快感小説

着せたい男と脱ぎたい女(十三話)

 軸のない女心に強い芯が刺さるように知明の勃起
が体の奥へと入ってくる。
 ベッド。鋼のような男の体は腿を開き切った亜紀
の上にかぶさって、亜紀はあまりの悦びにあえぎな
がら腕をまわして抱きすがる。意識が消えていく快
楽。二十九にもなってはじめて味わう絶頂だったが、
亜紀には浅くしか達しなかった理由はわかりきって
いた。
 子犬が震えるように小刻みに揺れた女体に引き攣
るような力がこもり、背を反らせて乳房を突き上げ、
強い男をリフトするようにアーチに反って、最後の
一瞬、悲鳴にも似たソプラノを一声奏でて亜紀はの
びた。

 のびた。ノックアウト。まさしくそんなピークだ
った。白くなっていく意識に七色の光が飛び交った
次の瞬間、漆黒の闇が来た。息もできない。あふあ
ふと口を開けるが息が吸えない。
 セックスではじめて失神した亜紀だったが、男が
萎えてヌルリと抜けていく感覚に、無我夢中で虚空
をひっかくようにして、亜紀は離れていく男の体を
追いかけた。一瞬の失神。目覚めたときには揺らぐ
視野の中に七色の星がチラチラ舞った。
 女を降りて仰向けに倒れて横たわった男の上に亜
紀は死に物狂いで這い上がり、自分を失神に追い込
んだ男の存在を全身の肌感覚で確かめようとした。

「知明さん」
 息が荒く声が長く続かない。酸欠。胸を開いてす
ぼめて呼吸する姿は、溺れて岸に這い上がったとき
のように恐怖さえも伴うもの。息ができない。
「はぁぁ、はぁぁ、んっ、ぁはぁぁ!」
 亜紀は笑った。自分がひどく滑稽でちょっと笑っ
た。笑いながら中途半端に長い男の髪を手ぐしで梳
いて、右の頬の傷を見つけ、声もなく見つめている。
 頬骨から頬、頬から顎の横まで、焼けただれた引
き攣れが残っていたが、醜くひどいというほどでも
ない。亜紀は傷をそっと撫でて、知明と目を合わせ、
微笑んでキスをせがんだ。

「気にしてるわけじゃない」
「うん」
「喫茶店だからね、知らない人が怖がるだろう」
「うん」
 傷を撫で、傷に沿ってキスを這わせた。
「素敵です。カッコいいと思います。あたしね、は
じめて逝ったわ。セックスではじめて逝くって感じ
がしたの」
 知明はちょっとうなずき、亜紀の頭を抱き寄せよ
うとしたのだったが、亜紀は頭を振って手を拒み、
胸板に這い上がって知明の二つの眸を見つめていた。

「ずっとそう。ずっと前からずっとそうなの。好き
な人ができてもね、ダメになったときのことが先に
立ってのめり込んでいけなかった。のめり込んで壊
れたらあたしはきっと崩れてしまう。そうやってガ
ードして、ガードしながら抱かれていても浅くしか
感じない。ずっとずっとそうだった」
「亜紀、もういい」
「ううん聞いて。聞いて欲しいの。彼と決定的に壊
れたのは半年ほど前ですけれど、最初から打算の混
じる愛だった。ここで壊れたらあたしはもう若くな
いって思ってしまい、だけどイザとなると、壊れる
ことは目に見えてる、届けを出す前のいまなら引き
返せるって思ったの」
「うむ」
 知明は亜紀の頭をそっとそっと撫でながらまっす
ぐ目を見て聞いていた。

「いまは違う。あなたが好き。壊れてもしあたしが
崩れたって、ベッドで失神した記憶だけで生きて行
ける。そう思うの。運命には逆らえない。あなたが
恐ろしい火に立ち向かったように、あたしようやく
その気になれた。愛してますあなたを」
 信じ難いほど強い言葉だと思いながら亜紀は言い、
強い言葉だと感じながら知明は聞いていた。
 抱き寄せようとする腕に今度こそ従って亜紀は男
の胸に頬をあずけた。くっきりと強い心音が鼓膜に
届く。

「うむ」

「え?」
 胸の奥から響く声に、亜紀は一瞬にしてうとうと
していたことに気づく。心の底に堆積していた汚物
がきれいさっぱり流されて、ただ安堵につつまれて
いる。
「寝ちゃったみたい」
「ふふふ、気が済むまで枕にしてろ。髪を切る」
 唐突と言う。亜紀は顔を上げて知明を覗き込む。
 知明は虚空を見つめ、しかしその双眸には強い意
思がみなぎっているようだった。

「いい女だ」
「いい男だ」

 二人は微笑み合って抱き合って、揃ってそのまま
沈むように眠っていった。

ピックアップ!


ウェブマスターはこちら リアル素人CLUB-XXX リアル素人CLUB-XXX

ここはハード性小説

SM~FEMDOM、レズと
官能小説らしい物語を集めてく。
新刊案内

レズ官能小説の二編集
自虐オナニー~レズ
●指だけじゃ飽きたらなくて
レズSM(露出)
●同名小説


好評シリーズ、発売開始!
官能ホラー
闇刈いわく堂シリーズ特別編
『白湯鬼さん』


~飾られる女たち~
インテリアドール紫織編
若く美しい性人形の日々へ


~飾られる女たち~
インテリアドール芙美子編
しっとり落ち着いた大人のSM

登録サイト





スペシャルリンク















ブロとも一覧

SM~猟奇の性書~官能

~ 艶 月 ~   
テキストリンク
アクセスランキング
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる