話術(三話)

なによなによと思いながら言うことをきいてしまう・・・不思議な感情。
それまでになかった何かを見せてくれそうな、彼って、そんな人だから。

「ミニ、ナマ足、赤いパンティもしくはノーパン」

困らせることばかり意地悪に笑って言う・・・子供っぽさが好き。
調教されてる感じがする。SMチックがいいのかな・・・とも思ったり。
でも・・・すっかりその気になってる私がいる。浮き立ってる。
変わって実感が・・・肌に艶が戻ったような、嬉しい錯覚?
あの頃のミニが穿けるというのと、似合うというのは違うのよ。
けれどね、似合う自分に戻りたく、似合うと言ってもほしいもの・・・。

女になってる私を感じる。

「ミニ、ナマ足、赤いパンティもしくはノーパン」・・・ノーパンは
ちょっとだけど・・・会ったらどうしようと、そればかり考えて・・・。

で、ドライブ。助手席に乗ってみて、運転の巧さに驚かされる。

「スポーツは?」
「中高テニス、大学ワンゲル」
「ワンゲル・・・山? またずいぶん違うね、テニスとは?」
「勝ち負けに疲れてね。おまえは?」
「スキー。一級もってる」
「なるほど・・・だからバランス感覚がいいわけだ」
「バランス感覚って?」
「ふふふ」
「なによ?」
「いや、いい・・・やめとく・・・」

「ねえ、なによ?」
「ベージュと赤の使い分け」
「・・・」
「さすがにノーパンはムリなようだが・・・ふふふ」
「・・・だって」
「はじまった・・・だってだって、もう知らない・・・か?」
「わかる? 穿いてるの?」
「スカートにラインが出てる」
「・・・」
「もったいない」
「もったいない?」
「可愛いヒップしてるのに・・・Tにしろ」

頭のいい人・・・それに、この人、こだわりが凄いと思う。
クルマに乗って気づいたこと・・・クルマの中がすっきりしてる。
それだけで何となく、スキがないと思えてしまって・・・。
駐車イッパツ。区画にまっすぐ、きっちり停める。
降りたとき、彼の手がスカートに・・・後ろのすそを引っ張って。

「え?」
「めくれてた」

「それにおまえ」
「うん?」
「髪切ったな」

ほんのちょっと揃える程度・・・なのに気づく。見てくれてる。
ただそれだけのことなのに、女は嬉しい・・・ドキドキしてる・・・。

海だった。岩場から堤防につながるような。遠くに船が浮いている。
「ここには釣りでね」
「よく来るの?」
「うむ。ちょっとやるか?」
「はい? 釣りを?」
トランクに短い竿が積んであり・・・ワームって言うらしく、
ミミズみたいなゴムのオモチャを針にくっつけ・・・ポチャン。
二度投げて、すぐ釣れた。
「わあ、すごぉい・・・なになに、それ?」
「カサゴ。旨い魚だが、ちっちゃい」
せっかく釣って、ポチャンと放して、逃がしてしまう。
「逃がすの?」
「ああ。今日は違う」
「違うって何が?」
「魚は命がけ、こっちが遊びじゃ失礼だ。おまえと同じ」
「私と?」
「そ。遊びじゃ失礼・・・」

ハッとして目を見たとき・・・風みたいに彼のキスが通過した・・・。
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