快感小説

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寝化粧

 母が寝化粧をはじめました。娘の私が三十路にもなると、母に
はいよいよ秋の色が濃くなって・・。

「ヤだ母さん、寝化粧なんて縁起でもない。老け込む歳でもない
でしょう」
「違うわよ、失礼しちゃうわね、もう少し生きてますっ。ふふふ、
あのね、お父さんが夢に出てきて言うのよね、おまえひどいぞっ
て。ひどいぞよ、それこそひどいと思わない? だから私言って
やるの、私だってまだまだよ、恋でもするから見てらっしゃいっ
て」
「女は気持ち?」
「そうよそう! ふふふ、朝起きて鏡の中で枯れてたら嫌だもん。
それでお父さん、消えていくとき言うのよね、置き去りにしてご
めんなって」

 シュルっとティッシュの気配がして横目をやると、母が目頭を
おさえています。夫婦はだいたい女が残されるようになっている。
だけど父さんは早過ぎました。


 娘を連れた里帰りで、あの子を母にあずけてしまい、どれぐら
いぶりだろう・・独りひっそりお湯に浸かり、そんなことを考え
ていたんです。母はまだまだ。来年には還暦ですが綺麗な人だと
私は思う。

 地獄谷という言葉があるけれど、ここはまさにそんなところ。
山々の緑は遠くにあって、額縁のように、ゴツゴツとした岩絵を
囲んでいる景色・・。
 硫黄の匂いが漂って、湯気が霧に立ちこめて、ところどころで
湯気とお湯が一緒になって噴いている。

 鳥たちも地獄は嫌いなんでしょう。囀りさえない静かな静かな
湯気谷なのです。

「ご一緒させていただきますよ」
「あ・・ええ、はい」

 まるで気配に気づかなかった。季節はずれのこんな日に辺鄙な
ところへ人が来るとは思っていない。
 五十年輩の男性でした。岩囲みの丸い湯で、私は微妙に体を流
して乳房の隠れる深さに身を沈め、斜め肩背を向けている。
 羞恥と警戒・・このときは期待なんて少しもなかった。

「すごいところですね、怖いほどだ」
「ご旅行ですか?」
「二度目です。以前に一度来てまして、ここが気に入り、そう遠
くないところに離れを持った」
「離れ?」
「物書きなんです。もっとも・・これがまあ書けなくて書けなく
てアタマ掻いてる凡人でして。ははは」
「まあ・・うふふ」
「月のうち十日ほど、そこらの山にこもってる。離れといっても
遠すぎますがね。庭を歩ける離れじゃなくて新幹線越しなんです
もん」
「そうですの」
「東京です。最初のときは妻と一緒。あの頃となーんも変わって
いませんよ」
「では、離れに奥様も?」
「いえ・・逝きました。あっけなかった、ガンでした」

「すみません」

「いえいえ、どうぞお気になさらず・・」

 ザバと顔を洗うお湯の音・・。

「あなたはご旅行で?」
「実家がそばです、娘と里帰りで久びさに」
「なるほど。それにしてもすごいところだ・・美しい」
 彼も斜め肩背を向けている。それははっきりエチケット。私
は羞恥はあっても警戒心は薄らいで、知らず知らずお湯から乳
房の谷がのぞいていました。リキミを抜くと浮いてしまう、お
湯の浅いお風呂です。

「草の一本、生えないところ。昔からずっとそう。岩ばかりで
生命がない・・枯れている」
「え? いやいや、それはちょっと・・」
「違うかしら?」
「ええ、きっと。僕はちょっと違うことを思うんですよ。ここ
は女の情念そのもので、寄せつけない硬さの奥に恐ろしいほど
熱を持ち、隠しきれずに熱くて白い息を吐き、愛液のようなお
湯も噴く。そんなふうに思ってますが」

 それを聞いて、乳房の谷がまた少しお湯に沈み・・斜め肩背
だったものが、微妙に背中がひろくなる。それは彼の言葉でな
くて私自身の渇きを想うものでした。
 恥ずかしく・・でもこのとき、ほんの少しの期待が湧いて、
だからお湯に沈んでしまった。

 肩越しの彼の姿がこちらに向く気配があって、私ははっきり
背を向けてしまいます。そしたらね、チャプチャプとお湯を引
っ掻く気配がする。
 私はまた少しだけ斜めに構えて横目で見たわ。
 お湯の上で彼の手がおいでおいでをするように水を掻いてい
るんです。

「あ、いや・・あははは、ちょっとね子供の頃を思い出しまし
てね。川に落ちたボールをこうやって引き寄せようとしたなと
思い・・あははは!」
「なんですのそれ?」
「手が届きそうで届かない。こうやって水を掻けばボールが寄
せてくるんです。だけどうまくいくとは限らない。流れにさら
われ、いくつボールをなくしたことか。はははっ!」

 そして彼は、ザバっとお湯を乱して背を向けてしまうんです。
バシャバシャと顔を洗っている。
 もしかして・・涙?
「あーあ、ヤだヤだ、男ってほんと、しょうがない生き物です
よ。お湯を掻けばあなたが流れてくると思ってる。男心は子供
です」

「ま!」

「あははは、冗談ですよ冗談! あはははっ!」


 そのとき私は困ったことになっている。お湯が熱くてのぼせ
そう。
「あのう・・」
「はい?」
「もう出たいのですが・・のぼせちゃうから」
「おお! それは嬉しい回れ右ってね! あははっ、あっはっ
はっ!」
「嫌ですわ、もう・・うふふ!」
 いえいえ、そんなことをされる方ではない。きっぱり背を向
け、送り出してくれました。

「ありがとう、楽しかったな。僕は少し妻を想って泣いて出ま
す。そのうちまた会いたいな・・」

 その、冗談とも本気ともとれる言葉が、なぜかすごくあたた
かく、チャプチャプと水を掻いてくれたとき、流れてみればよ
かったなって思ってみたりしてるんです。


「へえ・・あらそう、素敵な方ねー、さすが作家よ」
「そうなのよ。なんというか、言葉にいちいち世界があるって
言うのかしら・・ねえ母さん」
「はいはい?」
「再婚したら?」
「ええー! 誰と? その方と? あっはっは! こりゃ可笑
しい! あっはっはっ!」
「そんなに笑うことかしら?」
「だってあなた、見ず知らずの男性と・・あっはっはっ! そ
れはね、香澄が若いからであって、あたしなんかじゃ、ペペペ
ってお水をかけられ、あっち向いてホイよ。あはははっ!」
「そうかなぁ・・母さん綺麗だと思うけど」
「はいはい、どうもありがとう。 そう言うあなたこそ、どう
なのよー? よさそうな人じゃない。旦那ともうダメなんでし
ょ?」
「だって、おじさまなのよ、頭の白い・・」
「ほらね、あなただって言うじゃない。あっちからすれば、あ
たしなんてババアよババア、六十なのよもう。あっはっはっ、
このあたしがいまさら再婚? お父さん化けて出てくる、あっ
はっはっ!」


 それから十日ほどして、娘の旦那がやってきて、ともあれ一
度戻って行きます。孫娘のいたにぎやかな家がしーんと静まり、
私はふと、あのお湯のことを考えた。このへんの者ならもちろ
ん知っていましたし、私だって若い頃、お父さんと恥ずかしい
ことをした・・。

 どれくらい行ってないのかな・・二十年? もっとかしら?
 独りになって気が抜けたのか、ふらりと私は出かけてみたの。
そのときは思い出に浸ろうとして・・ただ単に温泉が目当てで
あって、そんなことは忘れてしまっていたんです。

 ほんとね・・なんにも変わっていなかった。変わりようのな
いところ。風が少し冷えていて、もうすぐ温泉シーズンで。
 だからいまはひっそりしていて、風の冷えが湯気の霧を濃く
していたわ。

「ご一緒させてくださいね」
「え・・ああ、どうぞ」

 このときになって私は娘の言葉を思い出し、斜め肩背に見て
いたの。五十年輩のスリムな男性。頭が真っ白。

 え? それって、もしや・・。

 再婚したらと娘の声が聞こえたようで、私は老いて萎んだ乳
房の谷をお湯に沈めて、なんだか懐かしい恥ずかしさと、ほん
の少しの期待もあって動けなくなっていた。

「いつ頃からあるんでしょうね・・」
「温泉の形になったのは江戸時代だって言われてますわね」
「地元の方ですか?」
「ええ、すぐそこ」
「そうですか。ここはいいところです。私はまだ間もないです
が、おかげでペンが走ります」
「ペン?」
「物書きなんです、東京からときどき来ていて・・だけど、う
うむ、どうしようかなぁ・・」

「はい?」

「向こうをたたんで越して来ようかと思ってます。なんだかね、
ここにいると萎えてしまった気力をくれるような気がしてしま
って」
「萎えるなんてそんな・・早いですわよ、まだまだ」
「いいえ・・お恥ずかしい限りですが、ちょっと疲れた。ここ
にはきっと女神がいて、心を開く者にはやさしさをくれるんで
す。ゴツゴツした岩も、静かに佇む岩ですが、その内側には愛
があり、熱い吐息を吐いて裸の僕をあっためてくれるんです」
「そう言っていただけると地元の者としては嬉しいですわ。私
も娘も小さな頃からここに来て、思い出もあれば・・うふふ、
愛液のようなお湯を吐くって、どなたかに言われたとか」

「えっ! あーっ! あのときの!」

「覚えておいで?」
「もちろんです、あの方が・・そうですか娘さん・・」
「ええ娘です。お湯をチャプチャプしてくれて、流れてみれば
よかったなって言ってましたよ」

「ンむむ・・いやいやいや・・それはその・・ヤバ・・」

「あははは! 面白い方ね、おいくつかしら?」
「じきに五になります、五十五に」
「あの子は三十七ですわ、若くして産みましたから。二十二の
ときに」

 そのときはもう娘の話になっていて、老いた私には、警戒心
や、まして期待なんてありません。少しの羞恥をタオルで覆い、
斜め前に彼を見つめていたんです。娘のもしやを品定めしよう
としたのでしょうが。
 そしてまた彼の方も、あのときの女性の母だと知ったときか
らこちらを向いて・・ひと泳ぎの距離にいる。

 その人が・・まっすぐ私を見つめてくれる。

「ではあの、失礼ですが・・五十九? ウソだ?」
「ええ、来年還暦、お婆ちゃんです」
「そんな・・いえいえ、そんな、お綺麗です、お若くてお綺麗
です」
「あはははっ! ありがとう、嬉しいわ。だったら・・私にも
チャプチャプしてくれるのかしら・・ぅくく」

 なんで・・なんでそんなことを言ってしまったのでしょう。
 言ってから大笑い。なのに、もしもチャプチャプしてくれた
らと、いきなり羞恥に襲われて、なんとなくお湯に沈んでしま
った私です。

 チャプチャプ・・・
 チャプチャプ・・・

「子供の頃、野球のボールが川にはまって、こうやって取ろう
としたんです。手の中にあるときは粗末にしたものも、イザな
くすかと思うとたまらなくなってきて、大切にするから戻って
おいでと言うように・・」
「お気持ちはわかります」
「あの・・あ、申し遅れました、私は渡辺幸雄です。妻に先立
たれて独りです」
「それも娘から少し・・ふふふ、私は菊江と申します、はじめ
まして。私も主人をとっくになくした」
「菊江さん・・はい、菊江さんですね・・」

 ハッとしました・・私はなぜ名を言うの? 姓でいいのに?
 それに主人のことなんて・・独身をアピールしたい? 

 言ってからカーっと体が熱くなり・・。

「お、鬼がさらいに来るとも言われてまして、夜には一人じゃ
怖いんですよ」・・なんてね、どーでもいいことでごまかしな
がら、裸身をそむけて斜め肩背に視線を流す・・。

 チャプチャプ・・・
 チャプチャプ・・・

 まっすぐでウソのない視線です。

 チャプチャプ・・・
 チャプチャプ・・・

 ああ、どうしよう・・どうしよう・・流れて行きそう。


「い、嫌ですわ、ご冗談を・・うふふ」
「ボールであれば服を濡らすと叱られる。だけどいま私は泳ぐ
こともできそうです」

 チャプチャプ・・・
 チャプチャプ・・・

 両手でね、犬掻きをするように・・もちろん足はついていて
泳ぐフリだけ。私は乳房を掻き抱いて、まともに背中を向けて
しまった。羞恥より、触れ合いへの予感に翻弄された私です。

 流れ着いた彼の手が・・肩越しにそっと私をくるみます。
「あぁ・・ね、ねえ・・ねえ・・」
 振り向かされて抱かれるときに、懐かしい硬くなった男心が
私のお尻に触れたのです。

 プシュゥ・・・ 

 乾いていた岩肌に、愛液のような熱湯が噴いていました。

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