快感小説

着せたい男と脱ぎたい女(二話)

 海を見渡す丘の宿を考えていた。あの夜あそこで不
思議な高揚感に襲われていたことを。不意に現れた男
性のせいではなかっただろう。海の見える場所がある
と言われ、行ってみようと思ったときから体が疼いて
いたのだから。
 あの彼がいなくなった薄闇のベンチで乳房を揉んで
心地よさに浸っていた。それだけのことだったが解き
放たれた自分を感じた。

 一月ほどが過ぎていた。
 東京、府中。亜紀の姿がそこにあった。都会の中で
は雄大な多摩川を眺め、街中を歩き回って新しい街を
確かめた。いまのところから引っ越すつもり。海のあ
る場所にとも思ったのだが、仕事先が都内では通えな
い。水のある開放的なところがいい。そんなことで大
河に近い場所を探した。ネットであたりをつけて問い
合わせ、物件を見て決めた。河から少し離れた駅に近
い賃貸マンション。独り暮らし。1DKで充分だった。

 十月の半ば。今年はいまだに夏の空がひろがってい
る。ちょっと歩くと薄いジャケットさえ邪魔になる。
商店街を歩き、火照った体を冷やそうとカフェを探し
た。しかしセルフのカフェに若い子が群れていて席が
なく、しかたなく歩き出すと、裏路地への入り口あた
りに昔ながらの喫茶店を見つけた。
 くるみ茶房。名前も懐かしいような古い店。いまだ
にドアは引いて開ける。開けるとチリンとドアベルの
音がした。
「いらっしゃいませ」
 まだ若いマスターだ。古いムードからお爺ちゃんで
もやっているのかと思ったのだが、店主は一見して三
十代。ブルージーンに白いカッターシャツ、焦げ茶色
のサロンエプロンをつけていた。四人がけのボックス
席が四つにカウンター五席のちっぽけな店。インテリ
アもコーヒーカラーでとにかく古いのだったが、セル
フの店にはないコーヒーのいい香りに満ちていた。

 亜紀は奥のボックスに座る。そのとき店に客はなく、
ボックス席の二カ所に下げられていないコーヒーカッ
プや皿がある。このとき時刻は昼下がり。先客が帰っ
たばかりのタイミングであったらしい。
 トレイにお冷を載せて店主が来る。メニューは壁に
貼られてあった。飲み物とトーストそれにサンドイッ
チしかない店だ。
「あれ?」
 近寄った店主が一声上げて亜紀を見つめた。亜紀も
もちろん気がついた。中途半端に長い髪で右頬の傷を
隠している。あの夜の彼。次の朝、寝坊して朝食に降
りたとき、彼はすでにチェックアウトした後だった。
駐車場にクルマがなかったことを覚えていた。

 運命だわ。わけもわからずとっさに亜紀はそう思う。
再会する運命だった。そうとしか思えない。あのとき
一言二言話しただけにもかかわらず、初対面の街で、
引っ越し先を決めたその日に巡り合う。
「よければカウンターでどうです。奇遇と言うのか驚
きましたよ。伊豆あたりならともかくも富山でですよ」
 そうなのだ、はじめての北陸路。遠く離れた東京の、
それもまさか引越し先の街で会うとは。
 それでカウンターに席を移し、カウンター越しに向
き合った。このとき亜紀もジーンズだった。Tシャツ
を来て薄いジャケットを合わせている。
「ほう、引っ越しを? 今日決めたんですね?」
「そうなんです、たったいま。ネットであたりをつけ
てやってきました」
「じゃあ、ここらははじめて?」
「ええ。だからもうびっくりしちゃって」
 アイスコーヒーをオーダーした。コーヒーグリーン
の香り立つ、そんじょそこらの店で飲めるものではな
い。

「消防士だったんです」と不意にマスターは言う。顔
の傷を気持ち悪がられてはと気を回したのだろう。
「五年前になりますが、ある町工場から出火して周り
に延焼しましてね。燃え落ちた工場の壁が崩れて民家
との間に挟まれてしまったんです。僕はこの程度で済
みましたがそのとき仲間が」
「そうなんですか、かなりひどく?」
「亡くなりました」
 亜紀は声を失った。
「僕だって火傷はこの程度で済みましたが首の骨をや
ってしまって、それでまあ保険そのほかあったもので
消防士はそこで」
「お辞めになられたんですね?」
「体は戻っても、ちょっともう無理でした。新婚の部
下だったんです。あ、これはどうも、つまらない話を
してしまって」
「いいえ、とんでもありません。それにしてもまさか
ですよね」
 穏やかに微笑むマスターに、亜紀は揺れはじめる女
心を感じていた。

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