快感小説

新・如月夜叉(十七話)

十七話~海の穴ぐら


「ふんっ、とてもじゃないが、おまえたちにお紋は殺せないね。何やら不可思議な術を使うと聞いた。妖術さ。つなぎの女が二人いて・・それがお紋の手下二人なんだが、二人ともに元は甲賀のくノ一でね。追っ手の侍ども二十人ばかしに囲まれたとき、どこからともなくお紋が現れ、それはあたかも鳥のように宙を駆け、次々に首を飛ばしたと言うんだよ。お頭は人にあらずと言っていた。そのほか知らない。知ってることのすべてだよ、わかったかい」
 結は、それきり口を閉ざした。

 全裸とされて牢に放り込まれた結を横目にしながら、誰にともなく江角が言った。
 裸にしてみると、結というくノ一には体にほとんど傷がなかった。乳房は小さかったがしなやかな白い肌は美しい。市井に潜み、探ることを役目としていたに違いなかった。
「万座・・山深いところだと聞く」
「おそらくは三人、それが般若の正体らしい」
 と、嵐が応じた。
「それにしても、あのお紋が人にあらずとはどういうことか・・」
 江角は浅いため息をつきながら、ふたたび結へと目を流した。
「まあいいさ。あたしはちょっと向こうへ」
 嵐はそう言うと、結を見ようともせず江角の背を押し、皆が揃って上と戻った。

 万座と言えば上野国(こうずけのくに=群馬)。標高の高い山の中の湯治場だった。硫黄を多く含む濁った湯で知られ、戦国時代は武将どもが訪れては傷ついた体を癒している。江戸からははるかに遠く、いくら市中を探索しても見つからないはずである。
 それはともかく、お真知は牢から出されていた。地下牢はひとつしかなく狭すぎる。鉢合わせにさせたくない。
 面喰らったのはお真知であった。まさか出されるとは思っていない。
 結は、牢に入れられてからも敵意は失せない。一言も口をきかなかったし、隙あらばと狙う眼光。それで毒使いの名手であるお雪に、気が朦朧とする痺れ薬を作らせて飲ませてあった。

 そんなことでお真知は出されたのだが、結を載せた荷車が戻ったときには深夜。着いてまずはお真知を出して、それから結を閉じ込めた。
 江角が、取り上げてあったお真知自身の忍び刀を持たせてやる。
 お真知は声もなく呆然としていた。
「あたしに刀を・・」
「いいから持ってな、お燕に恥ずかしい真似はできまい」
 江角が微笑む。
 二階の八畳に布団が一組増えていた。嵐、江角と、お真知は同室とされた。 黒鞘の己の刀を拝むように受け取って、お真知は信じられないといった面色をする。江角はすでに寝間着の姿。江角は言った。
「庵主様は、尼となるほかにも生きる道はあるだろうと申されたそうだ。それは女としてという意味でだよ」
「そんな・・とんでもないことをしてしまったあたしなのに・・」

 江角は言った。穏やかな声だった。
「あたしらは如月夜叉。女の敵を葬るために江戸の町に潜む者。すなわちすでに影であって人にはあらず。おしろい般若の片棒を担いだ馬鹿な女は死んだということ。そなたももはや影ぞ。手を貸してくれるだろ?」
「それは・・けど、なんということ・・あたしは恥ずかしい」
「その思いを忘れないことさ。もう寝よう。そなたには、ここに残って備えて欲しい。今度のことには黒幕がいる。どう動くかわからない。手勢は多いに越したことはないのでね」
「・・はい」
 お真知は涙を溜めていた。死罪になってあたりまえ。救われた。お真知は泣いた。

 くノ一ばかりの忍び屋敷。香風には源兵衛がいてくれるが、こちらにはお燕がいて、戦いとなれば足手まといとなるだろう。女ばかりで戦うのは厳しい。六人目の夜叉の存在は頼もしかった。
 江角が笑って言う。
「頭を下げるならお燕だよ、あたしじゃないね」
「はい・・お燕ちゃんの身の上は聞きました・・」
 江角が、お真知の背に手を置いた。
「であるならなおのこと、おまえにとっては恩ある者ぞ」
「はい」
 お真知は泣いて平伏して再起を誓った。

 その頃、香風では・・源兵衛は香風に住み込むこととなっていた。瀬田はそう度々来られない。もちろん部屋を分けた住み込みだった。
 白の単衣・・寝間着姿の百合花が言った。
「そうですか、万座に・・」
「じきに考えを告げに来るでしょう。わしなど影のまた影よ。女の敵を斬ると言うなら真っ先に斬られていい男なもので。ふっふっふ」
「またそんな・・ほほほっ」
「それで庵主様、結とか申す女を牢に入れるため、真知は出されたようですな」
「それもいいでしょう、嵐がそうしたのなら考えがあってのこと。では今宵は・・おやすみなさい」
 百合花は己の部屋へと戻っていった。
 源兵衛がいてくれれば心強い。明かりを消して布団に入り、そっと目を閉じた百合花であった。お真知が改心してくれるなら嬉しい。忍びは所詮銭次第。仕える相手が悪かっただけのこと。

 嵐は闇の中を歩いていた。
 雨があがってもほとんど星のない空は漆黒の海をつくる。香風へのなだらかな登り坂が見えだして、しかし嵐は仕込み杖に手をかけた・・。
「何やつか・・」
 気配はあっても殺気を感じない。
 丘への分かれ道にある林の中から柿錆色の忍び装束・・頭巾をしないざんばら髪、髭面の逞しい男であった。
「どうやらお紋にたどり着いたようだな」
「彪牙・・」
 あのときのことを思いだす。まっすぐ迫る男心を拒めなかった。頬が赤らんでくるようだった。
 彪牙は言った。
「そなたらの敵を教えておこうと思ってな」
「何だって・・」
「お紋はもはや人にあらずよ」
 やはりそうか・・お燕を救ったのは彪牙。つまり見張られていたということだ。
 お燕を救ったからといって味方だとは言い切れない。
 彪牙は、そんな嵐の探る眸をものともせずに、顎でしゃくると「来い」と言った。

 海側へと降りていく。
 鋭利な岩場が連なる先に、入るとすぐに左に折れる浅い洞窟があった。蝋燭が持ち込まれていて、ワラを蒔いた寝床がこしらえてあったのだった。
「ふふふ・・こんなところに潜んでいたか」
「隠れるにはちょうどいい。嵐よ」
「何さ?」
「いい女だ・・」
 黒い影が拒む間もなく流れてきて、左腕一本で嵐を抱き留め、嵐の体がしなり、唇をさらわれた。
「・・江角がいるのに」
「まあな・・ともあれ座れや」
 嵐は言われるままにワラの寝床に腰を下ろした。

「まずは、これを見よ」
 彪牙は、懐から黒い布でくるんだ細長いものを取り出すと、硬い黒檀でつくられた小柄(こづか)のような短剣を手にして、そっと置いた。
 先が鋭い両刃の剣で、握りのところに・・仏の姿が彫られてある。
 嵐はちょっと首を傾げた。
 彪牙は言った。
「叡山の鬼天狗」
「・・鬼天狗?」
「お紋は天狗に身を捧げた女よ。不可思議な法力を授けられ、また天狗に守られているから殺しても死にはしない。人にあらず。もはや妖鬼さ」

 叡山の鬼天狗・・聞いたことのある話であった。
 織田信長の比叡山焼き討ちで、命からがら逃げ延びた若い僧侶が、女子供の別なく惨殺したあまりの非道、あまりの地獄に怒り狂い、黒い嘴と鬼のような角を持つ烏天狗に化身したと言われている。
 恨みに狂った妖怪僧。あの光秀をそそのかし、本能寺で信長にとどめを刺したのは鬼天狗ではないかとも言われている。

 しかしその後、鬼天狗は京の山から姿を消して、木曽山中で見かけたという話が伝わるぐらいで、そんなものがいるなどと信じる者もいなかった。
 蝋燭の炎が揺れて、彪牙の笑みを浮き立たせた。
「その天狗を封じるのがこの剣でな。さる高僧より与えられた剣だが、これをもってしか天狗を封じるすべはない。殺ったところで生き返る。天狗を灰に変える剣だそうだ。お紋のことは江角に聞かされただろうが、お紋はその後、木曽の山で死のうとした。天狗には人の心しか見えない。見目形など目に入らない。崖から飛んだお紋を天狗は救い、情を与えてそばに置いた。女房のように」
「それを信じろと言うのか?」
「ああ信じろ」
 まったくこやつは・・しゃあしゃあと言ってのけ、まっすぐ見つめる熱い視線。
 彪牙は言った。
「お紋を殺ったところで天狗がいる限り生き返る。お紋そのものも江角の知るお紋ではないのだよ。心してかかれ。言っておきたいのはそれだけだ」

 嵐は、それきり黙った彪牙に向かった。
「されど彪牙」
 彪牙は手をかざして嵐の問いを黙らせた。
「お察しの通りでね、天狗とお紋を消せと命じられている。そこまではそなたらの敵ではない。されど、それより深みを探ろうとするのなら・・」
「・・なるほど。今度のことは徳川の身内の企て・・」
「家中で配下の者が突っ走った。鬼天狗を抱き込んだのはそいつらよ」
「それで上は見過ごせなかった・・ということか」
「さあな。それ以上を言わせるな」

「な・・何をする・・」

 彪牙は、すっと身をずらすと嵐の肩を抱いて押し倒した。下になる嵐。見上げると毛玉のような顔の中で彪牙がやさしく笑っていた。
 女は男の眸を見つめたまま問うた。
「ひとつ訊く。江角をどうするつもりだ?」
「いずれ迎えに行くさ。あやつはキラ星のような女でね・・ふふふ」
「なのにあたしを?」
「いまも言った」
「何を?」
「物事には深みもある。考えず抱かれろ」
 嵐は可笑しくなって首を振り、着物の裾を割る男の手を迎え入れて腿を割った。
「江角を粗末にするな」
「おまえもな・・よく濡れるいい女だ・・ほうら、こんなに・・」

「ぁ・・ンふ・・待って」

 嵐は彪牙の太い腕をほどくと立ち上がり、自らすべてを脱ぎ去った。
「襲われるのは嫌・・自ら抱かれたい」
「ふっふっふ・・さすがだ・・」
「ぁ・・彪牙・・ぁンっ・・憎めない奴・・」
 ワラに倒され、組み敷かれ、嵐は体を開いて彪牙の唇を女陰へ誘う・・。

 彪牙・・こんな男にはじめて出会った・・心が溶けていくと感じていた。

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