快感小説

蒼い月~ディープランナー(三話)

 本山はジーンズに黒の革ジャケ。もちろんクルマだった
のだが、クルマは白い商用バンで『本山食品』。美由起の
バイクのすぐ横に停まっていた。クルマに乗せられて助手
席に座る。なんとなく生臭い空間だった。
「稼業を継いだのさ。スポーツ特待である電気メーカーに
いたんだがいろいろあってね。選手としては諦めた」
 住んでいるのは清水だったが、静岡と、もう一か所、沼
津の高校のスキー部で強化コーチをしているらしい。今日
は本業の仕事ではなく沼津からの帰り。朝イチで学校に呼
ばれていた。これが静岡の高校だったら会うことはなかっ
た。

 本山は独身だった。

「あたしは荻窪にいるわ。結婚して共働き。私の方にもい
ろいろあって、いまの仕事も辞めようかなって思ってるん
だ」
「そか。そんで? どこまで行くつもりだ?」
「静岡あたり。決めてるわけじゃないけど、なんとなく」
「ホテルは?」
「それも決めてない。こんなことはじめてだからドキドキ
なのよ。あたしダメなのよ、前もって予定してないことは
どうにも苦手」
 本山は笑って、クルマの窓を開けながらタバコに火をつ
けた。

「あんときもそうだったな」
「あんとき?」
「覚えてないか? おまえら天文がトラックのフィールド
エリアに望遠鏡を据えていて、キャンプみたいにテントま
で張ってただろ」
「あ、うん、あったねそういうこと。懐かしいな」
「そんで暗くなってきて俺がグランドを出るとき、おまえ
は望遠鏡のセッティングしてたっけ。こんなところで何を
観るって訊いたら、月よっておまえは言った」
「そうだった?」
「シャワーして出てくると暗くなってて、満月が浮いてい
た。ちょっと見せてくれないかって言ったら、いいよって。
それでそんとき並んで座って、月のことでも話してくれっ
て俺が言ったら、おまえしどろもどろになってやがった。
前もって言ってって。急に言われても困るって」

 それはあなたが好きだったからじゃないと、出かかった
言葉を美由起は笑ってごまかした。

 言われてみれば、並んで座って少しだけ何かを話したよ
うな記憶はあった。夜空を見上げて憧れた男性に寄り添わ
れ、生理的な恐怖からか記憶からさえ消そうとしたのかも
知れなかった。十年あまりの年月も消しゴムになっていた。
「今度ゆっくり話したいね」
「今度っていつだ? おまえあの頃からそうだったな。今
度、そのうち、いつか。そんなことばかり言ってたように
覚えてるが」
「そうだっけ」

 美由起はちょっと悲しくなった。相手の出方で自分を決
める。あの頃は特にそうだったと思ったからだ。
 ぽんと肩を叩かれた。
「よし、三日あるなら清水へ来い。三保の松原なんていま
や世界遺産だぜ。海がいいぞー」
「ホテルとかある?」
「叔母が旅館やってるよ、ちょっと待て」 
 本山は携帯を取る。
 女友だちが一人、部屋はあるか。じゃあ頼む。晩飯はう
んと豪華に。こちらの都合も訊かずにぐいぐい進める。
 美由起はちょっとクラクラしていた。圧倒されるパワー
というのか、男のエネルギーを感じる。かつてはスキーの
選手だった。コンピュータが仕事の旦那とは人種が違う。

 本山は親指を立てて白い歯を見せて笑う。
「おっけ」
「おっけって、ふふふ、意外に暴君? あははは」
 楽しい。女心が転がるようだ。
「旅館って言っても旧館と新館があってな。旧館は古臭い
から新館にしてもらった。三階建てだが丘だからすこーん
と海だぜ。部屋はダブル。季節外れでスカスカだとさ」
「うんっ、ありがと」
「じゃあ行くぞ、どうせ下手っぴなんだろうから俺のケツ
について来い。先にちょっと仕事があるから晩飯の頃にで
も部屋へ行く。話せるぞゆっくり」
「う、うん」 

 美由起はうつむく。ダブルベッドのある部屋に二人きり。
それも、あの頃憧れた男性と二人。気持ちが学生に戻って
しまい、そうなると恋心が燃え上がる。
 それに宿ではきっと浴衣。独り旅だと考えてジーンズの
ミニスカ丸めてザックに詰めてバイクの尻に縛って来ただ
け。美由起は怖くなっていた。
「どうした? 怖いんだろ?」
「あ、うん、だって」
「うははは! なら、まず壁ドンだ。それから、ぶっチュ
ー。押し倒して、嫌ぁぁん。わっはっは!」
 震えた。体より心が火照って熱くなる。こういうタイプ
が苦手だった。体育会系というのか、とにかくパワフル。
野獣に思えて圧倒される。
 それでクルマを降りようとしたとき、背中に声が降り注
ぐ。

「美由起」
「は、はいっ?」
 ビクとした。呼び捨て。胸がキュンと苦しくなる。
「会えて嬉しいよ。仲良くしような」
「あ、あ、うん。あたしもよ、びっくりしちゃった」
 降り立ってドアを閉め、すぐそばにバイクに歩み寄りな
がら、美由起は胸を開いて潮風を吸い込んだ。
 心臓がヘンだった。ドキドキしている。どうしよう。壁
ドンなんてされてしまえば胸にすがってしまいそう。
 ヘルメットをかぶりバイクをまたぎエンジンをスタート
させる。白いバンが先に出る。後を追ってバイクが動く。
 後ろに着いて走っていて、空荷のバンでルームミラーが
はっきり見えて、彼はしきりに後ろを気にする。二つの眸
が私を見ている。見ていてくれる。
 リードされてると感じたし、このとき美由起はベッドで
のたうつ素っ裸の女の姿が想像できた。

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