快感小説

着せたい男と脱ぎたい女(八話)

 学校を退くその日、明日から十一月だというのに
新しいページへの節目にふさわしい春のような陽気
となった。一日も早くお店に立ちたいと思っても教
師である間はバイトはできない。これで終わった。
これで私は解放されると思っていたのだったが、そ
の朝いつものように職員室を覗いた亜紀は、思って
もみなかった寂しさに襲われていた。
 さようなら。それまでの同僚たちがひどく他人に
思えたのだ。教師として最後の日。授業もなく、担
任でもないのだから、ろくに生徒たちの顔も見ず、
午前中には校門を出てすべてが終わる。
 今夜はきっと寝られない。生徒たちとの楽しかっ
たことが思い出されて眠れない。亜紀は肩を落とし
ていた。

 昼食もせず自宅へ戻り、すぐにでもくるみ茶房へ
行きたかったが気持ちの整理がついていない。いま
すぐマスターの顔を見たら泣いてしまうかもしれな
い。と思ったとき、あのときマスターに本気で尻を
叩かれた痛みがよみがえる。
「しっかりしろ! その程度のことで折れるな!」
 あれはきっと学校のことよりも結婚から引き返し
た女の失意を叱責する言葉ではなかったか。
「よし行くかっ」
 店に立つ姿を想像したとき、心の穴にマスターの
やさしさが流れ込んで穴が塞がる気持ちになれた。

 時刻は一時。ランチタイムの戦争が終わる頃だと
考えた。これからしばらく客は減り、夕刻前になっ
てふたたび混みだす。夜のための仕込みもはじまる。
私が行けば少しは役に立つかもしれない。
 亜紀は黒のミニスカートに淡いブルーのブラウス
を合わせ、教師らしくそれほど長くはしていなかっ
た髪をまとめて、フードのついたダッフルコートを
着込んで出た。
 風もなく暖かい。けれども下はブラウス一枚。学
校で着ていた厚手の白シャツにすればよかったと後
悔した。

 数分歩いて店に着く。チリンと、なぜかいつもと
音色の違うドアベルが鳴る。新しいページがはじま
ると亜紀は思う。ランチタイムの尻尾が残り、店に
は客もまだまだいたし、下げた食器やコーヒーカッ
プがカウンターにあふれていた。
「マスター」
「おー! 助かった、さっそく入って」
「はい!」
 そのとき店にいた数人の客は常連ばかりで皆男性。
マスターのそんな声に一斉に振り向いて、新人らし
い女の子を見つめていた。
「あー皆さん、今日から入る亜紀ちゃんて言います、
よろしくお願いしますね」
「へええ、こんな店に女の子? うっそみたい、は
ははっ」

 客は近くの会社の若者ばかりで、輝く目色で見守
った。亜紀はちょっと恥ずかしくなる。最初だから
とタイトなミニに薄いブラウスにしたことを今度こ
そ後悔した。サロンエプロンでウエストを絞るとヒ
ップが目立ち、黒いブラの背が透けてしまう。
 事務所へ入ってコートを脱いでエプロンを首に通
す。ポニーにまとめた髪と淡い化粧を鏡で確かめホ
ールに出た。
「おー! 可愛いねー!」
「や、やだぁ、うふふ」
 頬が燃える。落ち込んでいた気持ちが一気に切り
替わり、教職ではあり得ない人のやさしさに囲まれ
る。
「早速だけど中で洗い物を」
「はいっ」
 カウンターの入り口の側にレジがあり、回り込む
と厨房に入って行ける。なんとなく震える。カフェ
でのバイトなんてはじめてだった。

 中は狭い。コーヒーを作るマスターの後ろをすり
抜けようとすると、うっかりすると尻が触れる。洗
い場に入った亜紀は、カウンターの上だけじゃなく
ステンのシンクに積み上げられた皿やカップに驚い
た。忙しかったことを物語る。というか洗い場が狭
すぎるのだ。
「忙しかったんですね」
「うむ今日はね、どうしたことか相席になるほど混
んでしまった。ひーひー言ってたんだよ。仕込みも
あるし来てくれて助かった」
 ちょっと嘘っぽい。お昼の客は次々にいなくなり
手が空いていろいろできるはず。
 シンクに溜まった分をやっつけて、カウンターに
積まれた食器をシンクに移そうとしたちょうどその
とき、少し年配の集団がぞろぞろ五人も入ってきた。

「いらっしゃいませー」
 声まで震えるようだった。
「ええー? マスター、いつからよ?」
「たったいまから。亜紀ちゃんです、よろしくお願
いしますね」と客をあしらいながら、こそっと言う。
「早いうちは部下たちで、このぐらいの時間から上
が来るんだ。いつもそうさ」
 亜紀はうなずき、洗い場からホールへと出てお冷
を用意してトレイを持った。
 手が震える。四十から上の男性ばかり。歩み寄る
爪先から視線が上がり、服を透かして体の品定めを
されるようだ。

「亜紀ちゃんだったね?」
「あ、はい、よろしくお願いします」
「うんうん、可愛いねー。おーいマスター、手なん
て出しやがったら許さねーぞ! あっはっはっ!」
 カーっと頬が熱くなる。お冷を置こうと少し屈む
とタイトスカートにヒップが張り詰め、後ろを向け
ば女のラインが際立ってブラが透ける。
 裸でいるようで恥ずかしくてならなかった。
 なのに心は浮き立って、私は女よ、教師じゃない
の。職務から解放された気楽さが亜紀を一人の女に
変えていた。

 五人揃って日替わりのランチセット。今日はベー
コンエッグの焼きサンドにスープ、アフターでコー
ヒーだ。できるかたわら亜紀が運ぶ。
「あーきちゃん」
「はぁい?」
「呼んでみただけー、あははは!」
「もう、なんですかそれー」
 楽しい。堅苦しい学校とは世界が違う。ヘコんで
いた心が浮き立って亜紀はどんどん笑顔になった。
 ぞろぞろと帰っていくとそこで客が切れ、厨房に
二人きり。
「終わりました」
「うん」
「あっけないほど」
「うん」
「ちょっとね」
「うんうん」
 洗い物をしながら、ポニーにまとめた髪のせいで
濡れだす目が隠せなかった。

「あのねマスター」
「うむ?」
「頬の傷、素敵です」

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