陵辱官能 鬼祭(二話)

 翌朝よく晴れた南海の空の下、二隻の漁船に男二十二人と女が一人、
分かれて乗り込み、船は牡島(おと)と牝島(めと)二島のちょうど
間あたりに浮かぶ、婚藪(くながぶ)と言われる小さな島を目指して
いた。
 婚藪は周囲数百メートルのちっぽけな島。ほぼ円形で、波打ち際の
岩礁帯のほかは一面背の高い南の植物に覆われていた。遠くからだと
空飛ぶ円盤を海に浮かせようなものであり、島を覆う植物に青いもの
と赤みのあるものとの二種類あり、それが入り乱れて美しいモアレ模
様を描いている。
 婚藪へ行き着くまで男ばかりの一隻には声が絶えなかったが、女の
乗る一隻は静かだった。女の極度の緊張が周りに伝わり、声を遠慮し
ているといったムード。

 婚藪に着いた。
 男たちが降り立って、一人の女は、男に手を取られて船を降ろされ、
男たちに囲まれて島の周囲を取り巻く岩場を歩かされた。男たちは皆
短パンにランニングシャツ。女はブルージーンに半袖のピンクのTシ
ャツ、スニーカーを履いている。
 そうやって輪をつくって女を囲み、あるところまで行くと、四十歳
ほどの年長の男が手を上げて歩みを止めさせ、皆に言った。

「では鬼祭をはじめたい。まず女の名は美由起。間違ってどっかのア
マの名を呼ぶんじゃないぞ、失敬である」
 男の輪からくすくすと含み笑いが漏れてくる。しかし話す一人はに
こりともしない。
「祭を知らない美由起に聞かせることもあるので、鬼祭について話す。
鬼祭とは、島に迷う女神である美由起に、我ら男の鬼が群がって情け
を乞い、純粋なる愛を授かろうとするものである。女は宝だ。心より
慕い、力で奪ってはいけないもの。心を伝え、授けられる情けを待つ。
そのことで我ら鬼は人の子となれるのだ。わかったな!」

「おおう!」 男の声が地響きのように重なった。

「したがって、美由起を追い回し、押し倒して情けを願うにしても、
最後の下着だけには手をかけてはならない。ブラジャーもパンティも、
女神の許しを待たなければならない。よいな! これが規則だ!」
「おおう! なもん承知よ! 我らはしもべ、美由起は女神! おお
う、そうだそうだ!」
 男たちが微笑み合って拳を高々突き上げる。

 そして男は輪の中ですでに竦む女に言った。
「美由起よ」
「は、はい!」
「そういう祭だが、おまえの方にも言っておきたい。迫る我らに情が
動き、許すのならば、我らすべては人の子となれる。誰一人拒むこと
は許されない。拒むのであれば全員、許すのであれば全員、それが決
まりだ。心しておくように」
 美由起には声もなかった。海の男二十二人に犯される自分・・胸が
張り裂けそうな気分になる。
 そしてなお男は、その手に長く重い山刀を握って、言った。
「そこらを見ろ、背丈ほどの藪があるだろう。この島全体が藪に覆わ
れているのだが、よく見ろよ、青い藪と赤みのある藪が混じっている
な」
「はい」
「青い藪はよい、やさしい藪だ。だが赤い藪はイバラの藪よ。枝葉に
鋭いトゲがあり、肌を刺し肌を切り体に傷をつけるだろう。これをお
まえに与えてやる。刀で枝葉をはらって進むがいい、そうすればトゲ
を避けて歩けるだろう。この刀は我ら鬼には許されない。鬼は素っ裸
でおまえを追う。その意味を考えろ。裸でトゲの藪に踏み込む鬼の愛
を考えろ」
「ぅぐ」 喉の奥がツバ鳴りした。息が浅く速くなり、苦しくなって、
美由起は顔を青くする。
「ただし・・ふふふ、青い藪なら鬼どもはたやすく追いすがる。赤い
藪でも枝葉をはらえば、それもまた鬼にはやさしい。この意味がわか
るな」
「は、はい」
「ならば行け、どこへなりと行け。いまからしばらく鬼から逃げる時
をやる。それから鬼どもは藪に散って女神を追う。わかったら行け。
青い藪を選んで逃げるのだ。いま朝の七時、しばらくをおまえに与え
るとして、以降夜の七時までが祭りである。それまで逃げおうせたら、
それはそれで鬼の負けだ。さあ女神よ行け! ただし海には死んでも
入るなよ、ここらの海は鮫の海だ、骨にされるぞ」

 このときになって美由起は、鬼祭が遊びでないことに慄然とした。
 全裸の男たちが群がって押し寄せて、組み伏せられて・・小さな島
ではとても逃げられない。絶望だった。
 美しい美由起だから、ゆえに島中の鬼が目覚めてしまった。
「あ、あの・・」
 美由起の声におかまいなく、男は叫んだ。
「鬼祭である! 女神にすがる鬼どもよ! 脱げや脱げ!」
「おおう!」 
 男たちの獣の声が沸き立って拳が上がり、その直後、男たちは着て
いるものを脱ぎ散らして、逞しい全裸の鬼となっていた。
 男たちのほとんど皆に体中におびただしい傷がある。トゲの傷。
 その意味するところは、つまり・・。

「うそよ、そんな・・うそよ、ねえ、やめて!」

「美由起よ! 女神よ! 我らに授ける女体を曝せ!」
「脱げや女神よ! 我らの愛を許せよ女神よ!」

 男たちの目の色が一斉に鬼の眸に変化した。鬼になりきり、足を踏
み鳴らして踊りだし、男の肉棒を振り回す。若い鬼なら目の前の獲物
に昂まってすでになかば勃起させ・・。

「イヤぁ・・ああイヤよぉーっ!」
「行け美由起! 行けぇ!」
「きゃぁぁーっ!」 

 美由起は、鈍く光る刀を手に青い藪に突っ込んだ。足下には枯れた
茎が折り重なり、腐りかけて柔らかく、生き藪を苦もなく縫って、し
ばらくは走れていた。しかし藪が赤い色に変化して、青い方に走って
みても、青と赤の入り混じる鬱蒼とした藪にぶつかって足が止まる。
 刀を使えば道筋を鬼に示すことになり、使わなければ・・。

「あ痛ッ!」
 鋭いトゲがTシャツの肩口を引っ掻いた。
「あの子の傷って、まさか・・」
 友だちの女体の傷の意味を悟り、呆然とする美由起であった。
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