快感小説

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妻は幽霊(三八話)

三八話


 来た甲斐のある最高のゲームだったが、乱打戦は試合時間が長くなる。六時スタートで終わったのが十時前。それから野中はシャワーと着替え。クルマに乗り込んだときには十一時に近かった。
 ナイターの後はいつもそうだが、さすがにこの時刻から食事と言っても行き先は限られる。今日のゲームは長いと感じた祐紀子は、観戦しながら真央と二人で軽く食事を済ませていた。
 コンビニに寄ってちょっと買い、ともあれホテル。朝から遊びまくった真央はクタクタで助手席で寝てしまう。
 あのときのようにパパに抱かれて部屋に入り、一度起こされて風呂。パパと一緒の風呂で少し元気を取り戻すも、横になったとたん爆睡だった。

 高層ホテルのデラックスツイン。脱衣のないバスルームへ祐紀子はバスタオルを体に巻いて、替えの下着をハンドタオルに包んで持ち込んだ。野中はもちろん背を向けて紳士的。というか、向こうを向いて横になり、すっかり寝ついた娘の体中を撫でている。真央はぴくりとも動かない。
「出ますね」
「ええ、どうぞ」
 言わなくても気配でわかる。ドライヤーが止まりドアが開く。野中はバスルームから遠い側のベッドで、相変わらず背を向けて真央に添い寝をしていた。ホテルのパジャマは前ボタンのワンピースのようなもの。祐紀子には丈は充分だったが、長身の野中だとミニワンピのようになってしまう。
 可笑しいほど可愛いスタイルを横目にしながら脱いだ下着をちょっと包んでショルダーバッグの底に潜り込ませる。ドキドキしたし恥ずかしい。野中は気づいていながら向こうを向いて祐紀子の支度を待っていた。

「真央ちゃん、ぐっすり?」
 言いながらちょっと覗くと、小さな娘は横寝になって、モミジのような小さな両手でパパの胸ぐらをしっかりつかみ、寝息を立てて熟睡していた。
「ふふふ、可愛いなぁ。すがりついてる」
「ですね、女に胸ぐらつかまれてますよ、ふっふっふ。今日はどうもありがとう、嬉しいですよ」
 パパはもうたまらないのだろう。野中は分厚い胸で小さな娘を抱きくるみ、胸ぐらをつかむ手をそっと開いて体をずらした。
 そのときパジャマの裾が割れて黒いブリーフがチラリと見えた。
 祐紀子はハッとして目をそらしたが、その映像を焼き付けてしまっていた。パジャマからほとんど露わになる右脚の手術の痕。何度見てもすごい傷だ。

 ガラス越しに望む夜空には星々が煌めいて、眼下を見渡すと横浜ベイが一望できる。絵画のような景色。その窓際に置かれた白く丸いテーブルに、コンビニで買ったものを並べて軽く食事。握り飯とかサンドイッチとか、それにお茶やジュース。その程度のものだった。
「佐々木さん、やりましたね」
「ですね、今日は奴の手柄ですよ。まだちょっとレギュラーでは心もとないが使う度に活躍されては外せなくなる」
「そうやってスターになっていくんですよね」
「スターというか…まあそうなんでしょうが、チームの信頼ですよね。今日もひとつエラーした。打つ方は水物だが、ああゆうポカは汚点なんです。内野手はまず守備です。そこが信頼できてはじめて次がある。監督もこのところアイツに厳しくてね」
「期待するから?」
「そうです。若手は叱られなくなったらおしまいなんですよ」

 しばらく沈黙。
「ご飯、それで足ります?」
「充分です。夜は軽く。僕はいつもそうしています」
 私がいるからか、そう言えばお酒がないと祐紀子は思う。
「野中さんて飲まない方?」
「ほとんどやりませんね。選手と一緒だとどうしてもそっちになっちゃいますが、いまは昔とは違うんです。体調管理を怠るとアウトだ。ベテランは別として深酒する選手にろくなのはいませんから」
「以前からお飲みになられない?」
「佐紀子が嫌いでしたからね」
 そうだったと思い出す。琢也もほとんど飲まない人。

 そのとき真央が寝言のような、グズるような声を上げて寝返りをうち、ベッドの端へと転がった。落ちるかも。野中はサンドイッチをくわえたまま中腰になって両手を出して一歩を踏み出し、真央が落ちずにうつ伏せで止まると、祐紀子を振り向く。
「む。止まったか」
 眉を上げて祐紀子を振り向く野中。
「ふふふ、可笑しいな、いいパパだわ、たまらない」
「寝相が悪いのは遺伝ですから。ふっふっふ」
 それからまた座り、くわえていたサンドイッチを食べはじめる。野中はちょっと上目づかいに照れていた。
「寂しいんでしょ?」
 野中は少し眉を上げ、かすかなため息をつきながら言う。
「前にもこうして一緒に泊まりましたが、あずけたときは眠れませんでした。一軍だと時間が取れない。二軍に戻せと言ってるんですが今シーズンは動けそうにもありません。江戸屋さんにも、そういつもというわけにもいきませんし」
「あら、ウチならいいのに。いつでもどうぞ。オフにはずっとべったりでもいっこうに」

 野中はうなずきながら、しかしちょっとそっぽを向いて窓の外へと視線をなげた。
「真央は佐紀なんですよ」
「え…」
「だんだん似てくる」
「そうですね、母も言ってるんですよ、姉の小さかった頃に生き写しだって」
「やっぱり?」
「そうですよ。だからね野中さん」
「はい?」
「しばらく再婚なんてしちゃ嫌よ。私もう真央のこと姉の子だとは思えないの。可愛くてならない。主人のことより真央に気持ちがいってしまう。私そっくりなんだもん。再婚なさって真央を奪われたら私崩れちゃいそうで」
「祐紀ちゃん…ありがとう、そこまで真央のことを」

 と、そのときまた、今度は虚空をつかむように小さな手を上げて、真央はうわ言で言う。
「…パパぁ…ママぁ…」
 野中はサッと立ってベッドの下に膝をつき、娘の手をそっと握った。
「うんうん、パパはここだよ、安心してお休み」
 ベッドの端まで来ていた娘を真ん中に寝かせてやって、そのとき真央はパパのパジャマをしっかり握る。
 野中が泣いている。涙の浮かぶ顔を見たとき、祐紀子は心が掻き乱された。椅子を立ってそばへと歩む。
「私のこと姉だと信じて疑ってないんです」
「そうでしょうね、僕が見たって錯覚しちゃう」

「ママだけじゃダメみたい」 と、祐紀子はささやく。

「え?」
「真央ってね、普段パパのことは言わないようにしてるんですよ」
「あ、そうなんですか?」
「言うと寂しくなるでしょう。パパはどうしてここにいないのって思うでしょうし、幼いなりにそれを言うとみんなが困ると思ってる。じっと我慢してるんです」
「うん、そうですね、ぅん、可哀想に」
 見る間にパパは泣いてしまう。祐紀子も涙が流れてくる。
「再婚なんて考えたこともない。真央と佐紀は一緒になって生きているんです」
 感動する言葉だったが、このとき祐紀子は、なんて残酷なことを言ってしまったのかと後悔していた。逆だと思う。早く姉を忘れて真央ちゃんと幸せになってと言うべきだろう。
 しかしもう真央を手放すことはできそうにもなかった。

「泣かないで…ね…寂しいもんね…」
 泣かないでと言いながら自分だって涙を流し、祐紀子はそっと野中の肩に手をやった。フロアに膝をついているのに背丈がそれほど違わない。そんな強い男が、真央と姉を思って泣いてくれてる。
 祐紀子には、それだけで充分だった。
 真央はパパのぬくもりを感じて今度こそ眠ってしまった。天使のような寝顔だった。
「さあ立って。もう寝ちゃった、大丈夫だから」
 母親の視線で野中を見下ろしていた。
「ふふふ、うん、寝ちゃいましたね」
 なのに野中が立ち上がると、女の視線で見上げなければならなくなる。
「姉のこと、愛していらしたんですね」
「悪夢です。女神が消えてしまった」
 祐紀子はまっすぐ眸を見つめた。涙にキラキラ輝く勇者の眸。
「嬉しいわ。姉は私の半身だから、そこまで想ってくだされば私だって幸せなんです。真央のママでいたい。健気な子よ。今日だってディズニーランドで天使のように思えてしまって」
「佐紀の生まれ変わりなんですかね」
「そう思います。あなたが寂しくないように残していった娘でしょ」

「再婚しないで。しばらくは嫌」

 どうしてしまったのだろう。言ってはいけないと思いながら、言わずにはいられなかった。生き写しの娘を奪われたら生きていけない。母性が逆立ち、錯乱していたのかも知れなかった。
 祐紀子はそっと流れて野中の胸に頬をあずけた。
 腕を回してみても圧倒的なスポーツボディ。目眩がしそう。
 野中の手がためらうように祐紀子の体をつつみ込む。
「祐紀ちゃん」
「それイヤ、二人でいるとき佐紀って呼んで」
 野中は祐紀子の肩を押して抱擁を一度解き、真意を探るような男の視線をまともに浴びせた。

 ああ抱かれる…祐紀子の膝が震えていた。

「…佐紀…ああ佐紀、寂しいよ…」
 抱き寄せられたとき、祐紀子は涙を溜めて野中の眸を見上げ、そのまま静かに目を閉じた。
 佐紀子が夫のもとへと戻った瞬間。唇が重なった。

 祐紀子に多重する佐紀子の女心が衝き動かしていたのだろうか。

 ところが、それとちょうど同じ頃。
 江戸屋の二階の夫婦の部屋で、琢也は透き通る妻を抱いていた。
 佐紀子は、輪郭の白く輝く美しい裸身のまま現れて、そっと琢也に寄り添っている。撫でてやろうとすると手は幻影をすり抜けて自分を抱いているだけになる。
 なのに微妙な肌の感触を感じるし、見つめ合う男女の間合いがそこにはあった。
 琢也は祐紀子のことを言わなかったし、佐紀子は京子のことには触れようともしなかった。そこは大人同士。口数を少なくして穏やかな男女の夜をすごしていたい。

「真央ちゃん、いまごろぐっすりだろうな」
『さあね』
「え? 向こうへは行ってない?」
『おまえさんに抱かれてるじゃん、現にいま』
「そりゃそうだけど」
 透き通った佐紀子は、琢也の胸に頬をあずけてすがりつく。
『今夜は祐紀にまかせたの。野球は一緒に見てたけど、それからは幽体離脱。分身の術かしら? あたしずっと琢也のそばにいたんだよ』
「そう…でも佐紀ちゃんのこと知ってるの俺だけだから、なんだか祐紀ちゃんに悪いなって」
『どして?』
「二人の妻がいて、どっちも愛してる。浮気だもんなぁ」

 佐紀子はちょっと顔を上げて琢也の眸を覗くと、微笑んで、ふたたび胸に頬をあずけた。
『最高ね琢って。祐紀が聞いたら泣くでしょうね。真央のパパでもあるんだし、真央だっていつか琢を尊敬するわ。愛してるよ琢』
 琢也は、胸の上の佐紀子の頬を撫でようとしたのだが、やっぱり自分の胸を撫でてしまう。

「死ぬって、そういうことなのかなぁって思うんだ。生きてる間に心を育てて、そうすれば豊かな心でいつまでも見守っていられるからね」

『ねえ』
「うん?」
『キスしよ』
 透き通った妻は、静かに目を閉じて唇を求めていった。

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