それじゃ、いまごろその子は大変ね・・・」
 私が旅立った翌日の、あるラブホの一室での会話です。
「いまごろ犯されてるわよ、腰が抜けるほど犯されてる。あははは!」
「怖い人ね。あなたって、ほんと魔女なんだから」
「あたしがいくら誘っても相手にしてくれないからよ。可愛がってあげ
るのに。好きなのにね。あたしみたいになればいい・・くくく」
 あの子・・その趣味の飼い犬とホテルにいて、白い女体を鏡に映し、
お尻の傷を撫でていた。
「じゃあ、その子も戻ってきたら傷だらけ?」
「逃げなければいいだけよ。逃げようものなら・・きゃははは!」

 もちろん、そんなことは私にとって知る由もないことで・・。

 そして、島に着いた私は船を降り、それも客船ではなくちっぽけな
漁船から降ろされて、逞しい海の男たちが待つところへ連れて行かれ
た。
 牡島と書いて「おと」と呼ぶ。
 もう一つ、牝島と書いて「めと」という二つの小さな島があり、そ
の真ん中あたりの海原に、婚藪(くながぶ)と言われる、それはもう
ほんとにちっぽけな島がある。
 地図にない島とは婚藪のことでしたが、それら三島を合わせても別
世界・・そんなところだったのです。

 その昔、「おと」に男、「めと」に女が暮らしていて、男女のバラ
ンスを保って生きていた。海の事故や争いで男が減ったり、病いや略
奪で女が減るようなことがあったとき、女や男をよその土地からさら
ってきては「くながぶ」で奪い合った。そんな歴史があるそうです。
 島のルーツは海賊だということで・・。
 男が女を奪い合うのは想像できても、女たちが一人の男に群がる様
は怖いというのか、島の人々はそれだけ生殖に激しかったということ
です。

 それにしても婚藪(くながぶ)とは・・男女がつながる藪というこ
と。その昔の因習をそのまま伝える名だと思う。いまの時代は、牡島、
牝島ともに、普通の家で普通の家族が暮らす漁村の暮らしがあるので
すが。

 飛行機で東京を午前中に発って、それでも島に着いたときには午後
の四時過ぎ。その日は私を歓迎する宴が催されただけで、鬼祭は明日。
 けれど、そのことより私は、すでに普通でない雰囲気に不安を覚え
ていたのです。
 女の私は男の島、牡島(おと)に連れて行かれたのですが、島に女
性の姿がありません。子供の姿もお年寄りの姿も見かけない男ばかり
の中に、女は私が独りだけ。

 そこはきっと網元だとか島でいちばん大きな家なのでしょう。台風
を避けるために家々はどこも平屋です。家の板木の黒く錆びた古い古
い漁師の家。その家の襖がすべて外されて、牡島牝島二島に暮らす男
たち二十二人が居並んでいるのです。十八歳から上は三十代、四十歳
ぐらいまで。皆逞しく日焼けして、胸の厚い屈強な男ばかりです。
 その中に独りぽっち。私はもう、それでなくても薄い夏服の下で、
女体が痺れていましたね。
 純朴な男の視線は遠慮を知らず、衣服を透かされているようで・・。

 豪快な漁師料理と美味しいお酒。そしてやさしい男たち。
 さながらそれはハーレムでした。逆ハーレム。女王に群がる男奴隷
のハーレムです。そうやって夜が更けていき、明らかに年長の一人の
男が立ち上がって、皆を見渡して言うのです。
「さて、そろそろいい時刻だ、明日の鬼祭に出る者は?」
「おおう!」と歓声が沸き立って、残り二十一人全員が手を挙げます。
 皆に問うた男は笑い、そして私を振り向きます。
「ふっふっふっ、俺を加えて全員か」
「は、はい? あの、お祭りに出るっていうのは?」
「それだけ君がいい女ということさ・・ふっふっふっ!」

 ああ息が・・苦しい。

 女体が・・いいえ意識が火照ってしまって、ほとんど眠れない夜が
過ぎ、よく晴れた気持ちのいい朝がやってきた。
 けれど私にとっては・・錯乱の一日がはじまったのです。
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