快感小説

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着せたい男と脱ぎたい女(五話)

 部屋を出るとき一瞬夕食をどうしようと考えた亜
紀だったが、マスターのところでサンドイッチでも
食べてみようと思い直し、暗くなっていきなり冷え
てきた夜風の中を足早に店へと向かった。
 ところが、くるみ茶房が見えてきたときシャッタ
ーが半分ほど降りていて、薄暗い明かりが漏れてい
た。時刻はまだ七時前。店は九時までだと聞いてい
た。
 マスターに何かあったのではととっさに思い、半
分降りたシャッターの下から覗き込む。そうしたら
カウンターの中にマスターはちゃんといて後片付け
をしているところ。何かがあって早じまいするのだ
ろうと亜紀は思い、遠慮しようかと迷っていた。
 目が合ったのはそんなとき。マスターはほがらか
に笑ってドアを開けてくれたのだった。

「はー? 製氷機が壊れたー?」
「そうなんだよ、昼頃から氷が小さくなってきたな
って思ってたら、とうとうアウトさ。お客さんも切
れたから閉めようとしてたところでね」
 とぼけて言う姿に亜紀は笑いを噛み殺して見つめ
ていた。カウンターの裏側の下が業務用の冷蔵庫に
なっていて、そこに組み込まれた製氷機が冷えなく
なったということだ。
「だから言ったろ、この店古いんだよなー」
「うん、ふふふ。だけど困っちゃうよね、明日ダメ
でしょ?」
「あ、いやいや、朝には業者が来てくれる。今日は
もう夜だし、今日の今日では部品とか都合がつかな
いって」
「そうなんだ? それならいいけど」
「でも大丈夫だよ、コーヒーぐらいならできる」
「サンドイッチは? 御飯ここでと思って食べてな
いんだ」
「おっけ、まかしとき。氷がないだけでそのほかで
きるから。そうか、じゃあ俺もそうするか」
「え?」
「いつもはどっかで喰って帰るんだが俺もそうする。
じつは自分で作ったものって意外に喰わないもんな
んだ」

 シャッターが半分降りて、店の中もホールの明か
りは落ちていて明るいのはカウンターの周りだけ。
 ハムと野菜、卵サンドの二種類をこしらえてコー
ヒーを淹れる。その間亜紀はたまらないものを見る
ような面色でマスターの動きを見守った。
 素人目にも包丁はうまいと思うし手際もいい。し
かしなぜか、ここには私の居場所がありそうだと感
じてしまう。二人きりの薄暗い店内。コック服でも
ないエプロン姿の男が料理をする姿に親しみを覚え
たのかも知れなかった。
 支度が整い、マスターはエプロンを脱いでしまっ
てカウンターに並んで座る。
 あの夜もベンチはあった。一緒には座らなかった。
潮の香りが漂う星明かりの夜を、このとき亜紀は思
い出していたのだった。

「わー、美味しい」
「そう?」
「うん!」
「ならよかった。確かにまあまあ食えるもんだな」
 客に出す売り物にそんなことを言うマスターに、
亜紀はちょっと呆れていた。
「ずっとお独りで?」
「あ?」
 口の周りをマヨネーズだらけにして、とぼけた声
でマスターは問い返す。そのとき右頬の醜い傷に目
がいって、亜紀は慌てて目を逸らした。
「奥さんて、ちょっとひどいね」
「うむ? それは違うよ、考え過ぎだ」
 亜紀はすぐ隣に座っていながら身を乗り出すよう
にして聞いていた。

「事故から半年入院しただろ」
「うん?」
「その間もそうだったし、退院してからもかなりの
間、ちょっと精神的におかしくなっていたんだよ。
俺さえもっと注意をはらっていれば部下を死なせず
にすんだはず。俺自身も現場ではじめて死にかけた。
記憶はやすやすとは消えてくれない。怖くてならず
悪夢にうなされ、精神的におかしくなってしまった
んだ。家内に当たり散らしたりして」
「わかる。でもそういうときこそ」と言いかけたと
き、マスターはまた手で虚空を仰ぐように微笑んで
言う。

「弱かった俺が情けない。家内はちっとも悪くない。
アイツを恨んだこともない」
「いまでも奥さんのことを?」
「いいや。そのへんきっぱりさ。それとこれとは話
が違う。そこへ追い詰めたのは俺なんだ。家内は少
しも悪くない」
 物思うようにちょっと微笑み、口を動かしコーヒ
ーを飲む姿。素敵だと亜紀は思う。浮気から離婚に
至った妻のことをあしざまに言わないところが男ら
しいし、すがすがしい。
「ごめん」
「あ? あーあー、いやいや、いいんだいいんだ。
心配してくれて嬉しいよ、ありがとね」
 亜紀はうなずくこともできないまま、マスターに
対してしなだれ崩れていく女心を感じていた。

「ところで仕事の方は、その後?」
「うん。移動願いは書いてみたけど出してない。逃
げるみたいで、ひどく卑怯に思えちゃって」
 しばらくの沈黙。唐突とマスターが手を叩く。大
きな音に亜紀はビクッと目を丸くする。
「コーヒーもう一杯どう?」
「うん、もらう!」
 それきりマスターは立ち入ったことを訊こうとは
しなかった。亜紀も亜紀で、仕事のことは一切言わ
ない。それでも気持ちは通じている。意識して話題
を変えている分、気持ちで抱き合うような時間が過
ぎていくのだった。

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