快感小説

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

新・如月夜叉(二一話)

二一話~銭の重み


 香風から戻った、嵐、江角、お涼、三人の風呂上がりを待つように夕餉の支度がされていた。お真知は江角に引けを取らず料理が上手かった。一口食べて嵐は驚く。考えてみればあたしはろくにできない。そう思うと剣に明け暮れた日々が思い出され、すでにない母や父や、如月一族の皆のことを思い出す。
「それでね」
 陽気のいいいま渡し板で塞がれている囲炉裏を囲む席で、いきなり切り出した嵐の言葉に皆は目をやった。
「約束通り、あたしら五人に千両ずつ。それは約束だから五人には一箱ずつ配るけど。けどね、残り九百両のはずが千両ずつ入っている。すでに百両もらってるから、つまりは五百両多いってことになる。そこで皆に相談なんだが、百両ずつ出してくれないか」
「私ならいいよ、なんなら百両だけでもいいぐらいさ」
 江角が言って皆が見た。
「これからの私たちのために使って欲しい。代わる者のない仲間だ、ここを出たらまた彷徨う。もう嫌だ。お紋ではないけれど、もう嫌だよ」
 
「あたしも。千両箱なんて荷が重い」
 と、お菊が言った。
「あたしもだね、怖くなる金子だよ」
 と、お涼が言った。
「・・うーん、ならあたしも」
 未練があるのはお雪らしい。しかしお雪は穏やかに笑ってお燕に目をやりながら言う。
「けどそれじゃ不平が出るね」
「不平とは?」
 と、江角がお雪を見つめた。お雪が言う。
「お燕にはないのかい? それにお真知にも? お真知には身の回りのものだっているだろう。お燕なんて懸命に働いてくれてるんだ」
「いえ・・あたしは・・」
 お燕はとんでもないと言うように目を丸くして首を振る。
「あたしはお店でもらってるから姉様たちのお役に立てて。あたしは身の回りのお世話だけなんだし・・」
 そういうお燕をお雪は見つめ、さらに言う。
「ほらね、健気だろ。だからさ姉様」
 嵐はうなずいて皆を見渡す。
「わかってるよ、ありがとね、お雪。ではお燕にも百両、お真知には・・」
 と言ってお真知に目をやったとき、お真知は言った。
「あたしなんて・・そりゃ着物はいるけれど・・。なら姉様、仏壇が買えるだけくだされば」
「仏壇? ここに置くのかい?」
 お真知はうなずいて、つぶやくように言う。
「一生手を合わせていたいから」
 嵐は皆を見渡した。皆の面色はやさしかった。
「わかったよ、ではそなたにも百両」
「百両・・そんなにはいりませんから」
「いいからもらっときなよっ、姉様方の気持ちじゃない」
 隣りで食べるお燕が、正座で座るお真知の肩をぽんと叩いた。

 嵐はちょっと困ったように小首を傾げて言う。
「さて最後に結だね。どうしたものか・・」
 お菊が言った。
「いっそ殺せとほざいてやがる。可愛げのない女だよ」
 皆は声を出さなかった。

 夕餉を済ませ、上にお燕とお真知を残したまま、五人は地下へと降りていく。 牢の中の結は、牢に入れられてから幾日も風呂など許されず、結った髪もとうに乱れてばさばさで、糞尿の臭いも漂って、それこそまさに獣の匂いに満ちていた。着乱れた浴衣姿で力なく脚を投げ出して座っているのに、目だけはぎらぎらと敵意が宿る。
 嵐は牢の前にしゃがんでそんな結を見つめ、ちょっと睨み合って言うのだった。
「ふうむ・・どうしようもない女だね」
「やかましい、殺せ・・」
「お紋は死んだよ」
「何・・」
「おそらくは好き合った男と刺し違えて一度は死んで、しかし蘇って白き般若となって化けて出た。自刃しても死ねないなんて惨いものだね」
 結はちょっと目を伏せて思いをはせるようだった。
 嵐が言う。
「けどね、そんなお紋も二人の手下もろとも侍どもに襲われたさ。口封じだよ」
 結は目を合わせようともせずに聞いている。うつむいたまま目を上げない。

 そんな結が眸を上げて言う。
「嘘じゃないな?」
 嵐はうなずく。
「おまえに嘘などついてどうする」
 そして嵐は、お雪に言って大きなタライに湯を用意させ、牢の前に置き、それからお菊とお涼の二人に言った。
「出してやりな」
 それから結に向かって言う。
「体を拭け、臭い。その間に誰か牢を掃除してやるんだね」

 牢から引きずり出されて周りを囲まれ、裸となった結は、大きなタライにしゃがみ込んで手拭いを絞っている。体つきはお真知ほど。乳こそ小さかったがくびれて張る男好きする体をしている。肌は若く、目立った傷のない綺麗な体。しかし牢暮らしで痩せ細り、肋が浮き立ってしまっている。
 女ばかりの中、地べたに片膝をつき、体を拭いて、用意された着替えの浴衣を腰巻きをせず裸に着込む。それでも髪までは洗えず、少し匂って臭かった。
 その間にお雪とお菊で牢の中を掃除する。二人が出て、結をすぐには牢に戻さず、ムシロを敷いて座らせる。
 段差のあるわずかばかりの板の間の縁に皆は座り、そんな結を見下ろした。
 蝋燭の灯火はいかにも弱い。

「世をすねてどうする。少しは考えたらどうだ」
 江角が言い、続けてお雪が言う。
「いまのままでは道はない。尼となる資格すらない。お天道様を見ることもできないだろう。まあ、おまえ次第さ。おしろい般若は失せた。我らは公儀の者ではないからね、死罪のどうのと言える身でもないんだよ。死にたいなら匕首をやろうじゃないか。牢の中で惨めに死んでいくがいい」
 答えようともしない結。
 もういい入れと嵐が言い、立って背を向けた結に向かってさらに言う。
「おまえには耳もある、頬も綺麗だ。お紋の苦しみを考えろ。好いた男と刺し違え、それでも死ねず・・天狗とやらの法力だろうが、生き返ったところで修羅の道ぞ」
 それから嵐は皆に向かって言った。
「こやつはだめだ、自ら魔道を選んでいる。しばらくは牢暮らし。それでだめならそのときは・・いたしかたないだろうね」
 それでも結に声はなかった。嵐の言葉を聞きながら牢の口をくぐって入る。
「おまえの役目は探りだね?」
 と、江角が問うた。
「・・そうさ」
 吐き捨てるように言う、結。
「酒膳の親爺も仲間だな? もはや隠す意味もなかろうて」
 結は牢の中に座り直してこちらを向くと、わずかだが弱くなった眼の色で江角を見上げた。
「仲間と言うならそうだろうけど般若じゃない。甲賀の草さ」
「豊臣の手か?」

 結はうなずき、しかしもはや違うと言った。
「・・何もわかっちゃいないんだね。豊臣徳川と二分するが、西方では身を偽る者はごろごろいる。徳川とて豊臣の家来の一人だよ。豊臣に心を残しながら徳川に仕える者は多いし、そのじつどちらでもない者もいる」
「尾張にも入り込んでいるんだろうね?」
「ふんっ・・それだけじゃないさ、小早川の残党もいれば・・あたしらだって生きている。獅子身中に虫だらけ・・けどあたしにはどうでもいいことさ。あたしら一族などおしまいだ。銭のためなら何でもやる」
 そして結は、如月夜叉の頭である嵐を見つめた。
「お察しの通りだよ、尾張に巣食う虫が糸を引く。尾張周辺で関ヶ原の前に寝返った者を探れ。そこまで言えばわかるだろうが、尾張だけのことでもないのでね・・」
「お紋に拾われたんだな?」
 嵐に言われて結はうなずく。
「じかにじゃない、手下どもにさ。商家を探って女をさらう。役目はそこまで・・」
 お真知と同じような下っ端。お真知と違うところは乱世への恨みが強いということで。

 そのとき、万座には行かず屋敷を守ったお菊が言った。
「あたしらで話した」
 嵐と江角がお菊を見て、お涼は、そのときうなずく素振りをしたお雪へと目をやった。
 お菊が言う。
「こやつは喋った。万座と知れたのもこやつが喋ったからだ」
 お雪が言った。
「生きる道もあるんじゃないかってね」
 牢の中から結が目を見開いて見つめている。
 嵐は、そんな二人にちょっとうなずき、ふたたび結を見据えて言う。
「我ら如月夜叉は、女の敵は女が葬る・・そうしたものだ。生きる道が残る者を殺したりはしない。そこをよく考えろ」

 声を失った結を残して上へと上がった五人と入れ替わるように、お燕が握り飯と味噌汁を持って降りて行く。
 嵐は、結ががつがつ獣のように喰っているとは聞いていた。それが望み。生きようとするから喰う。
 そのときお燕は、結が喰う姿を牢の外にしゃがみ込んで見守っていた。
 お燕が言った。
「お紋て人、いっぺん死んで生き返ったそうじゃないか」
 結は握り飯に喰らいつきながら目を上げた。
「女房みたいなもんだとよ」
「女房・・?」
「天狗様に救われたのさ。惨い責めで化け物にされた女なんだよ。恨みの深さがどれほどのものか。あたしだって、そんな頭に救われた」
「どういうこと?」
「銭だよ。それしかないだろ。主家の滅んだ忍びなど地獄。散り散りとなるが常だが、それは仲間から逃げようとするからだ」
「仲間から逃げる? どうして?」
「抜けたいのさ。忍びを抜けて、まっとうに暮らしたい。けどね、そうなると我が身一つ。下働きでは喰えないし銭が欲しくばと体を狙われる。女郎に身をやつす者もいる。まっとうに生きようとすればするほど苦しくなる。銭の重みを身をもって知るんだよ」

 お燕は結を見つめて聞いていて、己の身の上を話して聞かせた。
「けど、あたしなんてどうってことない。お雪の姉様は女陰働きだったって・・敵の枕で破瓜の痛みを知ったと言っていた」
 結の面色が微妙に変わった。お燕の声を聞いている。
「抱いてくれた男が毒にもがいて死んでいく。そうやって役目を果たしても、夜な夜なうなされて苦しんだって・・それであたしね」
「うむ?」
「くノ一に生まれなくて幸せだったんだなって思ったんだ・・いろいろあったけどそこらの町娘なんだもん。姉様方が可哀想・・それは結の姉様も・・」
「・・もういい、つまらん話はするな」
 結は、喰い終わった皿と椀を盆に載せ、突っ返すように差し出した。

ピックアップ!


ウェブマスターはこちら リアル素人CLUB-XXX リアル素人CLUB-XXX

ここはハード性小説

SM~FEMDOM、レズと
官能小説らしい物語を集めてく。
新刊案内

レズ官能小説の二編集
自虐オナニー~レズ
●指だけじゃ飽きたらなくて
レズSM(露出)
●同名小説


好評シリーズ、発売開始!
官能ホラー
闇刈いわく堂シリーズ特別編
『白湯鬼さん』


~飾られる女たち~
インテリアドール紫織編
若く美しい性人形の日々へ


~飾られる女たち~
インテリアドール芙美子編
しっとり落ち着いた大人のSM

登録サイト





スペシャルリンク















ブロとも一覧

SM~猟奇の性書~官能

~ 艶 月 ~   
テキストリンク
アクセスランキング
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。