快感小説

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蒼い月~ディープランナー(二話)

「有給たまってるぞってお達しがあったのよ。ほら、サー
ビス残業がいけないって話になって、まず残業はするなで
しょ。有給だって取らないとボーナスに積み増ししなけれ
ばならなくなるから」
「名目だな」
「そうなのよ、見え見えだわ。それと、ねえ篤史、あたし
会社辞めるかも」
「居づらいか?」
「いまはいいのよ。でも先々のことを思うと潮時かなって。
辞めてパートでもした方が気が楽だし」

 ベッド。篤史はふわりと妻に重なる。おざなりな性では
なかった。愛を物語るやさしい愛撫に美由起は震え、溶け
合っていけるのだったが、きぃきぃ悦ぶほどの深さはない。
不感症ではない。悦びはもちろんあるのだったが浅い気が
した。それまで気にしたこともなかったのに、あの声を聞
いてから薄雲のようなものが常に心に漂っていた。
 裸で抱き合い、夫の背を撫でながら、美由起はなぜか醒
めていた。今夜は特に浅かった。

「久びさ走ってみようかなって」
「ソロで?」
「気晴らしよ。有給使って三日ほど。いい?」
「ああ、いいよ。心を洗ってくればいい」
 美由起は薄闇の中で篤史の眸を見る。理解あるやさしい
人。不倫なんて考えられない。職場でのストレスとあの声
で心がちょっといじけている。悶々とはしていない。もや
もやを晴らす旅。このとき美由起は、わかってくれる夫に
たまらないものを感じていた。
 美由起はバイクに乗っていた。250CC。学生の頃からバイ
クをはじめ、いまのは二台目。乗りはじめてすぐ篤史と出
会い、篤史とはクルマばかりだったから、いまではときど
き近場で乗るぐらいのもの。ロングなんて何年も出ていな
かった。

 目的地のない旅。宿を決めずに出たことのなかった美由
起にとって、それだけでもドキドキできる冒険だ。
 九月の末。季節の変わり目で週中の平日だから、女一人
の宿ぐらいどうにでもなる。最悪一人でラブホに泊まって
もいいと思った。夫と離れて独りになるのは久しくなかっ
た。風を感じて走ってみたい。もやもやを吹っ切ってしま
いたい。
 レーシングスーツに似せた白い革のツナギを着る。その
ことにしたって久しぶり。近場で乗るときにはジーンズ姿
が精一杯。オイルを塗ってしまい込んだツナギを出して心
が踊る。
 解放されたい。仕事のことにも答えを出すつもりでいた。
もういい、辞めようと思いながらも踏み切れない。そうい
うことももやもやの要因だと思っていた。

 荻窪の街を出て東名高速へ。関越は夫とスキーで走って
いたし、中央道には海がない。すこーんと抜けた海が見た
い。伊豆か、それでもなければもっと先まで。二泊三日を
フルに使おう。赤いヘルメットから長い髪がそよいでいる。
夏の尻尾が振り回されて寒くもない。ツーリングにはちょ
うどいい季節だった。

 厚木インター。伊豆に行くにしても近すぎる。
 沼津インター。伊豆ならここなのだが、もう少し風を感
じていたかった。
 スピードメーター100キロ手前でのんびり流す。怖がり
で飛ばせる方ではなかったし、テクニックを競うつもりも
もちろんない。
 富士川SA。軽く食べて地図を見る。そうか由比。あのあ
たりは東名唯一の海沿いに出るルート。台風が来ると決ま
って通行止めになる、それだけ海に近い場所。
 と考えて、静岡あたりで降りようと決める。静岡なら南
へちょっと走れば太平洋が見渡せる。

 由比PA。自販機とトイレぐらいしかないパーキング。平
日なのにクルマがかなり停まっていた。ここの景色を知っ
てる連中が休む場所。防波堤のすぐ内側がパーキング。バ
イクを入れてエンジンを停め、ヘルメットをシートの上に
置いておき、数段の段を登って防波堤から顔を出す。
「わぁぁ広いなぁ。太平洋だわ、やっぱり違う」
 もやもやしたものがすーっと消えた。実感として消えて
いった。
 防波堤に沿ってテトラが入れられ、左を見ればアーチを
描き、右を見ればまっすぐのびて、見渡す限りの青い海。
 東京側となる左から、ゆっくり視線を流してやって右へ
と見渡す。船さえも存在しない、だだっ広い海があるだけ。
今日はベタ凪。かすかなうねりが波となってテトラで壊さ
れ、爽やかな潮の香りに変化する。

 と、そのとき。

 右側へと流した視線を、気配がして左へ戻したときだっ
た。数メートル離れて背の高い男性が立っている。その横
顔に見覚えがあったのだ。もしやと思い見つめていると相
手がこちらへ眸を向けた。
 やはりそうだ、間違いない。
 しかし声をかける勇気がない。どうせ私のことなんて覚
えていない。大学時代の一年先輩。スキー部。憧れていた
先輩だった。その頃美由起は天文クラブで、夏の夕刻、暗
くなるグランドに望遠鏡を据えたりして深夜の観測に備え
たもの。そのときに、夕陽に染まるグランドでトレーニン
グをしていたのが彼。

 本山真司、一つ上のはずだからいまはもう三十一歳。あ
の頃の精悍な面影がまるで変わらず残っている。日焼けし
て真っ黒だったし、黒いTシャツの胸板が隆起して逞しい。
髪はあの頃からスポーツカットで、それはいまも変わらな
い。
 部室に置かれた望遠鏡や三脚を運ぶとき、何度か話した
記憶があった。しかし十年ほども前のこと。私なんて覚え
られているはずないと美由起は思う。

 目と目が合って美由起は目をそらせない。ハンサムでは
ないが、とにかく精悍でカッコいい。一瞬にしてあの頃の
キャンパスに戻れていた。憧れて、でも彼には女の子が群
がっていて、とてもそばには寄れなかった。
 しかしこのとき美由起は内なる声を聞いていた。
「またしてもポーズ? 体裁よく逃げるつもり? 生涯会
えないかも知れないのよ。それでいいのね?」
「嫌よ、そんなの!」
 心の中にきっぱりとした声がする。美由起はちょっと笑
って浅く会釈。歩み寄ってみたのだった。
「本山さんですよね?」
 相手は一瞬探るような目色となったが、けれどもすぐに
目を見開いて笑う。
「おまえ?」
「覚えてた?」
「香月だろ? 天文の美由起だよな?」
「そう! 覚えててくれたんだ」

 名前までも。美由起の笑顔が綺麗に咲いた。

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