快感小説

Miyulielle 一話(新しい私へ)


 太陽が、なぜ綺麗に輝くのか。
 ありふれた白い光の中に七色の虹が溶けている。
 プリズムを持ちなさい。そしてそのときどきで、
 美しく発色する女としての自分を愉しめばいい。


海を見渡す高台に立っていた。傾いた陽射しが波にきらめき、そよぐ風
が心地よかった。けれども私は、すました顔とは裏腹に、どうにもならな
くなっていく私自身とたたかっていたのよね。

恥ずかしい・・・恥ずかしいのに・・・でもどうして・・・。

アイツの言うとおり、私の中にミユリエルが生まれたことを感じるわ。
これまでの私は、ほとんどの女がそうであるように、常識や良識や、そ
れからそうね・・・母として妻として、ありふれた白い光の中で生きてき
た。そんな私にアイツが言うの、「プリズムを持て」ってね。

私は美夕。いい名前をママがくれた。
そういえば夕焼けは白じゃないわ。綺麗な色を持っている。
この頃ときどき寂しくなるの。このままでいいのかしらって思っちゃう。
どう言えばいいのかしら・・・女としての証が欲しい。美しく咲く花のまま
生きられたら素敵でしょう。
幸い私は、少しは自分に自信が持てた。ずいぶん若く見えると思うし、
着る物にだって気を使ってきたつもり。

だけどアイツは、いまのままではダメだと言う。・・・マリ男。

自分を変えたいと思ったときにアイツに出会った。マリ男。私を導いて
くれそうな気がしたの。浮気なんて次元じゃなくて、もっと高くそして深
く、奔放な女になって生きてみたい。そのための私自身の調教を、私
は彼に委ねたんだわ・・・。

エマニュエルにはなれないけれど、ミユリエルなら、挑んでみようと考
えた。私の中にプリズムができるまで、彼の手の中のプリズムで私は
綺麗に発色するの。


「ふふふ・・・」
すぐそばでマリ男が笑った。そよぐ風が冷やしてくれない私なら、上気
して、肌が桜色に染まっていたはず。
胸と背中のざっくり切れ込む淡いピンクのワンピース。ノースリーブ。
細紐でウエストを絞ってあった。丈だけはそんなに短くない。膝上二十
センチほどかしら。それがせめてもの救いだったのだけど、生地が薄い
の、すごく薄い。なのに裏地がないのよね・・・。
黒くて細いブラのラインが背中を横切っていたはずよ。横紐のパンティ
だってちっぽけな布切れに過ぎないし。かろうじてお尻を隠しているだ
けで、透かして見えてるはずなのね。ストッキングも許されない。

海を見渡す高台のつむじ風は惨酷だったわ。薄くて柔らかな布地をは
ためかせる。ヨットの幌が風を孕んでふくらむように、舞い上がるのが
わかるんだもの・・・ああ・・・恥ずかしいわ・・・。

高台は公園になっていて、私の背にベンチがいくつも置かれてて、な
ぜかしら男ばかりがたくさんいたわ・・・。

海に面した縁のところにフェンスがあって、私は両手でフェンスにつか
まって立っていた。すぐそばにマリ男がいて、見守ってくれている。
「ほら、綺麗な海だろう。この景色に素直に溶け込めばいいんだよ」
そんなことを小声で言うのよ。はためくスカートを押さえてはいけない
と言われてた。
すました顔で、海だけを見てるフリして、小声で訊いたわ。
「見えてるでしょ・・・ねえ・・・」

そしたらマリ男、「うむ、何もかも」だって・・・。

「これって、SM?」
「違う」
「だって・・・」
「考えてはいけない、感じていればいいんだ」

恥ずかしい・・・胸がひしゃげそうな思いがするわ・・・。
なのに、どうして・・・。
コイツをひっぱたいて逃げ出したい気持ちでいるのに、からだが熱い。
崖下の草むらをざわめかせて、海から風が上がってくるわ。
ねえマリ男、もうだめよ。からだが火照っておかしくなりそう・・・。

一陣の風が吹き抜けていくときに、私は固く目を閉じた。

「男をソソるためにここにいるわけじゃない。ただそこに立って海を見て
るだけだろう。男どもが勝手な妄想をし、おまえを抱きたいと思ってい
る。それだけのことなんだ。ふふふ・・・」
「いや・・・言わないで・・・」
「おまえはいい女だよ。そのパンティを脱がしたいと誰もが思う。可愛
い尻を突き上げさせて貫きたいと思うんだ」
「ああ・・・マリ男・・・はぁぁ・・・はッはッ・・・」

息が乱れていたようね。日々の中で乾いてしまった女体の花が、蜜
に潤う気がしてた。

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