快感小説

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レズ小説 デルタ(三話)

三話~殺風景


 四階建ての三階角部屋、305号。留美の部屋。ありきたりな白い壁紙を貼った
アパートの造りだったが、フロアは板の間を模したダークトーンのクッションフロ
ア。その部屋は、築二十五年の建物の見栄えよりもずっといまふうにリフォーム
されていた。
「じゃあいまはもういないってこと?」
「そうなんですよ。ここへ越す前にあの子が越しちゃって。彼が越したからそっち
へ行っちゃったんです」
「なのに来ちゃった?」
「友達がいたから来たわけでもありませんし、美鈴さんと知り合えたのが大きかっ
たなぁ・・その頃はまだよく知らない人だったんですけど、何て言えばいいのか、
奔放に生きてる女の先輩って感じでベルカフェにいるのが楽しくて・・」
 ベルカフェの隣りにあるランジェリーショップに大学の一年先輩がバイトしてい
た。てっきりそれがあるから越して来たものと思っていたらそうでもないらしい。

 六畳に加えて四畳相当の洋室が並ぶ留美の部屋。狭い方にシングルベッドと
小さなドレッサーが置いてあり、広い部屋には家具らしい家具もなく、小さなテレ
ビがあるだけだった。服そのほか細々としたものは造り付けのクローゼットにしま
われてあるようだ。
 綺麗にされているというよりもガランとした殺風景な空間。それがまるで留美の
心の空洞を物語るようだった。麻紗美はそれとなく部屋を見回して言った。
「ずいぶんすっきりしたお部屋なのね?」
「越して来て間もないってこともあるんですけど、そのときは、いつまた越すかも
知れないって思ってましたし、前のアパートにいろいろあったものも捨てちゃっ
て。断捨離なんです」
「そうなんだ?」
「ミニコンポとか古いパソコンとかギターとか。大きなベッドもありましたしデスクと
かも・・彼の思い出が染み付いちゃってて・・」
「ふーん・・そうよね、そういうことってあるわよ」
 留美の部屋には椅子もなかった。デスクさえないからだ。広い方の洋間には
フロアに丸いカーペットが敷かれてあって座布団で座るようにされている。カー
ペットに合わせたような丸く白いローテーブル置かれてあり、その前に黒い三段
のカラーボックスを横に寝かせて小さな液晶テレビ。テレビまでが新品のようだ
った。薄くコンパクトなノートパソコンも新しい。

「先にお茶淹れますね」
 キッチンへと背を向けた留美のヒップに目をやった。張り詰めた若いカラダが
まぶしい。
「ありがと。留美ちゃんて演劇部だったんですってね?」
「女子大のね・・でも、演劇っていってもそれなりの部活でしかなかったし」
「劇団とかは目指さなかった?」
「気持ちはありましたよ。いまでもないとは言えないけれど、さすがいまは・・しば
らくは気持ちが動かないんです。それに劇団なんて甘い世界じゃないんだし、あ
たし程度の才能では難しいですね」
 留美は、外から戻ったままのスタイルでキッチンに立っていた。日本茶を先に
用意して、それからパスタを茹でてソースを温める。麻紗美がすると言っても留
美はきかない。細々と身の回りの世話をするのが好きなようだ。

 それにつけても、下に座って視線が下がると、留美のマイクロミニからヒップぎ
りぎりの白い脚線が露わ。若い。まばゆいボディが想像できる。スタイルがいいと
麻紗美は思った。グレーアッシュに染めた長い髪がいかにもいまふうの跳ねっ
返りを思わせるのだが、留美はじつはおとなしいタイプの娘のようだ。
 そんな後ろ姿にちょっと眉を上げながら麻紗美は言った。
「癒やされてるんだね彼女に?」
 流しを向いたまま留美は応じた。
「癒やされてますね・・と言うか、それはママがそう言ってくれますし。ママって、
それを言うと怒るけど。おばさん臭いからおやめなさいって。ふふふ、可愛い人
なんですもん」
「美鈴さんが留美ちゃんに癒やされてるってこと?」
「そうなんですよ。あなたと出会えて嬉しい嬉しいって。いい女よ、抱きたい抱き
たいって言ってくれるの。どこまで本気なんだかって最初は思ってましたけど、
ママってすごく繊細で、しなやかで・・それでいて嫌味のないストレートって言う
のかしら・・どうしようもないセックスを感じるんです。恥ずかしいけど濡れちゃう
の。見つめられて微笑まれるとジュンと濡れちゃう・・」
「抱かれてもいい?」
「いいですね。最初は、わぁレズって退いてましたけど、あたしそっくりで淫乱な
ところが微笑ましくて」
「留美ちゃんも淫乱?」
「きっとそう・・あははは。ママにオナニーしろって言われて、素直に言うことをき
いてみようかなって思えてきて・・失恋したときお化粧ものらなくなって最悪だっ
た肌もすべすべに戻ったんですよ」
「・・そんなもんかな?」
「そんなもんです。ドライブに誘われて・・そのときあたしミニフレアだったんです
けど、風があってそこらじゅうでパン見せしちゃって・・それもTバック。確かに震
えが来るんです。ああ見られてる・・恥ずかしい・・どうしようと思えば思うほど濡れ
てきちゃって。それでそのとき・・」

 と言いかけたものの、さあできましたよとトマトソースの魚貝のパスタを手に振り
向く留美。留美の眸が濡れたように輝いていると麻紗美は思う。ドライブのときの
ことを思い出しているのだろうか。
 テーブルに置いて下に座ると、マイクロミニは鮮やかなブルーパンティのデル
タをまるで隠せなかった。デルタはレースではない。水着のようにあっけらかん
とご開帳といった様子。女子大で女ばかりの中にいた留美にすれば当然のこと
なのかもしれないが。
 麻紗美はパスタにフォークをのばしながら、留美の目を見つめて行った。
「それでそのとき? どうしたの?」
「ああ・・ふふふ、ママがね、スカートの下からお尻をそっと撫でてくれて・・ゾゾー
ッて震えが来ちゃうほど、あたしは感じた・・でもそれだけ。あのときもしホテルっ
て言われていたら行ってたのにって思うんですよ」

「ふーん・・ねえ、正直に応えてね」
 麻紗美はフォークに巻いたパスタを口に運びながら言った。
「あ、はい?」
「セックスって好き?」
 留美は弱くうなずきなら言う。
「・・好きなんでしょうね、きっと。いっときはもう貝みたいに閉ざしてましたが、マ
マに刺激されているうちにどんどん女に戻っていける。あたしはそれをママの愛
だと感じてます。ママは言うわ、羞恥ってじつは心地いい・・それが女を牝に変
えていくんだって」
「SMみたいね」
「そうそう、あたしもそんな気がするんですがママは違うときっぱり言う。『それは
ね留美ちゃん、あなたの性が同性の私に対しても解放されていくからよ』って。
どういう意味なんだか・・」
「同性にも解放されるか・・エッチするのに性別は無関係?」
「ですね、だんだんそう感じてます。心を向けてくれる相手に対して、あたしだっ
て心を向けたい。いますぐ男性はパスですけど、女のカラダは濡れたがってい
ますから、同性の方が気楽に心を重ねていられるなってカンジですかね」

 そのときの留美の笑顔はひどく弱く、ひどく淫らな牝の横顔・・麻紗美は内心ハ
ラハラしていた。満たされない想いなど誰もが持つ女の苦悩。私にもある。そし
てそれは相手が異性だと妙なプライドもあって見せたくない部分でもあるはずだ。
 若い留美に、麻紗美は自分と同質の本音を感じ、留美の背後に留美を導く美
鈴の意思を感じていた。
 この微妙な嫉妬心はなんだろうと、麻紗美はそれとなく留美のスカートの奥へ
と目をやった。

 夫への愛には自信があった。しかし生殖の性では満たされない何かが残る。
 夫婦という関係の中では逆に曝け出せなくなる何か・・快楽に貪欲な牝の本音
なのかもしれないと麻紗美は思った。
「・・でもね留美ちゃん」
「はぁい?」
「自分を安く見せることはないんじゃない。ここは三階よ、高層マンションじゃない
んだし、街中で見せすぎると危険だわ、怖い人だっているんだから」
 留美はちょっとうなずいて、濡れたように輝く視線を麻紗美へ向けた。
「露出してるつもりじゃないんですよ。自分に素直でいたいと思うだけ。男性の視
線にはトキメクし、女性の視線には蔑まれたいと思ってる」
「蔑まれたいですって?」
「だって・・捨てられちゃったし、あたし。それにあたしってそうですもん、セックス
好きだしMっぽいところがある・・とりすましていたって内心ドロドロなんだし。女
の人たちに蔑まれると、恥辱って言うのか、そういうものを感じれば感じるほど濡
れてくるんです・・ふふふ、困ったカラダだと思ってますけど」

 失恋が自信を奪い自虐的になっている・・と麻紗美は思う。
 もういい話題を変えよう・・としたのだったが。
「パスタ美味しかった、ごちそうさま」
「いいえ。いつでもいらしてください、あたしはいつも独りなんだし。独りぽっち」
 せつない言葉、寂しい眸・・可愛いわ・・母性が動くと、このとき麻紗美は自覚し
た。
「あなたさっきスーパーで・・ほら、私がお尻を叩いたとき」
「ああ・・ンふ」
 恥ずかしそうな伏し目。鼻に抜ける吐息のような笑い声。サラリと垂れた長い髪
に嬉しそうな微笑みを隠している。
「ベルカフェの帰りって、あたしいつも欲情してます。美鈴さん意地悪だし。お姉
さんと知り合えてこうして話せることも嬉しくてたまらないし、お尻を叩かれてあた
し、大きなものにやさしく叱られているような気分になって・・そしたら・・」
「濡れちゃったんでしょ?」
「・・トロリって」
「あらあら正直な子ね、そんなに濡れた?」
「はい・・寂しいの・・ほんと言うと寂しくて壊れそう・・」
「・・ごめん」
「ううん、いいんです、あたしのこと嫌わないでくださいね」
「嫌ったりするもんですか、好きよ留美ちゃん。立ち向かってるもんね女の自分
に。逃げてない」
「違いますよー、立ち向かってるのは美鈴さんです。あたしは大きな力に引っ張
られているだけだから・・弱いからあたしって・・」

 ゆったりとした食事を終えても時刻は九時過ぎ。夫の戻る終電までには時間が
余る。麻紗美は小さな丸テーブルの上に置いた留美の手をそっと握った。留美
はちょっと驚いたように、笑う目を丸くする。ピュアな少女の瞳のようだ。
「私ね、いま留美ちゃんに性欲を感じてる。だけどそれってものすごく怖いことよ。
攻撃的になってるわ。Sっぽい目であなたを見ている。私に近づくと危険かもよ」
 そしたら留美の二つの瞳がますます潤んで輝いて・・涙が浮かんでくるように。
「嬉しいです。ママにも同じことを言われました。SMではないけれど・・支配とか
ではないけれど独占したい想いがあるって・・あたしに性欲を感じるって言うん
だもん」
 麻紗美はそっと白い手を撫でて言う。
「本心よ私の。留美ちゃんが好き。でもね、留美ちゃんが私にはできそうもないこ
とをしようとしていることには腹が立つ。嫉妬しちゃうの、私はそこまで曝け出せ
ない。怖いのよ。ガードを崩したらおしまいみたいな気がしてね」
 留美は頬を上気させてちょっとうなずく。それは性の餌食を覚悟した女の表情
のようだった。

 激しい性衝動を麻紗美は覚えた。自分の世界ではないと感じたレズラブが波
濤となって押し寄せてくる。かすかなサディズムも感じる。この子を組み伏せて
征服したい。胸の内へと取り込んでやり、抱き締めてやりたいと感じていた。
「ねえ留美」
 呼び捨てにされて、留美は直線的な視線を向けた。目がそらせないといった
ように・・若い眸が据わっている。
「は、はい」
「恥辱に濡れるなら壊してあげようか」
「ぇ・・」
 留美の白い頬が見る間に赤くなってきて、息使いが荒くなり、留美はそれを息
を止めて隠している。
「パスタのお皿を洗いなさい。全部お脱ぎ。恥ずかしい姿におなりなさい」

 ますます身を竦める若い留美を、優越に満ちた見下す視線で見つめていて、
麻紗美は、激しく反応しはじめる三十二歳の女の性器に戸惑っていた。

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