快感小説

抜け落ちたピース 一話

 この景色をどこで見たのか・・。
 考えようとしたんじゃなくて、ぼんやり想う。

 山景色のジグソーパズルの、そこだけ抜けたピースの
 穴から覗くような海。
 山を縫い、深い緑に慣れた目に、ふいに飛び込む紺碧の色。
 いつだったか見たことのある景色・・でも、どこで? いつ?
 ほんの一瞬、目に焦点が戻ったけれど、
 しかしすぐにぼやけていった。
 あの頃ここへ来たことは考えない。考えたくない・・いいえ、
 考えられない。車窓です。海の青は通り過ぎて行っただけ。
 ふたたび初夏の緑に窓が塗られた。

 私はどこへ行くのでしょうね。
 目的地はあるのですが目的がわかりません。

 私というジグソーパズルは一度できたの、完成したわ。けれども
ある日、ピースが一枚、忽然と消えていた。
どこかにあるはず。捨てた覚えはないものね。きっと、ある。
でもどこに・・それを探す旅に出た。書き置きをしてきたわ。

 私の部品を探してくるわね。それだけ書いて家を出た。

 それはたぶん、たいしたピースじゃないんです。なくても充分生き
られる。名前の一字に似ているわ。私の名前は福崎幸子。
 その一字、「幸」の字が見当たらない。
 なくてもいいのよ、生きられる。「子」が残れば女でしょう。人並
みに「奥さん」て呼ばれるわ。傍目にはそれなり豊かな暮らしがあっ
た。

 福崎〇子・・あなたはいったい誰なのかしら・・。



「なるほどね、それで「幸」の字を探しに来たっていうことか」
「そうね・・きっと、そう」
「ふふふ、うまいことを言う。ううむ、なるほどなるほど」
「納得しないでくださいよ、そんなこと」

 その男、本城。幸子がここへ来て二日目のこと。レンタカーで不慣
れな山道を走っていて、材木を満載したダンプに遭遇。左に寄せ過ぎ
て脱輪した。タイヤが溝にはまってしまった。車の少ない山の中。通
りがかったジープが救ってくれた。本城だった。

「福があって幸がないということか」
「え?」
「あんた福崎幸子だろ」
「なるほどね、それこそうまいかも・・うふふ」

 本城。地元のゴリラ。まさにゴリラの風貌だった。幸子は、救って
くれたお礼に昼食でも思ったのだが、山の中には何もない。

「なら一緒に来るか?」
「どこへ?」
「山。ウチの小屋へ行くところだ」
「ウチの小屋?」
「山を持ってる。道具の手入れに行くんだよ」
「道具って?」
「チェーンソーの調子が悪い」
「それがお仕事?」
「そう。家が代々キコリやってる。弁当あるから半分やるさ。なあに
ドカ弁だから気にするな。いつも喰い切れずに森の肥料さ。すぐそこ
だ、来るか?」

 幸子になぜか迷いはなかった。山を走ってみたくてレンタカーを借
りただけ。行く先なんてなかったし。
 すぐそこ・・確かに、すぐそこだった。
 車では入って行けない山の中。車を置ける所まではすぐそこだった。
 車を停めて三十分も歩いた頃か・・初夏の山。汗だく。

「ねえ、まだなのー? 遠いぃ!」
「やかまし。もうすぐだ」
「何がすぐよ、ウソばっか、山ん中に連れ込んで乱暴するでしょ」
「あん? 何か言ったか?」
「いいえ別に! あーあ、山に迷ってゴリラの餌食か・・」
「わっはっはっ! うまい! 弁当もうまいぞ。おふくろは料理がう
まいんでね、わっはっはっ!」

 このゴリラ、頭がいい。ツーカーの切り返し。幸子はちょっと意外
に感じて横顔をうかがった。見定めた目色の男らしい男・・しかしや
はりゴリラである。
 くねくねうねる山道を、先に立って逞しく歩くゴリラを見ていて、
幸子は不思議な思いにかられていた。妙に落ち着く。
 丸刈りヘッド。首がぶっとく、Tシャツの背中もジーンズの尻も、
まさしくゴリラに服を着せたよう。
 深い山に美女と野獣。襲われれば、シャツ、短パン、引っ剥がされ
て喰われてしまう。なのになぜだか、ほっとできるゴリラなのだ。
 普通サイズのナップサックが、肩に引っ掛けられて小さく見える。

 緑にうねる山の起伏。そこだけぽっかり拓けた林床に、小さな山小
屋が見えてきた。小屋には違いなかったが、道具をしまう納屋のよう。
朽ちかけた板小屋だった。
「ほら、あそこだ」
 立ち止まって、あたりを見渡す。
「ほんとに凄い山・・樹の海みたい」
「うむ。伊豆というと海しかないように思うだろうが山の中はこんな
もんさ。あんた、どっから来た?」
「大宮」
「知ってる、茨城だろ」
「埼玉です!」
「まあいい、東京のあっちにゃ違いねえ、わっはっはっ!」

「さあ着いた」
 廃材と間伐材で作ったような、ほったて小屋。そのヨレヨレの板戸
についた南京錠をゴリラが開ける。
「ひえーっ」
 幸子は、腕時計を見ながら呆れ声。
 振り向くゴリラ。
「どうした?」
「四十五分も歩いてるー」
「ふん、あんたが遅いからだ、俺一人なら三十分もかからねえ」

 戸車もない粗末な板戸をガタビシ開けて、中に入ったマウンテンゴ
リラが、黄ばんだタオルをひっつかんで顔を出し、「ほれよ」と言っ
て投げてよこす。
「何よこれ?」
「汗だくじゃねえか」・・と言いながら斜面のさらに上を指差すゴリ
ラ。
「すぐ先に沢がある。飯の前に水浴びしてこい。俺も行くから」
「ええーッ!」
「あん? あ、違う違う、わっはっはっ! 俺はこれだよ」・・と言
って、小屋からボコボコにへこんだ大きなヤカンを持ち出すゴリラ。
直火で沸かすのだろう、ススがついて真っ黒け。
「水をくみに行くだけだ。湯を沸かして待ってるから水浴びしてこい」
「でも、こんなところで?」
「いいから行くぞ! シャツが濡れて花柄ブラが透けてるじゃん、イ
ロっぽいが・・わっはっはっ!」
「や、ヤだ・・」

 少し行くと一跨ぎの流れがあって、流れに沿って少し下ると、岩と
岩に囲まれた流れの溜まりがあったのだった。形はいびつだが、内風
呂の浴槽ぐらいの大きさで透き通った清水の溜まり。
 ゴリラはヤカンを流れに沈めて水だけくむと、「冷たくて気持ちい
いぞ。毒蛇がいるから気をつけろ」・・とだけ言い残し、一人さっさ
と引き返してしまうのだった。

 女一人が取り残されて呆然・・どうしよう。

 鬱蒼とした森。沢を境とするように、杉林と原生林が分かれている。
 獣道さえなさそうな山の中、野鳥がそこらじゅうで啼いていた。

 シャツ、ブラ、短パン・・パンティだけは脱げなかった。

 こちらの見えない斜面のコブの向こう側で、何もかもを見透かした
ような声がした。

「プールじゃねえんだ、ちゃんと素っ裸になって洗ってこいや! が
っはっはっ!」

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