快感小説

着せたい男と脱ぎたい女(四話)

 引っ越し当日の土曜日。亜紀は新しい環境に子供
じみた期待を抱いてやってきた。
 この街にはくるみ茶房があってマスターがいてく
れる。それは親元を離れてこのかた感じたことのな
かった解放。鎧を脱げる場がなかったと、これまで
の都会暮らしを振り返っていた。

 引っ越しといっても女の独り暮らしなど小さなト
ラック一度で済むし、荷物さえ入れてしまえば片付
けはゆっくりできる。午前中に動き出し、終わった
ときには、それでもまだ時刻は昼の三時前。
 亜紀はシャワーで汗を流すと化粧を整え部屋を出
た。駅を挟んでくるみ茶房のある側とは逆の住宅街。
 駅まで五分、さらに二分。あのとき席がなくて入
れなかったセルフのカフェを素通りすると、路地へ
の角に古い喫茶店が見えてくる。
 それしても今年はおかしい。ほどなく十一月にな
るというのに風はぬるく、陽射しがやけにギラギラ
している。

 亜紀はミニスカ。ジャケットを合わせ、ポシェッ
トサイズのタウンバッグを肩から提げた。
 先週以来。あの後なぜか美容院にも行きたくなっ
て、長さをそれほどいじらずに枝毛を処理して染め
直した。それも今日の日のためだったような気がし
てならない。
 ドア越しに中を覗くとボックス席は満員で、五人
掛けのカウンターに二つ席が空いていた。男女が半
々。客が入ったばかりのようでマスターはコーヒー
をつくりながら、しきりにトースターを気にしてい
る。
 ドアを引くとチリンと懐かしいようなベルの音。
「ああ、いらっしゃい」
 明るい声。ほっとする。カウンターの端を示され
て亜紀は座った。
「今日?」
「ええ、たったいま。荷物だけ入れて真っ先に」
「うんうん、嬉しいですよ、ありがとう。ちょっと
待ってね、もっかクソ忙しい」
 その言いように、カウンターの常連客がくすっと
笑う。ボックスに女性はいたが、カウンターには若
い男性ばかり三人が座っていた。

 その中の一人。亜紀と同年代ほどの男にマスター
が言う。
「こちら亜紀ちゃん、たったいま越してきたばかり
でね」
 そして亜紀にもマスターは。
「で、亜紀ちゃん、こちらは君島君って言って、こ
の店のオーナーの息子さんでね。二十六。住まいは
ここじゃないけど週末ときどきお母さんのところへ
戻って来ている」
 互いに浅く会釈した。ドキリとするほど整った顔
立ちの青年で背も高く、コットンパンツにジャケッ
ト姿。髪もきっちりしていてサラリーマンぽく亜紀
には映った。
 しかし亜紀にとって心の動くことのない男性。亜
紀の中で歳の違うマスターの存在が膨らみだしてい
たからだ。
 都会を逃げるように北陸へ旅に出て、しかも道を
間違えて見つけた宿で出会い、引っ越しを決めたそ
の日にはじめての街で再会した。この運命には逆ら
えないと感じていた。

「あ、じゃあ私、先にちょっと」
「出る?」
「はい一度。ほら、細々と買い物もありますし後で
また覗きますから」
 嘘だ。そんなことはどうでもよかった。マスター
との接点をルックスのいい若い男に揺さぶられたく
ない。なぜかしらそう思え、亜紀は店を出てしまう。

 消防士として戦った名誉の負傷。その傷を彼の妻
は嫌がって外に男をつくってしまった。と、あのと
き聞いたことからまったく勝手に想像し、亜紀はち
ょっと腹を立てていたのだった。
 髪で覆う傷は、右の頬骨あたりから顎にかけて引
き攣る傷を残していたが、そうひどいとは思わなか
った。耐火服を着てヘルメットをかぶっているから、
守りきれない顔だけに火傷を負った。
 それは現代の甘い社会の中ではめずらしい戦う男
の姿。むしろ誇らしいと亜紀は思う。

 性への予感もないとは言えない。それも、もしそ
うなるなら私から求めて抱かれていく激しいものと
なるだろうと考えた。結婚から引き返し、しばらく
男はいいやと思って振り切るための旅でもあった。
 なのに。
 いまにも燃え出しそうな恋の気分を感じている。

 買い物で街をまわり、一度部屋に戻って荷物を片
付け、それやこれやで汗をかいてシャワーした。
 気づくと外が暗くなっている。時刻は六時をすぎ
ていた。この街はベッドタウンで夜には店も空くだ
ろう。化粧をし直し、さっきとは違うミニスカに穿
き替えて部屋を出た。
 暗くなって風が変わった。北風が吹きだしている。
 寒い。早く行ってコーヒーであったまりたい。

 マスターに会いたい。冷えた風に肌を撫でられ、
熱を求める女心が騒いでいた。

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