話術(一話)

なっちゃった・・・が口癖でした。

「こんなことになっちゃうなんて」

だって言えなかったんだもん・・・そんなことを、いつものように
考えもせず口にして、あの人にチクリと言われてしまったの。

「言わなかっただけだろう」
「だって・・・」
「こんなことにシタんだよ、なっちゃった・・・のではなく」
「だって・・・」

こういうときの私の反論は、だって、だって・・・もういいわ!
で、キレて終わることがほとんどで・・・でもそれって、
女はだいたいそんなものだと周囲を見ていて覚えたわけで・・・。

「オナニーしてるか」

突然何を言い出すの・・・それもあの人の会話の特長。
「してません、そんなこと」 と私は、ちょっと怒ったそぶりで応え。
でも・・・それから私は、あの人にのめり込んでいったのです。

「もっと自分を可愛がっていいんじゃないか」

頑張ってきたし頑張ってるつもりの私・・・その私にあの人は、
ご褒美にもっと快楽をあげなさいと言うのです。
言葉でも気持ちでもない、くっきりカタチのある快楽を・・・。

「だって、だって、もういいわ・・・か?」
「え?」
「いつまでくだらん女をやってる」

受け身がラクなの! ・・・とそのとき言葉を噛んで、
いつものように攻撃姿勢を見せたのですけど、あの人は・・・。

「可哀想な女になるな。おまえにはそうならない資格がある」

断言された・・・そのことが、私を認めてくれた男の心?
「あの人」が「気になる人」になっていき、
このままでは「彼」になると思ったときに、女の私がそこにいた。

思春期の頃、夢のための性を知り、恋のための性に溶け、
生殖のための性に至って・・・けれどもそれを、
愛のための性と言い切る自信が持てなくて、ここまできた私です。
彼は言うわ・・・愛のための性とは自分のための性であり、
エゴイストだけが愉しめる、わがままな性なのだと・・・。

「うふふ・・・それで、つまるところオナニーなわけ?」
「そう。おまえを欲しがる男どもが勃起させる、その可哀想な
ペニスを本気で想像してオナニーしろ。おまえを見せつけ、
イケなくて苦しむペニスを思い浮かべ・・・」

ジョークのつもりのお話が・・・だんだん私をおかしくしていた。
自信がないの・・・私にそんな自信は持てないの・・・。
そしたらあの人・・・いいえ、彼が笑うわ・・・やさしい目だった。

「だって自信がないもん・・・か?」

返す言葉が見当たらず、黙ってまっすぐ目を見てた・・・。
だって・・・カフェで話していたでしょう・・・それ以上のことを
考えさせないで・・・気持ちが濡れてきちゃうから・・・。

「たとえばだが」
「うん?」
「俺をしゃぶるつもりでオナニーしろ」

ウッって、息がとまったわ・・・ああダメ・・・濡れてきちゃう。
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