女の口(一話)

ベッドで裕美枝は子犬のように裸身を震わせ達していきます。私との性、
姉との性、そして私と姉に裕美枝を加えた三人での肉欲・・・裕美枝は
私や姉に見守られていることがすべてのように裸身を震わせ果てていく。
生存の瀬戸際で生まれた絆がいかに強いか、私も姉も、貪欲に乱れる
裕美枝の女体を見ていて思うのです。
乳房を揉まれ乳首を吸われるだけで果てていき・・・女の花芯をいじられ
て果てていき・・・私や姉の腰につけたゴムのペニスに犯されて、狂うよう
に果てていく・・・。
そしてそれは、私や姉もそうなので・・・私に犯され姉は果て・・・姉に犯さ
れ私が果てて・・・裕美枝に愛されて私も姉も達していく・・・。
女三人の性生活はやさしく深く、そしてある忌まわしい想いを共有する
私たち三人にとっては、それこそが精神的にも救いとなるものだったの
です。

半年前まで、私も姉も、裕美枝に対する面識などなく、なのに初対面で
いきなり心の淵でつながることができていた・・・それもこれも生存の瀬戸
際でできた、まさしく命の絆と言えたでしょう。


いまから半年前・・・。

私の離婚で、姉が気晴らしを考えてくれ、私たちはインドネシアのバリ島
へ出かけたのです。私も姉もパスポートのいる旅なんて独身時代以来の
こと。姉には家庭があって子供もいますが、旦那の実家ということで、子
供を任せて比較的自由に家を出ることができたから・・・今回は妹の傷心
旅行ということで、姉妹揃って大手を振って一週間の滞在型の旅にした。
観光地をうろうろせずにバリから動かない予定だったのです。
このとき、別の旅行会社のツアーで、裕美枝とその婚約者の二人がバリ
に来ていた。ホテルも違えば旅の内容も違う二人と、あのことがなければ
出会うこともなかったはず・・・。

そして、私たちの滞在三日目、裕美枝たちにとっては滞在二日目のこと
ですが、せっかくここまで来てホテルに缶ヅメというのもなんだねというこ
とになり、私たちはオプションツアーに出ることにしたのです。
オプションといっても旅行会社の用意する正式なものではなく、現地調
達のオプションツアー。インドネシアは島の連なる国土です。その中に
旧日本軍の遺物のある無人島があるらしく、現地の漁師さんが私たちの
ような日本からの観光客目当てに勝手にやっているものでした。

で、その島に向かう漁船の上で、私たちは裕美枝ら二人と出会うことと
なったのです。
気晴らしにここまで来て、なにが悲しくて日本人カップルと一緒なのって
思いはありましたが、それは偶然のなせることで仕方がありません。
小さな漁船にお客は私たち姉妹と裕美枝とその婚約者の四人だけ。現
地人のガイドさんがついてくれ、後は船の船長さんの六人です。
そのガイドさんの妙な言葉が面白く、私たちは日本人と同舟の煩わしさ
を忘れていました。もともと行き先に期待したわけでもなくて、バリ島を船
で出て、岸沿いにエメラルドグリーンの穏やかな海をゆく。それだけでも
充分な気晴らしになったのです。
ガイドさんは三十前後のまだ若者。船長さんは五十年輩の、どちらも気
のいい人たちでした。

「あー皆サン、今日は乗ってもらってありがとござます。これからご案内せ
る島は、小さくムジン島ですが、ニッポン軍の残した聴音所跡があります
る」
「聴音所?」 思わず私が訊きました。
「はいはい、聴音所です。海の中の音を聴くですよ。スクリュー音ね、そ
れから潜水艦のソナー音とか、海軍の施設なんでする・・・でもですが、
じつはそんなもんはどーでもよくて、そこには地下壕がありまするが、そ
こから地下にひろがる素晴らしか鍾乳洞に入っていけまする。そこがす
ごく綺麗なのね。なので、おすすめしたいわけでする・・・なははっ!」
聞いているといつの間にか笑ってる。それは裕美枝たち二人もそうでし
た。私は柴田律子、三十三歳、姉は藤城涼子、三十六歳ですが、小坂
裕美枝は三十歳でも見た目が若く、後になって婚約者だと知らされた
平井洋一など、まだ二十八歳の、そんなカップルの笑顔でした。

バリ島から船に揺られて三十分ほどだったでしょうか・・・絵に描いたよう
な、ほんとに南海の孤島に着きました。ガイドさんを含めた五人を降ろす
と、船は一旦引き返してしまいます。島での所要時間を逆算して終わる
頃に迎えに来る手筈のようで・・・。
島は小さく、いまでは無人島になっていて、潮騒と風の音ぐらいの静かな
ところ。海原に飛び出した岩礁のてっぺんに木が生えた、日本でも見か
けるほんとにいい感じの島なのです・・・。

聴音所の施設跡は、その生い茂る木の下にコンクリートブロックでちっ
ぽけな建物が造られてあり、窓にガラスなどははまってなくて、中はもぬ
けの殻・・・そして建物横に、やはりコンクリートで固められた地下壕への
口がありました。
人一人がやっと通れる口を入り、コンクリートではなく自然のままの岩石
を削った階段を下りていくと、中は薄暗く、照明さえなく、でも岩礁の割
れ目から射し込む明かりだけで充分明るい、まさに穴場といったような
場所だったのです。
階段を少し下りると、そこはおそらく弾薬庫跡・・・コンクリートで固められ
た四角く狭い空間が広がって、その先に、さらに下へと向かう岩の割れ
目が口を開け・・・。
地下なのでしょうが、島の岩礁に割れ目が多くて光が射し込み、ライトが
なくても充分中が見渡せます。

そこからは階段のない自然のままの岩礁の中を行き、あるところから景色
が一変・・・乳白色の鍾乳石の洞窟に出たのです。洞窟の天からは大き
なクラゲのような鍾乳石が幾重にも折り重なって、足下にもタケノコみたい
な石筍がにょきにょきと生えている・・・洞窟の天に岩の裂け目が口を開け、
青い空が見渡せます。
鍾乳洞はそれほど大きなものではありませんでしたが、それでも大人数
人が広がって歩けるほど。奥行きも深く、奥に向かってなだらかな傾斜に
なっていて、鍾乳洞そのものが地底から続く黒い海へと落ち込んでいる
のです。

ガイドさんは、持ち込んだリュックサックを置くと、あたりの鍾乳洞を指差し
ながら言いました。
「あー、鍾乳石は海の中ではできませんです。このへんは昔々、陸地だ
ったですけれども、地殻の変動と海の上昇で沈んでしまい、こんなように
なったでする」
なるほどと思いながら説明を聞いていて・・・でもそれこそそんなことはどう
でもよくて、私たち姉妹は美しい地底の景色に見とれていたのです。

足許から衝き上げる揺れが襲ったのはそんなときでした・・・地震です。

立っていられないほどの縦揺れが来て、ほとんど一瞬にして状況が一変
しました。柔らかい鍾乳石がボロボロと崩れ落ち、悲鳴を上げる間もない
ぐらいの一瞬で・・・崩れ落ちた巨大な鍾乳石が先頭に立っていたガイド
さんを直撃し、暗い海の中へともろとも引きずり込んでいったのです。
揺れはほんの一瞬でしたが・・・地盤が崩れ、退路を断たれた私たち四
人は、そこだけ崩れなかった鍾乳洞の空間に閉じこめられてしまったの
です。

岩礁の割れ目から射し込む光だけが平和であって、私たちにとっての地
獄が、この瞬間からはじまったのでした・・・。
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